作戦会議
アキラは自分の部屋に戻りイシュレッドの戦いに向けて考えていた。
イシュレッドが言われた言葉…
『タイミングはいい。だが、技量がまるで足りていない』
そのイシュレッドの言葉からも課題はアキラにあるのが明白だった。自分だけがあの戦いの中の測度についていけてなかった。
机の上にはリアから転送された光の剣が置かれ、その輝きが淡く部屋を照らしている。アキラはその剣をじっと見つめ、前回の戦闘を振り返りながら深く息を吐いた。
「俺の剣技が未熟だったのは分かってる……。リアの指示がなければ、あの戦い、まともに立っていられなかった」
アキラは苦い表情で呟いた。
リアの声がスマホ越しに響く。
「でも、アキラ。あなたが戦い抜いたのも事実よ。それに、あなたが頑張ったから、私も支えることができた」
彼女の言葉には温かみが込められていたが、その裏には自己反省の色も滲んでいる。
「いや、リア。正直、俺だけじゃどうにもならなかった。アイテム生成の能力も、全然使いこなせなかったし……」
アキラは拳を握り締め、自分の無力さに歯噛みするような表情を浮かべた。
リアは一瞬言葉を詰まらせ、意を決したように続けた。「実は私も反省してるの。前回の戦いで、指示が遅れる場面があったのは確かだわ。次の戦いでは、もっと的確で迅速なサポートをするように頑張る。だから、一緒に強くなりましょう」
その言葉にアキラは少しだけ顔を上げた。「ありがとう、リア。次はもっと連携を強化して、クルスがいなくても……俺たちでやり遂げる」
ふと、アキラの視線が机の上の光の剣に戻った。「これ、リアから転送してもらったけど……リアの手元にはもう残ってないんだよな?」
リアの声が応えた。「ええ。私が転送した瞬間、私の手元から消えたわ」
アキラは考え込むように顎に手を当てた。「ってことはさ……異世界の素材を写真で撮れば、それが消えて別のものに変わる可能性があるってことか?」
その考えを確かめるため、アキラはリアに異世界の素材を転送してもらうよう頼んだ。リアはすぐに応じ、アキラにアイテム転送で小さなクリスタル状の素材を送る。
アキラはその素材を机に置き、スマホのカメラを構えて撮影。アイテム生成のアプリを操作し、撮影した素材を使って簡単な合成を試みる。数分後、画面に「合成完了」の通知が表示されると同時に、机に置かれていた素材は消失していた。
「……やっぱり。異世界のアイテムは、素材として使ったら消えるんだな」
アキラはその結果を見て確信を深めた。
リアの声が少し興奮気味に響く。
「それって、敵の装備や魔法にも応用できるんじゃない?」
「そうかもしれない……」
アキラは光の剣を手に取り、さらに考え込んだ。
アキラの脳裏に、光の剣を合成した際の記憶が蘇る。「そういえば、この剣を合成した時、素材に『勇気』とか『精神性』が含まれてたよな……」
「ええ、そうね。だから、ただの物質だけじゃなく、感情やエネルギーそのものも素材にできるのよ」
リアが答える。
アキラは手を止め、ふと前回の戦闘を思い出した。「じゃあさ、もしイシュレッドが闇の魔法を使ったら……その魔法をキャプチャして、別の力に変えることができるんじゃないか?」
「魔法そのものを素材にする……そんなこと、本当に可能なの?」
リアの声には驚きが混じっている。
「試してみる価値はある」
アキラは決意を込めた声で答えた。
アキラとリアは次の戦闘でクリエイトキャプチャをどう活用するか、具体的な作戦を練り始めた。
「イシュレッドが闇の剣を使ってきたら、それをキャプチャして別の剣に変える。あるいは、放たれる魔法を取り込んで、光の力に変えて返すとか……」
アキラは次々にアイデアを出す。
リアが慎重に提案を補足する。「でも、タイミングが重要よ。敵の力をキャプチャするには、一瞬の隙を見極める必要がある。それに、アキラ自身が慌てず冷静にそれを使いこなすだけの集中力を持たなきゃ」
「分かってる。リアが指示をくれれば、そのタイミングで動く。だから、次はもっと連携を強化しよう」
アキラは強く頷いた。
その時、スマホからセルスの冷静な声が響いた。「その作戦、理に適っているわね。でも、あなたが敵の攻撃をキャプチャするには、私たちの支援も不可欠になるわ。アキラ、リア、あなたたちが私たちを信じてくれるなら、この作戦は成功するはずよ」
「セルス……ありがとう」
アキラの声には感謝が込められていた。
リアもその言葉に希望を見出したように言った。「アキラ、私たちならできるわ。次の戦いで、それを成功させればイシュレッドを追い詰められるはず」
アキラは部屋にあるものや、母親の宝石箱など素材になる画像データをイシュレッドとの戦いに備えて集める。
「よし、準備はできた」
アキラは拳を握りしめ、決意を固めた。「クルスがいないからって負けるわけにはいかない。俺たちで、あのイシュレッドを倒してみせる!」
こうして、次の戦いに向けた準備が静かに進んでいった。リアとセルスの信頼を背に、アキラは自分の力を最大限に発揮する覚悟を固める。そして、イシュレッドを倒すための新たな希望が、徐々に形を成していくのだった。
◇
クルスが横たわる病室の中、淡い光がベッドサイドを照らしていた。ミキはその光の中で、未だ目覚めないクルスの顔を見つめていた。横にはセルスがスマホ越しに投影され、静かにミキに語りかける。
「ミキ、ここからが正念場よ。私たちでクルスを助けるための準備を進めなければならないわ。」
セルスの声には決意が宿っていた。
ミキは顔を上げ、拳を握りしめる。「うん、私にできることを全部やるよ……!クルスを助けるためなら、どんなことだって」
セルスは優しく微笑んだ。「まずは、あなたが私の魔力を使って魔法を発動する感覚をつかむ練習から始めましょう。それができれば、次のステップに進めるわ」
セルスはミキにクルスのスマホを操作させ、「アルケウス」を起動した。画面には初歩的な防御魔法の選択肢が表示される。
「最初はこの『シールド・ライト』から始めましょう。私が魔力を送り込むから、それをあなたが受け取って魔法を発動する感覚を覚えてちょうだい」
セルスの声には、ミキへの信頼が込められていた。
ミキは緊張しながらも頷き、スマホを握りしめた。「やってみる……セルス、お願い」
セルスは静かに目を閉じ、共鳴の力を通じて自らの魔力をミキに送り込む。ミキはその力を受け取り、画面に表示された詠唱を読み上げた。
「光の盾よ、我が前に立ちはだかれ――『シールド・ライト』!」
一瞬の間、何も起きないかと思われたが、次の瞬間、ミキの前に淡い光の壁が現れた。
「成功した……!」
ミキは驚きと喜びに目を見開く。
セルスは満足げに頷いた。「上出来よ、ミキ。あなたには魔力のコントロールの才能があるわ。この調子で次の段階に進めましょう」
その後、セルスとミキは様々な魔法を練習し、魔力の流れをつかむ感覚を少しずつ身につけていった。ミキは最初こそ戸惑っていたものの、練習を重ねる中でその才能を開花させていく。
「私、本当にできてる……!」
ミキの声には自信が少しずつ宿り始めていた。
セルスは次に、「ストラテゴウス」を起動するようミキに指示した。
「次は、闇の領域を打ち破るための光と闇の合成魔法を解析するわ。それがないと、イシュレッドには勝てないもの」
セルスの言葉に、ミキは真剣な表情で頷き、ストラテゴウスに情報を入力した。
画面には解析結果が表示された。
「解析結果:闇の領域を無効化するには、光と闇の融合魔法が必要です。」
その魔法の詳細が次々と表示される。
「『ルクス・ノクティス』……四詠唱か。高度な魔力コントロールが必要ね」
セルスはその難易度に眉をひそめた。
「四詠唱……それは難しいの?」
ミキの声には不安が混じっていた。
セルスは静かに答えた。「そうね。四詠唱は、クルスとの共鳴時に一度だけ成功したことがあるくらい。それでも、ミキと私で協力すれば可能性はある」
ミキは深呼吸し、覚悟を決めたようにスマホを握りしめた。「やってみる。絶対に成功させるよ……!」
その後、セルスとミキは協力して四詠唱の魔法を練習した。何度も失敗を繰り返しながらも、ミキの魔力コントロールは着実に上達していった。
練習を進める中、ストラテゴウスの画面に突然メッセージが表示された。
「使用者の変更が認められました。使用者に合わせてアップデートします――」
ミキは驚きながら画面を見つめた。「アップデート……?」
セルスが説明する。「ストラテゴウスがあなたに合わせて進化しているのよ。きっと、次の戦いでのサポートをさらに強化してくれるはず」
アップデートが完了すると、ストラテゴウスに新たな機能が追加された。
※ ※ ※
•カメラの画像解析を自動的にアプリに送信する機能
•音声入力による魔法構成の指示機能
•解析結果をアルケウスに自動送信する機能
※ ※ ※
「何これ?」
ミキがそのアップデート内容を困惑しながら読み上げる。
セルスはその機能を確認し、微笑んだ。
「これなら、戦闘中に思考をストラテゴウスに任せられるわね。ミキ、これを活用すればきっと成功するわ」
ミキはその言葉に勇気をもらい、さらに決意を固めた。「うん……セルス、私、頑張るよ!」
そしてついに、苦労の末に「ルクス・ノクティス」の合成が完了した。
「光と闇の力よ、相交わりて闇を打ち払え、光と闇は共に存在し、お互いを調和せよ――『ルクス・ノクティス』!」
ミキが詠唱を読み上げると、画面にその魔法の詳細と成功の通知が表示された。
セルスはその結果を見て、静かに微笑んだ。「これで準備は整ったわ。ミキ、あなたならできる。絶対にクルスを助けられるわ」
ミキもその言葉に力強く頷いた。「セルス。次の戦い、絶対に成功させてクルスを助け出すわ。」
二人の中に新たな希望が生まれ、クルスを救うための戦いが本格的に動き出そうとしていた。




