第13話 唯一の女性1 side:クロディーヌ
どうして…なぜあなたは死んでしまったの!? ロシェル!
あなたが死んだせいで…私の人生めちゃくちゃよ!!
『僕の唯一の女性。君は特別な存在だよ』
そういつも言っていたじゃない!
私にはたくさんの求婚者がいたわ。
その中でもあなたなら私の為に何でもしてくれと思ったから、あなたとの結婚を決めてあげたのよ。
思った通り、あなたは結婚してからもいつも私を一番に考えてくれていた。
けれど……あの子を授かってから状況は変わった ―――――…
あの子を妊娠した時は最悪だったわ。
髪は抜けるし、肌は荒れた。
あれだけ細かった体系は、どんどん醜く太って行った。
食べては吐いてを繰り返す。
つわりが重く、なかなか終わらなかった。
五か月頃になっても、おさまらない。
何も食べたくなかった。
なのに周りは、お腹の子の為に食べろ食べろと強制する。
お腹の子のせいで、私は苦しむ。
お腹の子のせいで、私は醜くなる。
ああ…子供なんて作るんじゃなかった!!
アレットが生まれた時、夫は私ではなく一番にあの子を抱いた。
そして、その後に私のところにきたわ。
私を後回しにした存在。
あの日から、アレットが疎ましくて疎ましくて仕方がなかった。
髪色がロシェルと同じ琥珀色だったけど、面立ちと目の色は私とそっくり。
あの子は成長するときっと美しく花開く。
私はその分、年老いていく…
そんな未来が見えて、ますますアレットが憎らしくなった。
だからロシェルには、いつも私を優先するように言ったわ。
でなければ、いつでも離縁するわよ…と。
私をなおざりにするなんて許せるはずもないじゃない。
実家にいた時も、皆いつも私を誰よりも優先してくれていたのよっ
だから、結婚しても私が一番でなければならないのよっ!
なのに……
ロシェルがいなくなったら、誰が私を一番にしてくれるの?
アレットがシェルダンと結婚し侯爵家を継いだら、私はこの屋敷から追いやられるかもしれない。もしかしたら実家に戻されるかもしれないわ。
両親はすでに鬼籍に入り、実家は当主となった兄とその家族が住んでいる。
そんなところで肩身の狭い思いをするのはまっぴらよ!
再婚するにしても、どうしたって老いぼれの後妻が関の山。
この美しい私がそんな結婚するべきではないわっ
なら、どうすれば―――――
「大丈夫ですか? 侯爵夫人」
ロシェルの葬儀中に、倒れた私を屋敷まで送ってくれたシェルダン。
彼は屋敷に着くと、私を部屋まで運んでくれた。
侍女は私の着替えの準備で、一旦部屋を出ていた。
シェルダンは、寝台で横になっている私を心配そうに声を掛ける。
そう…私には若くて美しい男がふさわしいのよ。
今後アルブルグ侯爵家の一員となるシェルダンのように。
――― そうよ…私にふさわしい相手が見つからないのなら、手に入れればいい。
ロシェルの代わりになる人を…
「ああ…シェルダン…どうか私を支えて…っ ロシェルを亡くして不安なのよっ」
「こ、侯爵夫人……っ」
私は涙を流しながら、シェルダンの胸に手をあて縋りつく。
彼の喉が上下するのわかった。
引き締まった肌、青い匂い。
もうアレットを抱いたのかしら…?
「お願い…寂しいの…」
「……っ」
私からの口付けを、彼は拒絶しなかった。
彼の拙い舌使いが可愛らしい。
コンコンコン
「ご、ご気分がすぐれないようですね、ゆっくりお休み下さい」
あわてて身体を放すシェルダン。
タイミング悪く、侍女が戻って来てしまった。
「…ありがとう、シェルダン」
私はお礼を言いながら、彼の太ももをするりと撫でる。
びくりと身体を固くするシェルダン。
「―――っ! 失礼いたしますっ」
シェルダンはすばやく立ち上がると部屋を出て行った。
私にはわかる。
あなたが私を求めている事に…
私は後日、シェルダン宛に書簡を出した。
『あなたに会いたいの』
そう記した便箋には、とあるホテルの住所と部屋番号を認めた。
彼は来る。
きっと来るわ…
私はホテルの部屋で、ワインを飲みながら一人待っていた。
コンコン
「…僕です」
私はドアを開け、微笑む。
「待っていたわ、シェルダン」
「侯爵夫人…」
私は彼の手を取ると、部屋へと誘った。




