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剣神エレン

闇夜に覆われた戦場に、次々に襲いかかる魔女の軍勢の前にエルスフィア軍の防衛線は崩れかけていた。四聖剣を中心とした守備陣形は、闇の軍勢の圧倒的な物量と猛攻により、徐々に押し戻されていた。疲労が兵士たちの顔に刻まれる中、誰もが心の中で不安を募らせていた。


「全軍、持ち場を維持しろ!後退は許されない!」四聖剣の一人、ガレン・フォルティスが燃え盛る剣インフェルシオンを振るい、闇の魔物たちを焼き尽くしながら叫ぶ。しかし、その声にもわずかな焦りが滲んでいた。


翼を持つ飛行型の魔物が矢のように飛来する中、リオン・グレイハルトが雷霆剣《アルク=ヴォルティガー》を振るい、雷撃の閃光で次々と魔物を撃ち落としていく。「まだだ、まだ持ちこたえられる!」リオンの稲妻のような動きが中央の守備を支えていた。


一方、右翼ではセリア・アイゼンが氷煌剣グレイシャリアを地面に突き刺し、巨大な氷壁を作り出して魔物の進軍を一時的に食い止めていた。「冷静に、持ち場を守るのよ!」その声には毅然とした力強さがあったが、彼女の額にも汗が滲んでいた。


後方では僧侶騎士カリス・エルヴァンが聖光剣《ルクス=アストラ》を掲げ、浄化の輝きで瘴気を払いつつ、傷ついた兵士たちを癒していた。「まだだ、耐えろ!私が癒してみせる!」その言葉に兵士たちはわずかに勇気を取り戻すものの、闇の軍勢の勢いは止まらない。


戦線は徐々に後退しつつあり、四聖剣の奮闘も次第に限界に近づきつつあった。その時、ただ一人前線に立ち続けていた存在がいた。


「全軍後退せよ。全ての敵は私が引き受ける」


剣神エレン。彼女の剣《アーク=デイノス》は、戦場の光そのものだった。エレンが一振りするたび、剣の輝きが闇を切り裂き、迫りくる魔物たちを次々と浄化していく。


彼女の剣は「全ての一振りが奥義」と称されるほどの技量を誇り、その間合い、剣速、そして防御技術はまさに剣の極地に達している。エレンの剣は無限に進化する剣――過去の戦いの記憶を呼び起こし、さらに新たな奥義をその場で閃きながら敵を圧倒する。


「この剣に恐れるものはない!」


エレンの声が響き渡ると、兵士たちはその言葉に奮い立ち、わずかに士気を取り戻す。しかし、その背後には、撤退する四聖剣と兵士たちを守るためのエレンの覚悟があった。


エレンの剣《アーク=デイノス》は、敵の動きに応じて形状を変化させ、光のような速さと鋭さで戦場を切り裂く。エレンが剣を構えた瞬間、全ての魔物が一瞬怯むかのように動きを止めた。


「来るがいい……すべてを断ち切ってやる!」


魔物の大軍がエレンに殺到した。だが、その猛攻も彼女の剣技の前には意味を成さない。

「この状況は過去にもあった。」

過去の剣の記憶が呼び起こされ一振りで十数体の魔物が斬り倒され、瘴気が浄化される。一瞬の隙もなく、彼女は新たな剣技を閃き、さらに強大な敵へと立ち向かう。


エレンの動きは常人の目には捉えられないほどの速さだった。次々と押し寄せる魔物たちを迎え撃ちながら、剣技は戦場に応じて進化し続けていく。巨大な四足獣型の魔物が牙を剥いて襲いかかると、エレンは即座に剣のリーチを伸ばし、敵を一閃で斬り伏せた。


「神速剣舞!」


エレンが叫ぶと、剣が光の残像を生み出し、無数の斬撃が同時に放たれた。周囲を取り囲む敵が瞬く間に切り裂かれ、戦場に一瞬の静寂が訪れる。


「ふっ私はまた強くなった」


しかし、その間にも四聖剣の奮闘によって守られていた兵士たちは、徐々に後退を続けていた。エレンはそれを理解しながら、敵の猛攻を食い止めるためにただ一人、最前線に立ち続ける。


「まだだ……もう少し時間を稼ぐ必要がある」


エレンの剣が再び閃き、敵を蹴散らし続ける。その姿は、味方にとってはまさに「剣神」の名に相応しい存在だった。


遠く後方では、ローグが戦場の光景を冷静に見つめていた。その視線はエレンに向けられ、その冷たい笑みが闇の中で浮かび上がっている。


「エレンの無限に進化する剣か……確かに驚異的だ。だが、あれに対抗するには一体の強大な魔物をぶつけるのは愚策だ。剣神の剣は、戦えば戦うほど強さを増していく。それを活かさせるわけにはいかない。敵に塩を送るだけだ。」


ローグは手を掲げ、さらに闇の魔力を解き放った。「それならば、無限に魔物を召喚し続けてやる。果てしない闇の軍勢で、やつの体力をじわじわと奪い取るのみ……」


彼は冷たく呟いた。「エレンよ……いつまで持つかな?」


ローグの指示によって召喚された魔物たちは、次々と戦場に湧き出し、エレンを中心とする防衛線を包囲していく。


「ここで剣神を葬り去る。これ以上、光が我らの闇を邪魔することは許さない」


闇が戦場を覆う中、エレンの孤高なる奮闘は続いていた。そして、その剣の輝きは、闇に包まれながらもなお、仲間たちの希望の灯火として燃え続けていた。


「剣神エレン……貴様一人で我々を全て倒そうと言うのか?そんな事が出来るとでも?」ローグは闇の軍勢の後方から、エレンを見据えながら不気味に微笑む。


その言葉通り、ローグの策はじわじわとエレンを追い詰めるものだった。闇の軍勢は広範囲に展開し、あえて均等に戦力を散らすことで、エレン一人では全てに対処できない状況を作り出していた。


エレンは剣を握り直し、冷静に戦況を分析する。


「なるほど、広範囲に展開して、こちらの対応力を試すつもりか……ならば、それに応じた力を見せてやろう」


エレンの剣が微かに光を放ち始めた。それはまるで剣そのものが戦況に応じて新たな力を得ていくようだった。エレンは剣を高く掲げ、気合と共に新たな奥義を発動する。


「《光焔天翔斬》――!」


剣から放たれる光の斬撃が広がり、戦場全体を覆うようにして敵を切り裂いていく。その一振り一振りが、まさに圧倒的な威力を誇り、闇の軍勢を一掃していった。


敵の陣形は一時的に崩れ、味方の兵士たちの士気も高まった。しかし、それでも闇の軍勢は次々と現れる。エレンの剣技がいかに強力であろうとも、その力を振るうたびに彼女の体力が削られていくのが明らかだった。


「素晴らしい剣技だ。だが、貴様がいるのに何も対処していないとでも思ったか?」


ローグが冷笑を浮かべ、静かに闇の力を解放する。周囲の瘴気が濃くなり、戦場に異様な気配が満ちていく。エレンはその気配に気付き、鋭い眼差しを向けた。


「これは……ただの魔物の瘴気じゃない。闇の魔女の力か?」


「その通りだ、剣神よ」ローグは手を掲げ、さらに強大な闇の力を引き出す。「貴様の剣は無限に進化する。ならば、この魔女の刻印でその因果を逆転させてやる」


エレンは一瞬の間に戦況を見極め、剣を構え直した。「何をするつもりだ?」


ローグは手のひらに瘴気を集め、それを空中に描くようにして紋章を刻んでいく。その紋章は闇の魔女の象徴であり、戦場全体に圧倒的な威圧感を放ち始めた。


「この刻印は因果を逆転させる力を持つ……お前の進化した力を、退化させる呪いだ」


エレンの剣が突然、重く感じられた。剣に宿る光が弱まり、これまで進化し続けてきた剣技の数々が次々と失われていく。


「剣が……退化していく?」エレンは信じられない思いで剣を握り締めた。


「その通りだ。貴様の無限の進化など、この刻印の前では無力だ」


ローグはさらに刻印を強化し、エレンの剣から次々と力を奪っていく。これまで繰り出してきた技が一つ一つ失われ、彼女の剣技は次第に基本的な斬撃にまで落ちていった。


それでもエレンは、剣を構え直して敵に向き直る。


「私はこれまで無限に進化し続けた。その力を全て失うその瞬間まで、私は戦い続ける!」


彼女は限界を超えた肉体で剣を振るい、目の前の敵を斬り伏せていく。失われた技を補うように、一振り一振りに全力を込める。その姿はまるで最後の輝きを放つ星のようだった。


「エレン様!」四聖剣のカリスが後方から叫ぶ。「これ以上は無理です!後退を!」


「まだだ!」エレンは叫びながら前進を続けた。「ここで止まれば、エルスフィアは守れない!」


しかし、ついに最後の剣技が失われ、エレンの剣はただの刃物のように輝きを失った。それでも彼女は剣を握り締め、敵に向かう姿勢を崩さない。


ローグはその姿を見下ろし、冷たい声で言った。「剣神エレン……お前の進化はここで終わりだ」


戦場にさらなる闇が広がり、魔女の刻印の呪いが完全にエレンを蝕む中、エルスフィア軍の運命は風前の灯火のように揺らいでいた。しかし、エレンの目には未だ消えない炎が灯っている。


「この身が尽きるその時まで……私は戦い続ける!」


彼女のその言葉が、戦場に響き渡った。その先に待つ希望か、さらなる絶望か――物語は新たな局面を迎えようとしていた。

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