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現代に甦る剣豪

 街外れの廃墟。長い年月を経て崩れた壁や錆びついた鉄骨が、寂れた威圧感を醸し出していた。廃墟の奥から漂う闇は、まるで生きているかのように蠢き、不気味な音を立てていた。


冷たい風が吹き抜け、砂埃を巻き上げる中、アキラとミキは互いに無言のまま前を見据え、進んでいた。二人の表情には緊張が滲んでいるが、その歩調には迷いがない。


「ここか……」

アキラが立ち止まり、光の剣を握り直す。すでにその手のひらには汗が滲んでいるのが分かった。


ミキも少し震える手でストラテゴウスを操作し、廃墟の奥から放たれる異常な魔力を解析していた。画面にはイシュレッドの魔力反応が示されているが、その数値は想像を超えるものだった。


「……やっぱり、とんでもない力……」

ミキが呟くと、耳元のイヤホンからリアの声が聞こえてきた。


「大丈夫よ、ミキ。アキラとあなたがいる限り、きっと闇を打ち破れるわ」


その言葉にミキは深く息を吸い込み、意識を集中させた。「……うん、やるしかないよね」


視線共有シェアヴィジョンとグループ通話の設定は大丈夫だな」

アキラが最後に確認する。


「ええ。大丈夫よ」

ミキもそれに応える。


廃墟の奥で、突然重い音が響いた。まるで金属同士がぶつかるような音が遠くから反響して聞こえる。それと同時に、冷たい空気が一層肌を刺すように感じられた。


「来るぞ……」

アキラが剣を構える。その瞬間、廃墟の中心にある暗闇が揺れ始め、一つの影がゆっくりと現れた。


闇を纏った長身の男、イシュレッド。彼が姿を現しただけで、周囲の空気はさらに重く冷たくなり、廃墟全体が彼の存在に支配されているかのようだった。


その瞳は赤く輝き、まるで相手の内面を見透かすような鋭い視線を向けてきた。彼の周囲を包む漆黒の霧が不気味に揺れ、生命の気配を打ち消すかのように広がっていく。


イシュレッドは悠然と歩みを進め、アキラとミキの前に立ちはだかった。そこから溢れる圧倒的な威圧感が二人を飲み込もうとしていた。


イシュレッドは二人をじっと見つめた後、冷笑を浮かべた。


「フッ…誰かと思ったら心の弱い小娘と剣の基礎すら知らん小僧が二人で何をする気だ?滑稽だな」


その嘲りの言葉に、アキラの隣でミキが僅かに肩を震わせた。彼女の手に握られたスマホがかすかに揺れる。


その瞬間、ミキのイヤホンからリアの怒りを帯びた声が響く。

「なんですって……!この男、許せない……!」


さらにスマホ越しのセルスの声も続く。

「なんで嫌なヤツ……!」


だが、アキラは冷静だった。剣を握る手をわずかに動かしながら、小さく呟いた。


「リア、セルス、これでいい。油断してくれた方が作戦が成功する」


その言葉に、リアとセルスは一瞬沈黙したが、すぐに納得したように声を潜める。


「……分かったわ」リアが短く答える。


「ミキ、気を引き締めて」セルスもミキを支えるように言葉を送った。ミキはその言葉に黙って頷く。


イシュレッドは二人をなおも見下したまま、さらに挑発を続けた。

「闇の領域を展開するまでもない。この程度の相手に、そんな手間は必要ないだろう。さあ、かかってこい。私を楽しませてくれ」


その言葉に、アキラは剣を握りしめ直し、リアの指示を待ちながら静かに深呼吸をした。一方、ミキもスマホを握る手を一瞬だけ強くしめ、ストラテゴウスの画面を睨みつけた。


「アキラ、準備はいい?」リアの声が静かに届く。

「ああ、行くぞ」


アキラは深く息を吸い込むと、ゆっくりと吐き出した。その胸の奥には、恐怖と緊張がない交ぜになった感情が渦巻いていた。だが、彼の目には強い意志の光が宿っている。


「ここで怯えたら、クルスも、街も救えない……!」


自分に言い聞かせるように呟くと、アキラはクリエイトキャプチャを起動した。スマホの画面には、アキラが家から持ち出した歴史小説と掛け軸のデータが映し出されている。


「歴史小説は武士の物語……掛け軸には剣豪の座右の銘……これを組み合わせれば……!」


画面上で素材を選択し、組み合わせを試行錯誤する。次第に合成が進み、鮮やかな光とともに画面に「剣豪の書」というアイテムが現れた。


「よし、できた!」


アキラはそのデータを自らの剣に付与するため、さらにクリエイトキャプチャを操作した。画面に「剣豪のスキルを付与しますか?」という文字が浮かび上がり、アキラは迷わず「はい」を選択した。


剣がかすかに光を帯びる。その輝きは一瞬で消えたが、アキラの手に握られた剣は明らかに違う存在感を持ち始めていた。



「剣豪の技……今こそ!」


アキラは剣を握り直し、その感覚を確かめる。彼の脳裏に、一瞬だけ異世界の剣豪たちの経験が流れ込むような感覚が走った。


(これが……剣豪のスキル……!)


剣を振るうイメージが鮮明に浮かぶ。それは一撃ごとに無駄のない動作、敵の隙を見抜く鋭い洞察、そして身体の動きを極限まで最適化する技術の集大成だった。


「アキラ、まずは足元に注意しながら、攻撃のタイミングを見計らって!」

リアの声がイヤホン越しに響く。その指示は冷静で的確だった。


「了解!」


アキラは剣を構え直し、イシュレッドに向けて一歩踏み出す。その動きには、これまでにはなかった滑らかさと正確さが宿っていた。


イシュレッドは最初、嘲笑を浮かべながらアキラを見ていた。


「小僧が剣を振るう真似事をしているのか。笑わせてくれる」


だが、アキラが剣を振るうたび、その空気は次第に変わり始める。一撃目はイシュレッドの攻撃を紙一重でかわしながらの反撃だった。刃が風を切り、鋭い音を響かせる。その一撃はイシュレッドの黒い外套をかすめ、彼の目がわずかに見開かれる。


「ほう……?」


アキラは剣豪スキルがもたらす感覚を確かめるように動きを繰り返していた。敵の動きが緩やかに見える。自分の剣がどのタイミングで、どの角度で振るえばよいのか――それが本能のようにわかる。


「リア、次は右足を狙うべきだ!」

アキラが声を上げると同時に、リアの指示が重なる。


「その通り!次の一撃で、イシュレッドのバランスを崩して!」


アキラは一歩踏み込み、剣を低く構える。そして、次の瞬間には剣を振り上げ、イシュレッドの右足元を狙った鋭い一撃を放った。


———地雷斬じらいざん


その動きは、確かに剣豪の技そのものだった。


イシュレッドは軽く足を引いて避けるが、その表情にわずかな驚きが混じる。彼は冷たい声で言った。


「ほう……剣の基礎すら知らんと思っていたが、それなりに形になっているではないか」


その声には、わずかな焦りが混じっていた。


(よし……効いている……!)


アキラは心の中で小さく拳を握った。だが、ここで油断はできない。イシュレッドの闇の力はまだ本気を見せていないことを感じ取っていた。


「リア、次はどうする?」

アキラは息を整えながら問いかける。


「そのまま様子を見て、次の隙を狙って。一気に攻め込む準備をして!」


アキラは頷き、再び剣を握り直した。背後でミキがストラテゴウスを操作しながら、支援の準備を進めているのが見える。


「アキラ、私は準備できた!いつでも援護できるよ!」

ミキの声が力強く響く。


アキラは剣豪のスキルを活かしながら、さらに鋭い剣技を繰り出し、イシュレッドとの間合いを詰めていった。剣の軌跡は美しくも鋭利で、彼の技が確実にイシュレッドを翻弄し始めていた。


その間、ミキはストラテゴウスを駆使してアキラの支援に回る。画面上にはイシュレッドの動きや、彼が纏う闇の力の影響範囲がリアルタイムで解析されている。解析結果は即座にアルケウスに連携され、新たな防御魔法の構成が進む。


「ルミナス・ガーディアンを構成しました」

アルケウスからミキに通知が届く。


ミキはすぐさま画面をタップし、詠唱を開始した。


「光よ、盾となりて――『ルミナス・ガーディアン』!」


輝く光の壁がアキラの前方に展開され、イシュレッドが放った闇の波動が弾き返される。その防御はまるで聖なる盾のように力強く、イシュレッドの攻撃を完全に防ぎきった。


「ナイス、ミキ!」

アキラが声を上げる。


ミキは小さく頷きながら次の支援の準備に入った。「次の防御準備を進めるよ!」


「リア、次はどう動く?」

アキラがリアに尋ねると、即座に指示が返ってきた。


「右側の瓦礫を使ってイシュレッドの視界を遮って!」


アキラは言葉通り、瓦礫を蹴り上げて宙に舞わせた。その動きがイシュレッドの視界を一瞬奪い、その隙を突いてクリエイトキャプチャを再び起動する。


「今度はこれだ……!」


アキラは廃材とチェーンを素材にし、罠を組み上げた。画面には「捕縛罠」の文字が浮かび上がり、合成が完了すると同時に、その罠が現実に展開された。


罠のチェーンがイシュレッドの足元に絡みつき、その動きを一瞬鈍らせる。


「ふむ……この程度で私を封じるつもりか?だが、なかなかのやり口だ」


イシュレッドがそう呟いた瞬間、ミキが再び光属性魔法を構成し、詠唱を始めた。


「光よ、道を照らせ――『ルクス・ブライト』!」


眩い光の矢がイシュレッドに向かって放たれ、その一部が彼の肩をかすめた。光が闇を切り裂き、周囲の空間が一瞬明るくなる。その光景に、イシュレッドの表情が微かに変わる。


「ほう……ここまでやるとは思わなかったが……」


彼の声にはわずかな警戒心が混じっていた。しかし、その表情に完全な焦りはない。


「だが、それだけだ」


イシュレッドは手を上げ、周囲の闇の波動をさらに強化し始めた。黒いエネルギーが彼の手から溢れ出し、空間そのものが歪み始める。


「遊びは終わりだ……小僧、小娘、ここまで楽しませてくれた礼として、少しだけ本気を見せてやろう」


その言葉とともに、廃墟全体が闇に包まれるような錯覚を覚える。アキラとミキの体に重い圧力がのしかかり、空気がさらに冷たく感じられた。


だが、アキラは冷静さを失わなかった。深呼吸をし、剣を構え直す。


「次はこっちの本番だ。リア、セルス、準備はいいか?」

アキラは小声で呟く。


「もちろん。やれることを全部やるわ」

セルスの声が耳元で響く。


リアも即座に答える。「アキラ、ミキ、あなたたちならできる。次の手で、イシュレッドを追い詰めるよ!」


戦いはさらに激化し、次なる局面へと突入していった。闇の中で光を見出すため、二人は全力を尽くして挑む覚悟を固めていた――。

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