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異教徒の烙印

イルシアの街は昼下がりの穏やかな光に包まれていたが、その静けさの裏には、揺るぎない信仰が根付いていた。


その信仰こそが、この国を形作る力であり、同時にミリアナが光の封印を維持するために利用していたものだった。


隠れ家でクルス、セルス、エレンの三人が集まり、最後の確認を行っていた。


クルスはスマホを操作しながら、最新のアプリ【ヴィジョンミラーリング】を実演してみせた。

「これが俺たちの切り札だ。このアプリを使えば、俺のスマホ内の映像を異世界に投影できる」


彼の言葉に、セルスとエレンは目を見張った。

「本当にそんなことができるの?」セルスが信じられない様子で尋ねる。


クルスは微笑みながら答えた。

「試してみるよ」


彼は録画しておいたミリアナとの会話映像を選び、ヴィジョンミラーリングを起動した。すると、部屋の中央に透明なスクリーンが現れ、そこに映像が投影された。


「これは……!」エレンが感嘆の声を上げる。


映像には、ミリアナが闇の魔女との関係を匂わせる発言と、信仰の力が民衆の束縛のために利用されているという彼女の言葉がはっきりと映し出されていた。


「これで、民衆に真実を伝えられる」

クルスの言葉には、強い確信が込められていた。


クルスは続けてアークリンクを起動した。このアプリは、共鳴を通じてセルスの声を街全体に響かせることができるものだ。


「まず、セルスが民衆に訴えかける。それが、真実を伝える第一歩になる」

クルスの指示にセルスは頷いた。


セルスは深呼吸をし、決意を込めて語り始めた。

「イルシアの皆さん、どうか私の声を聞いてください。この国を支えている信仰が、真実ではない可能性があるのです!」


決意を込めてセルスは声にする。

「私はエルスフィア王国の第一王女、セルスト・エルスフィア。闇の魔女と戦う光の民の末裔です。私の国は先日、闇の魔女に支配されたアゼルド帝国と戦いました。この西の大陸にもそしてここ聖教国にも魔女の脅威が迫っているのです」


その声は、アークリンクを通じて全国民に直接届いた。頭の中で響く聞いた事のない声に驚いた民衆たちが足を止め、耳を傾け始める。


続けて、クルスはヴィジョンミラーリングを使い、広場の中心に巨大なスクリーンを投影した。そこには、ミリアナが信仰の嘘について語る映像が映し出される。


「この映像をご覧ください」

セルスの言葉と同時に、ミリアナの映像と声が街中に呼び出した大型ビジョンに写し出される。


『恐ろしい存在……?彼女は、あなたのような無知な者が理解できる存在ではありません』


『闇の魔女の力は、この世界を形作るための礎となるもの。それを恐れ、否定することこそ愚かしい』


「では、あなたは闇の魔女の力を利用していると認めるのですか?」


『あなたが何を見抜いても、この国の信仰が揺らぐことはありません。民衆にとって、信仰こそが生きる希望なのです。それが例え偽りの信仰でも』


映像の中のミリアナの言葉が、民衆たちの心に直接訴えかけた。


「嘘だ……?」

「そんな……聖女様が嘘をついていたというのか……?」


民衆の中からざわめきが広がり始めた。信仰に依存していた人々にとって、それは簡単に受け入れられるものではなかった。


セルスは力強く前に進み、民衆に向けて語りかけた。

「私たちは皆さんに信仰を捨てろと言っているのではありません。ただ、その信仰が真実に基づいているのか、今一度考えてほしいのです!」


彼女の声には力があり、その言葉は民衆の心に少しずつ届いていた。


「光の封印は、皆さんの信仰の力によって維持されています。ですが、それは本当にこの国の未来を守るためのものなのでしょうか?それとも、誰かの利益のために利用されているのでしょうか?」


民衆の中には、彼女の言葉に心を動かされる者もいれば、依然として疑念を抱く者もいた。


「彼女の言っていることは本当なのか?」

「でも、聖女様が嘘をつくはずがない!」

「もし本当に信仰が嘘だったら、私たちは何を信じればいいんだ……?」


人々の間で意見が割れ、混乱が広がり始めた。


エレンが低い声でセルスに言った。

「揺らいではいるが、まだ決定的ではない。最後の一押しが必要だ」


クルスは共鳴を通じて指示を送る。

「セルス、ここで光の力の重要性を訴えてくれ。信仰ではなく、真実がこの国を救うと伝えるんだ。」


セルスは深く息を吸い込み、再び民衆に語りかけた。

「この国を救うのは、嘘の信仰ではありません。本当の力――光の力が必要なのです。長くこの世界には光の属性が存在していません。それは聖女ミリアナ…いや黄昏の契約者のミリアナが嘘の信仰心を操り封印しているからなのです。私たちはその力を解放するために戦っています。どうか、私たちを信じてください!」


その言葉に、一部の民衆が応え始めた。

「彼女の言葉に嘘はない……。今まで信じてきたものが間違っていたとしても、新しい未来を信じてみるべきだ。」

「私も光の力を信じる……!」


その瞬間、広場の端から荘厳な声が響き渡った。

「皆さん、惑わされてはいけません!」


その声に民衆が振り返ると、聖女ミリアナが一団の聖騎士を従えて現れた。彼女は冷静な表情で民衆を見渡し、広場の中央に立った。


「この者たちは異教徒です。その言葉は魔女の力によるもの!皆さんの信仰を揺るがすための嘘に過ぎません!」


ミリアナの言葉は、民衆の心を強く打った。彼女の荘厳な姿と、長年にわたる信仰の象徴としての地位が、その言葉に説得力を与えていた。


「皆さん、思い出してください。この国を支えてきたのは信仰の力です。魔女の力に惑わされることなく、この国を守り抜きましょう!」


ミリアナの声に、民衆は次第に肯定の声を上げ始めた。

「聖女様の言葉は正しい!」

「私たちが信じるべきは聖女様だ!」


さらに、ミリアナは高らかに宣言した。

「この者たち――セルスとエレン――を捕らえなさい!彼らはこの国を壊そうとする異教徒です!」


聖騎士団が一斉に広場を囲み、民衆に手配書を配り始めた。そこにはセルスとエレンの姿が描かれ、「異教徒」と大きく書かれていた。


セルスはその光景を見つめ、悔しそうに唇を噛み締めた。

「ミリアナ……あなたは本当に民衆を支配するつもりなの?」


エレンが剣を握りしめながら低く呟いた。

「まずいな。この状況では行動を起こせない」


クルスがセルスとエレンに伝える。

「こうなったら仕方ない。一旦撤退しよう」


隠れ家に戻ったクルスは、セルスとエレンは息を切らしながら部屋に駆け込むと、セルスは作戦が失敗した事を謝る。

「クルス、貴方の作戦通りに行かなかった…私の力不足が原因だわ…」


クルスは深く息を吐き、冷静な声で答えた。

「ん?セルスは上手くやってくれたぞ。最初からミリアナが出てくることは、ストラテゴウスの予測で分かっていた。でも、俺はあえて君たちに伝えなかったんだ」


セルスが驚いたように問い返す。

「どうして?それを知っていれば、もっと別の対応ができたかもしれないのに!」


クルスは真っ直ぐに見つめて答えた。

「セルスの演説を『演技』にしたくなかったんだ。あの場で君が本当に民衆に訴えた言葉が、心からのものだと伝わるようにするためには、計画を知らない方が良かった。演技ではミリアナに見破られるからな。」


その言葉に、セルスは一瞬言葉を失った。そして、深い息を吐きながら椅子に腰を下ろした。

「あなたって、本当に計算高いのね……」


エレンも剣を置き、苦笑いを浮かべた。

「だが、その計算がなければ、私たちはここまで来ることもできなかっただろうな」


クルスはスマホを操作しながら、冷静に次の一手を考えていた。

「民衆の心は揺れている。この状況でミリアナが強硬策に出たこと自体が、彼女の焦りを物語っている」


セルスはその言葉に頷き、決意を込めて言った。

「次は私たちが反撃する番ね。信仰の嘘を完全に暴いて、この国を真実の光で照らすために」


クルスは彼女の決意を確認し、微笑みながら答えた。

「そのための準備はもう整っている。次は、ミリアナの本当の姿を民衆に見せる時だ」


クルスはニヤリと笑いながら言う。

「さあ、いよいよ剣神エレンの出番だ」

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