ゆう
夕暮れの帰り道。
俺たちは、いつも三人だ。
みおが真ん中で、俺が右、りくが左。
誰が決めたわけでもない。
でも、その並びが一番しっくりくる。
「今日どうする?」
「コンビニ寄る?」
「また?」
同じやり取りを、何度も繰り返す。
赤信号で、三人同時に足を止める。
影が三つ、同じ方向に伸びる。
一人でも欠けると、落ち着かない。
だから理由もなく、いつも三人でいる。
その日も、ただの帰り道のはずだった。
交差点で、りくが立ち止まる。
「先、行ってて」
「え、なんで?」
「ちょっと用事」
そう言って、りくは軽く手を振る。
気づけば、俺はみおと二人きりだ。
急に静かになる。
靴音だけが、やけに大きく聞こえる。
間がもたなくて、みおが笑いながら言う。
「ゆうってさ、ほんとモテるよね」
「そうか?」
「だって、なんで彼女作らないの?」
少し間を置いて、俺は答える。
「誰でもいいわけじゃない」
みおは笑って返す。
「そりゃそうだよ。私だって誰でもいいわけじゃないし」
その瞬間、空気が変わる。
俺は立ち止まって、息を吸う。
「……俺じゃダメか?」
冗談だと思われてもいい。
聞き流されてもいい。
それでも、この言葉だけは引っ込められない。
街の音が遠くなる。
三人だった距離に、戻れない線が引かれる。
みおはすぐに答えない。
視線を落としたまま、黙っている。
その沈黙が、すべてだ。
それでも、後悔はしていない。
みおと別れると、スマホを操作する。
履歴画面を開き、りくの名前を押した。
LINEにすればよかったかな?
俺は画面を伏せたまま、少し動けずにいる。
みおに告ったのは俺だ。
りくには直で話さないといけない。
でも、言葉にしたあとの世界は、思った以上に静かだった。
「すまん、告った」
沈黙がため息になる
「そうか。わかった」
余計な言葉がない。
「我慢できんかった」
そう言うと、胸がわずかに軽くなる。
「わかってるって。じゃあ、俺も告るな」
一瞬、息が止まる。
――そう来るよな。
分かっていた。
りくも、同じ気持ちだって。
「……あぁ。こう言っちゃなんだけど、頑張れよ」
自分でもおかしくなる。
好きが同じ人に、エールを送るなんて。
スマホの向こうから、りくの笑い声が聞こえる。
「何言ってるんだ。でも、サンキュー」
それで、やり取りは終わる。
次の日。
放課後、みおが教室を慌てて出ていく。
行き先は、聞かなくても分かる。
りくに呼ばれたんだ。
翌朝、
みおは、少し遅れて教室を入ってきた。
目が合う。
でも、すぐに逸らされる。
それだけで、十分だ。
りくは告った。
真正面から。そういうヤツだ。
「俺も、お前のこと好きだ」
「付き合ってほしい」
俺は聞いていない。
でも、分かる。
三人でいる時間は、もう戻らない。
三人分の声は、重ならない。
でも、どれも嘘じゃない。
好きだった。
それぞれが、それぞれのやり方で。
それだけは、胸を張って言える。




