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ミルニアの脅威

ミルニア王国の王宮、その美しい窓辺から、王レオフォルドは遠くを見つめ、深く眉を寄せていた。


エルスフィア王国から、アゼルド帝国がミルニアに侵攻するとの知らせが届いたのだ。平穏な暮らしを送る国民と豊かな農地が侵略されるのかと考えると、王の胸は痛んだ。


レオフォルド王はすぐに重臣たちを集め、この危機について協議を始めた。争いを避け、平和を守ることを信念としてきた王にとって、この侵攻は国家存続に関わる重大な脅威であった。


「我がミルニアの中立と平和への誇りが試される時だ。だが、侵略者に屈することは断じてあり得ぬ」


王の言葉に、側近たちは不安そうに顔を見合わせた。その中で、年配の老臣が進言する。


「陛下、エルスフィア王国との同盟に基づき、すでに援軍が派遣されているとのことですが、距離を考えると到着にはあと二日ほどかかります。それまでの間、我ら自身で耐えなければなりません」


重苦しい沈黙が会議室に漂う中、老臣はさらに進言した。


「そこで、国内にいる冒険者たちに協力を要請し、国防の支援に当たってもらうのはどうでしょう。彼らの戦力と自由な精神があれば、エルスフィア王国の援軍が到着するまでの間、敵の侵攻を食い止められるかもしれません。加えて、我が軍精鋭部隊ヴァルハルト部隊と協力すれば、十分に戦力を補えるでしょう」


冒険者を戦力として招く案に王は思案する。確かにミルニアには多くの冒険者が集まっており、国民からも支持されている。しかし、彼らを正式な戦力として招集するのは初めてのことだった。慎重に思案した末、王は静かにうなずき、決意を固める。


「…冒険者たちにこの国の防衛を託そう。今や我々の誇りである平和を守るため、戦いを避けては通れぬ時が来た。ミルニア王国の誇りを賭け、我が国を守り抜くのだ」


そう言うと、王は重々しい声で命じた。「ヴァルハルト部隊の隊長レオンをここへ」


側近たちは足早に広間を後にした。王が「ヴァルハルト」の名を口にするのは稀であり、その名を聞くだけで場の空気が引き締まる。ヴァルハルト部隊が出動する時、それはすなわち、国の存亡をかけた重大な局面であることを意味していた。


静寂が続いた後、廊下に鋼のような足音が響き渡り、広間の扉が開いた。現れたのは、「軍神」と称されるレオン・ヴァルハルトと彼の精鋭部隊だった。彼らの顔には一切の恐れもなく、鋭い眼差しが王を見据えている。


「陛下、ヴァルハルト部隊、ただ今参上いたしました」


レオンが厳かにひざまずき、彼に続いて部隊員たちも静かに頭を垂れる。その忠義の姿に、王は深い信頼を感じた。


「よく来てくれた、レオン。今こそ、我が国のためにお前たちの力が必要だ」


王の声には重みがあった。「アゼルド帝国が我が盟邦であるレイヴァンとノベルバを制圧した。そして次に狙うは、我がミルニアだ。彼らは我が平和な大地と草原を侵し、国民を危険にさらそうとしている」


レオンの瞳に冷たい光が宿り、周りの部隊員たちも静かな闘志を燃やした。


「レオン、エルスフィア王国の援軍が到着するまで、我らが持ちこたえねばならない。お前たちヴァルハルト部隊と冒険者たちの協力で、ミルニアを守り抜くのだ」


レオンは深く頭を下げ、揺るぎない決意を込めた声で応じた。


「かしこまりました、陛下。我がヴァルハルト部隊は、命を賭してミルニアを守ります。相手が誰であろうと関係ありません。アゼルド帝国にこの地を穢させはしません」


王は深くうなずき、レオンに視線を送った。


「レオン、我が信頼を裏切らぬお前に、この国の未来を託す。我らの民を守り、平和を取り戻してくれ」


レオンは再び深く礼をし、部隊員たちに向き直ると、鋭く指示を出した。


「ヴァルハルト部隊、出陣だ。我らが陛下の御心を守り、この大地を護るために、全力を尽くすぞ」


部隊員たちは力強く「承知いたしました」と答え、その一糸乱れぬ気迫が広間を満たした。


同時に、王はミルニア中にいる冒険者たちにも協力の呼びかけを命じ、国の防衛体制を強化するよう命じた。


その呼びかけを聞き、草原地帯から多くの冒険者たちが王城に集まってきた。普段は自由に冒険を楽しむ彼らも、今回は大陸の平和とミルニアの地を守るために一丸となった。


中でも、Sランク冒険者たちの存在感は圧倒的だった。


エリス・フォージャー(“焔の精霊使い”)


赤髪と鋭い瞳を持ち、強力な火の精霊と契約しているエリス。彼女の力は瞬く間に戦場を炎の海に変え、一度はアゼルド帝国の部隊をたった一人で撃退した。その異名から「焔の精霊使い」として冒険者たちに広く知られている。彼女はミルニアの平和のために立ち上がり、「守るべきものがあるからこそ、人は強くなれる」と静かに語った。


ガイア・バルザック(“不動の盾”)


屈強な体格に重厚な鎧を身にまとい、巨大な盾を手にするガイア。彼はその防御力で仲間を守り抜き、「不動の盾」と称されている。魔法攻撃さえも跳ね返す強靭さから、冒険者仲間からの信頼も厚い。今回の呼びかけに応じ、「平和な土地が荒らされるのは許せない」と迷いなく戦いに挑む決意を示した。


ルシル・フェンリス(“影の風刃”)


黒いクロークをまとい、影のように敵に忍び寄る隠密の達人ルシル。その素早い身のこなしで「影の風刃」と呼ばれ、数々の任務を完遂してきた。彼女もまた、ミルニアの平和な土地を守るために立ち上がり、「私は速やかに、敵を討つためにここに来た」と静かに誓いを立てた。


エリスの圧倒的な火力、ガイアの揺るがぬ守護、そしてルシルの迅速で鋭利な攻撃――Sランクの冒険者たちがミルニア王国のために戦場に立つ日が、ついに迫っていた。

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