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再会の病室

 廃墟を覆っていた悪意が完全に消え去り、光が再び街を包み込んだ。戦いを終えたアキラとミキは疲労の色を隠しきれないものの、確かな達成感を胸に抱いていた。


「終わった……」アキラがトワイライトエクスカリバーを見つめ、深い息を吐く。


ミキも頷き、セルスの声がイヤホン越しに響いた。「ミキ、アキラ、お疲れさま。本当に、よく頑張ったわね」


リアの声も少し安堵した様子で続く。「これでクルスも救えるはずよ。急いで彼のもとに向かいましょう」


二人は廃墟を後にし、クルスが眠る病室へと向かった。


病室には、穏やかな静寂が広がっていた。薄いカーテンが窓からの風にそよぎ、柔らかな陽光が室内を満たしている。その光は、戦いを終えた世界の平和を象徴するかのように、暖かく優しく差し込んでいた。


ベッドに腰掛けたクルスは、まっすぐ窓の外を見つめていた。彼の背中はどこか物静かで、その姿には言葉にできないほどの疲労と、それを覆う深い静けさが滲んでいた。


窓の外には、澄み渡る青空が広がっている。重苦しい闇に覆われていた空は、今では一点の曇りもなく、どこまでも青く美しい。クルスの瞳がその景色をじっと追いかけているのがわかった。


その瞬間、病室に入ってきたミキの目に涙が浮かんだ。


「クルス……!」

彼女の声は震え、全身から抑えきれない喜びと安堵が溢れ出していた。ミキは一歩、また一歩と駆け寄ろうとした。


その時、クルスが小さく呟いた。

「空が……元通りだ」


その声はかすかだったが、確かな感情が込められていた。平和を取り戻した空への感謝、自分を救ってくれた仲間たちへの感謝、そして新たに湧き上がる決意のような響きがあった。


クルスの視線は、再び窓からゆっくりと扉の方へと移動する。そしてアキラとミキの姿を捉えた瞬間、彼の口元に微かな笑みが浮かんだ。


「おかえり……二人とも」

その一言には、彼のすべての想いが込められていた。戦い抜いた仲間たちへの感謝と、戻ってきた平和への安堵がにじんでいる。


ミキの感情が一気に溢れ出した。涙がぽろぽろと頬を伝い、彼女は勢いよく駆け寄った。


「よかった……本当に、よかった……!」

彼女の声は震え、体が小刻みに震えているのが見て取れる。その姿からは、心の底からの安心と喜びが感じられた。


彼女がクルスに抱きついた瞬間、その暖かさが彼女の中に残っていた緊張を一気に溶かしていった。


だが、その時だ。イヤホン越しにリアとセルスの慌てた声が飛び込んできた。


「ミキ!落ち着いて!クルスはまだ完全に回復してないのよ!」

「そうよ!抜け駆けはずるいわ!」


ミキはその声に驚き、慌てて体を離した。その頬が赤く染まり、視線を彷徨わせながら言葉を絞り出す。


「ごめん……でも、本当に嬉しくて……!」


彼女の様子に、クルスが申し訳なさそうな笑みを浮かべた。目の下にはまだ疲労の影が残るが、その目は優しさに満ちていた。


「心配かけたな……ありがとう、ミキ」


その一言は、彼女の心をさらに揺さぶった。ミキは涙を拭いながら、再び笑顔を浮かべる。


一方で、アキラは少し離れた場所から静かにそのやり取りを見守っていた。彼はそっと口を開き、優しい声で語りかけた。


「クルス、全て終わったよ。イシュレッドも、闇の脅威も。もう何も心配いらない」


その言葉に、クルスはゆっくりと目を閉じ、深く息を吐いた。そして、静かに口を開く。


「そうか……ありがとう。本当にありがとう。みんながいなかったら、俺はこうして目を覚ますことすらできなかった」


その声には、全員への深い感謝が込められていた。その言葉を聞き、アキラは満足そうに頷く。ミキもまた涙を浮かべながら、深く頷いた。


「クルス、私、分かったの」ミキが静かに口を開く。「あなたがずっと守りたかったものが……」


クルスは驚いたように彼女を見つめる。「守りたかったもの……?」


ミキは瞳を潤ませながら微笑み、言葉を続けた。「この世界、そしてセルスたちの世界……それを守りたかったんだね」


彼女の言葉に、クルスの目がわずかに揺れた。そして、彼は深く頷く。


「ああ……そうだよ。どちらも、俺にとって大切な世界だから」


クルスはそっとミキの手を握り、改めて感謝の言葉を伝えた。「ミキ、俺を助けてくれて……本当にありがとう」


その瞬間、セルスの声がイヤホン越しに響いた。


「ちょっとクルス!なんでミキだけに感謝するの?私も結構頑張ったんだけど!」


その声に、部屋の空気が一気に和らいだ。ミキは笑いながら、セルスに向けて言った。


「ごめんね、セルス。ありがとう。あなたがいてくれたから、私は最後まで頑張れた」


セルスの声が少し震えて返ってくる。「……当然でしょ。私はあなたたちの仲間なんだから」


ミキは頬を涙で濡らしながらも、優しく微笑んだ。「セルス、本当にありがとう」


そのやり取りを見届けたアキラが、ふとクルスに向き直る。

「闇と光の調和……それはただの理想じゃなかったんだ。闇と光を調和した剣、トワイライトエクスカリバーがそれを証明してくれた。光と闇が共存することで、新たな可能性が生まれるんだよ」


クルスはその言葉を聞いて、再び静かに頷いた。「そうだな。俺たちは、それを信じて戦い抜いてきた」


ミキも笑顔を浮かべながら言葉を添えた。「クルス、私もその調和の力を信じてる。光も闇も、それぞれが大事なものだって分かったから」


ミキはポケットからクルスのスマホを取り出し、そっと彼に手渡した。「これ、ちゃんと守ってたよ」


クルスはそれを受け取り、感慨深げに画面を撫でた。そして、みんなに向けて微笑んだ。「ありがとう、みんな。本当にありがとう」


アキラは剣を構える仕草をしながら、力強く言った。「じゃあ、次は異世界の魔女を倒す番だな」


クルスもその言葉に深く頷く。「ああ、これからが本番だ」


窓の外では青空が広がり、優しい風が病室を包み込む。彼らの旅は新たな一歩を踏み出したのだった。

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