新たなる連絡手段
クルスは、リアとさらにスムーズに連絡を取る手段が必要だと考え、新たなメッセージアプリの開発に取り組んでいた。
電話だけでは応答が難しい状況もあるため、彼は何とか文字でメッセージを送れる方法を模索し、自分のスマートフォンにメッセージアプリを組み込むことに成功した。
「さて、これでうまくいくといいんだけど……」
クルスは「連絡くれ クルス」とだけ書かれたテストメッセージを送信し、しばらく反応を待つ。緊張と期待の入り混じる感覚の中でスマホを見つめていると、数分後、リアからの連絡が入った。
「クルス、今、不思議なメッセージが見えたわ!」
その声を聞いた瞬間、クルスは喜びが込み上げてきた。
「どんなふうに見えたか教えてくれる?」
リアは少し戸惑いながらも、興奮した様子で説明してくれた。
「突然、空中に透けている窓のようなものが浮かび上がって、そこに『クルス』って名前が表示されていたの。それを触ってみたら、クルスからの手紙が読めたわ」
「本当に?それなら、今度はリアがメッセージを送れるか試してみて。例えば『受け取ったよ、クルス』って送ってくれる?」
リアは心を集中させ、クルスに向けてそのままメッセージを送ってみた。すると、クルスのスマートフォンに「受け取ったよ、クルス」と表示され、彼は一瞬画面を見つめてからガッツポーズをした。
「やった……!これでメッセージのやりとりができる!」
リアの声にもほっとした気持ちがにじみ出ていた。「すごいわクルス。これで急なことがあっても、すぐに連絡できるわ」
「そうだね。これからはメッセージで気軽にやりとりできるね。もし僕が連絡できないときでもメッセージを送っておいてくれると助かるよ」
リアも嬉しそうに「ありがとう、クルス」と応じ、二人は電話を切った。
それからクルスの日常には、少しだけ新しい習慣が増えた。
朝起きてまず最初にリアへ短いメッセージを送ること、そして昼休みには彼女からの返信がないか確認することが、彼の日課になりつつあった。
昼休み、一緒にミキと昼食をとっている最中、クルスは何気なくスマホを手に取り、リアからメッセージが来ていないかチェックした。その様子を見て、ミキが話しかけてくる。
「何さっきからスマホ気にしてるの? まさか…好きな子ができたとか?」
ミキは少しムッとしてクルスに聞いてきた。
「いや、そういうんじゃなくてさ……まあ、ちょっと特別な相手っていうか」
クルスが曖昧に返すと、ミキも興奮して少し前のめりになった。「誰? 誰なの? 教えなさい! そんな特別な相手って一体…」
リアのことを思い浮かべたクルスは一瞬答えかけたが、異世界のエルフと連絡を取っているなど話したら誰も信じないだろうと、口をつぐんだ。
「友達だよ、ほら、気にするなって」
昼休みが終わり、午後の授業が始まると、ふとクルスの意識はリアのことに戻っていった。
彼女が一人でルーセリアを旅していることを思うと、心の中に小さな不安がわきあがってくる。
最初はゲームをプレイする気分だった。でも今ではリアと繋がる時間…それは紛れもない現実だった。
自分がリアの支えになれていることが彼にとっても励みとなり、放課後には彼女に「今日の旅はどうだった?」とメッセージを送った。
夕食後、スマホに振動が伝わり、リアから「クルス、今日は問題なかったわ。あなたのおかげで道中もスムーズに進めているわ」と返信が届くと、クルスは心から安心し、ほっと微笑んだ。
クルスの日常に、リアとのつながりが少しずつ彩りを添えていった。