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第一話 デグナー帝国の夜明け

この世界には様々な因果律が存在する。例えば、雨が降れば虹が出るような、あるいは男女が惹かれあい、新たな命を育むような、そんな因果が存在する。加えてこの世界には、対価を差し出した者に力を与える。そんな因果が存在する。この物語は因果によって与えられた力で世界の理を破壊した少女の記録である。

起源歴1000年以前世界中に異能を操る者達が存在した。彼等は身体の一部を欠損しており、その欠損部位に応じた異能をつかうことができた。しかし、誰でも異能を得られるわけではなく、異能が使える者は限られていた。故にそういった者たちは、発現した異能を天からの贈物ギフトであると信じ、その異能を使い国の利益ために使用した。異能を持たない民は、いつしか異能を持つ者たちを尊敬の意を込め"ギフター"と呼び、彼らと良好な関係を築いていた。

しかし、起源歴1130年ブリン王国に新たな王ジェームス一世『チャールズ・ジェームス・スチュアート』が即位してからそのような状況は崩れ去った。

ある日一人の臣下がジェームス王にこう提言した。


「閣下、昨今こんな情報が私の耳に入りましてね。どうやら異能者たちが団結し、国家の転覆を図っているようです。」


謎の死を遂げた先代の王の側近でもあったハインリヒ・クラーマーの一言により、大規模な異能者狩りが行われたのだった。

異能への尊敬が恐怖に置き換わる。ギフターという言葉が蔑称に変わるのに対して時間はかからなかった。


「ギフターどもが井戸の水を毒に変えたらしいぜ。」


「どこかの村の子供がギフターに殴り殺されたって話を聞いたよ。」


「全くもって酷い奴らだ。」


「ギフターを見つけ次第殺せ!」


根も葉もない噂が国内だけでなく、世界中に広がった。各国では異能者狩りが行われ、異能者とその家族、そして異能者の疑いをかけられた者たちまでもが故郷を追われた。そのような者たちを受け入れる集落が一つだけ存在した。当初は山間の平原にある小さな集落であったが、異能者を受け入れてからみるみる人口が増加し、平原一帯が街となった。そして、起源歴1135年平原一帯と周囲の山脈、近隣の同様に異能者を匿っていた集落を併合し領土としたデグナー帝国を建国したのだ。ハインリヒ・クラーマーの策略によってブリン王国を追われたベンルンハルト・フォン・エンルストがデグナー帝国の皇帝となった。帝国は起源歴1225年を帝国歴元年と定めた。

こうしてできた帝国であるが、異能者狩り令が出された際に多くの異能者が捕まり、処刑されたので、異能者であると間違われた者たちが多く、自由に異能を操れる者の数は極端に少なかった。

帝国歴二年、ブリン王国からの侵略により戦争が勃発した。このような国をハインリヒ・クラーマーが見過ごすわけがなかった。周辺国は両国の様子を伺っていた。水面下で関係に歪みが生じている周辺国にとって下手に参戦し国力を削ぐことは国家の滅亡に等しいことであった。それに戦争はデグナー帝国の敗戦で早期に終結すると判断したからでもあった。帝国歴一年に戦争が始まっていたらそうなったのかもしれないが、王国は帝国に一年の猶予を与えてしまった。この一年が帝国にとって救国の一年となったと言っても過言ではない。ベンルンハルト帝は、その一年で産業と工業を一国家のレベルにまで発展させ、軍隊の養成に全てを費やしたのだ。こうして出来上がった軍隊は先進的な軍備を持ち合わせブリン王国に引けを取らないようなものへと成長していたのだ。

帝国歴十二年にハインリヒ・クラーマーが死去すると両国間で協定を結び終戦を迎えた。

建国して間もない帝国がかの王国を退けたという事実は世界中を激震させた。

この頃帝国ではある変化が起きていた。異能を持つ子供が増えてきたのだ。ベルンハルト帝は異能の軍事利用を視野に入れ、異能研究機関を兼ね備えた士官学校を設立した。

帝国歴二十年に帝国議会を設立後ベルンハルト帝は皇位を息子に継承しその一年後世を去った。

マルセイユ共和国からの宣戦布告があった帝国歴三十九年までの二十二年間デグナー帝国は国力を蓄え続け、国民は安寧の時を過ごしたのだった。


帝国暦四二年十二月十日

私はデグナ帝国の小さな集落で産まれた。吹雪の夜だった。


「おぎゃー‼︎おんぎゃー」


「あぁ!生まれてきてくれてありがとう。君の名前はミーアだ…おい、待てこの子、片目が…無い。」


「嘘っ!なんてことなの、どうして神様は、我が子にこんな仕打ちを」


私ミーア・エッケルトは、生まれつき片目を欠損していた。家は貧しく、私は父のアルベルト・エッケルトに取り上げられた。母のニーナ・エッケルトは、私をこんな姿で産んでしまったことに責任を感じていたのか、とても過保護で心配性の母であった。この様な境遇に置かれてはいたが、私達家族は平和に暮らしていた。そうこの力に気づくまでは…

私が生まれたこの国、デグナ帝国では異能を持つ者達に軍事的な価値を見出し、満6歳の国民全員に異能調査を実施していた。勿論もれなく私もその対象であった。


「お嬢さん、左の目が無いんだって?ウインクってできる?」


思えばこの調査師の言葉が悪夢の始まりであった。


「ミーアね、ウインクできないの。」


調査師の男から黒い布を手渡される。


「お嬢さん、これで右の目を覆ってくれないかな?」


「どうして?」


「君に隠された力が無いか調べたいんだ。」


「隠された、力?」


私は言われるがままにその眼帯で右の目を覆った。


「お嬢さん、今周りが見えるかい?」


「見える‼︎見えるよ!… どうして?」


見えるというよりかは、わかると言った方が感覚的に近かった。


「それはね、お嬢さんが目の代わりに天から貰った異能ギフトのおかげだよ。君みたいな特別な人間をね昔はギフターって呼んでいたんだ。」


暫くして、私はこの調査師の紹介で六年制の初等軍学校での寮生活を強いられることになったのだ。


「ミーア!一人で大丈夫?」


心配症の母が私に問いかける。


「うーん、わかんない。」


この時の私には、六年という時間の概念がわかっていなかった。


「嫌だったら、いかなくてもいいんだぞ。」


父が向こうを向きながら、呟く。


「ううん、嫌じゃ無いよ、私、学校でお勉強頑張るね!」


「そうか。」


と寂しげに呟く父、

しばらくして、迎えの馬車が到着する。


「ミーアちゃん… いってらっしゃい。」


「勉強頑張るんだぞー!」


父と母は、娘を心配させまいと無理に笑って私を見送った。


読み返すと要らない要素や足りない要素、エピソードの順番などの改善点が多く、書き直したくなったのでリメイクです。

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