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3人の声  作者: カトーSOS


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1/4

みお


夕暮れの帰り道は、いつも三人だ。


私が真ん中で、右にゆう、左にりく。

誰が決めたわけでもないのに、その並びが当たり前になっている。


「今日どうする?」

「コンビニ寄る?」

「また?」


そんな他愛もない会話をしながら歩く。

信号が赤になると、三人同時に足を止める。

影が三つ、同じ方向に伸びている。


ひとり欠けると、落ち着かない。

だから理由もなく、いつも三人でいる。

三人でいることが、一番楽で、一番安全だ。


好きとか嫌いとか、考えなくていい。

三人でいれば、それだけで楽しいが成立している。

何も確認しなくても、壊れる気がしない。


その日も、ただの帰り道のはずだった。


交差点で、りくが立ち止まる。

「先、行ってて」


「え、なんで?」

「ちょっと用事」


そう言って、りくは軽く手を振り、来た道を戻っていく。

気づけば私は、ゆうと二人きりだ。


急に静かになる。

聞こえるのは靴音だけだ。


なんとなく間がもたなくて、私は軽い冗談を口にする。

「ゆうってさ、ほんとモテるよね」


「そうか?」

「だって、なんで彼女作らないの?」


少し間があって、ゆうが言う。

「誰でもいいわけじゃない」


私は笑いながら返す。

「そりゃそうだよ。私だって誰でもいいわけじゃないし」


その瞬間、空気が変わる。

ゆうは立ち止まって、少しだけ息を吸う。


「……俺じゃダメか?」


冗談だと思いたい。

聞かなかったことにもできる。

でも、その言葉だけが、はっきり残る。


街の音が遠くなる。

三人だった距離に、戻れない線が引かれる。


その夜、どうしていいかわからなくて、私はりくにLINEを送る。


「ちょっと、相談があるんだけど」


少しして、返事が来る。

「何?」

「相談乗ってほしいの」

「悩み事?」


画面を見つめながら、私は打つ。

「んー、というか、困ったかな」


すぐに返事が返ってくる。

「じゃあ、帰りにスタバ?」

「スタバ高いよ。ファミレスのドリンクバーでいい」

「わかった。ガストな」


約束は、それだけで決まる。



ガストに着くと、りくはすでに席にいる。


「待った?」

「待ったけど、待ってない」


「どっちだよ」


ドリンクバーに行って、戻ってきてからは、しばらくどうでもいい話をする。

学校のこと、クラスのこと、いつもの会話。


グラスの氷が少し溶けた頃、私は意を決して言う。

「あのさ。たぶん、ゆうに告られた」


りくが一瞬、きょとんとする。

「たぶん?」


私は言葉を選びながら続ける。

「モテるんだから彼女作ったら?って言ったら、

誰でもいいわけじゃないって言われて。

そりゃそうだね、私も誰でもいいわけじゃないわって返したら、

俺じゃダメか?って」


一気に言ってから、りくを見る。

「これって、告白だよね」


りくは小さくため息をつく。

「……はぁ。その確認から?」


私は思わず真顔になる。

「そうだよ……」


少し沈黙が流れる。


「どうしようか。困った」

「困ってるのか?」


私はうなずく。

「そんなふうに思ってなかった。

ずっと、友だちだと思ってたから……」


りくはしばらく黙っている。

それから、静かに言う。

「そうか。ごめん、先に謝っておく」


「なんで、りくが謝るの?」


りくは少しだけ苦い顔をして言う。

「俺も、お前を困らせる」


「えっ?」


りくは目を逸らさず、続ける。

「俺も、お前のこと好きだ」

「付き合ってほしい」


言葉が落ちて、逃げ道がなくなる。


守っていたはずの均衡は、音もなく崩れる。

三人でいる時間が、一気に遠ざかる。


選ばなきゃいけない夜が、こんなふうに来るなんて思っていない。


夕暮れの帰り道。

もう三人で並ぶことはない。

影は二つか、一つで、三つになることはない。


「今日までありがとう」

「楽しい三人だった」


そう心の中で言って、私は一人で歩き出す。

呼ぶ名前の順番がずれていく。


夜だけが、静かに全部を知っている。

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