友達を作る呪文
このお話は、1980年代に書いたものです。
日本はバブル経済と呼ばれる好景気でした。
スキーやスノーボードの楽しさは、雪の中で転げまわることと、
すきっ腹で食べるロッジのカレーライスでしょうか。
お腹がすいていると何でもおいしく感じます。
毎年、初雪情報が発表されるとワクワクします。
いつもは仕事で出かける北海道へスキーに行ったときのお話です。
いろんなスキー場を回って最後の一日は札幌市内でお買い物です。
出張の時に、いつもランチでお世話になっているレストランへやって来ました。
このレストランは、札幌に来たときに必ずやってくるお気に入りの場所なのです。
一人で来ても、マスターのギャグで味付けされた美味しい料理が楽しめます。
仲間たちと、買い物に出かける場所の相談をしましたがなかなか決まりません。
そこで、住んでいる人にアドバイスをお願いしようということになり、
お店のマスターに市内の買い物の穴場を聞いてみました。
そして、受話器を取り上げて話し始めたマスターの言葉は魔法の呪文でした。
マスター「これから、オレの友達が買い物に行くからよろしく頼む!」
その瞬間から、僕たちは友達になりました。
知人なのか友達なのかがはっきりするのは、他の人にその人を紹介する時にわかるのですね。
「僕の友達」、「私の友達」と、自信をもって言った時から、僕たちは友達になるのでしょう。
北海道に友達がいて、彼はレストランで美味しい黒カレーを作っています。
作者の経験を素材に書いた私小説です。