新天地への旅立ち
リアは静かな朝の空気を胸いっぱいに吸い込み、神聖なひとときを感じていた。
闇の魔女が復活してから、朝に希望を見出すことなどなかったが、今日は違う。エルフの里を離れ、新しい拠点を目指して進む日が、ついにやって来たのだ。
周囲には、老若男女のエルフたちが集まり、祈りを捧げている。彼らはこの地に根ざして何千年も暮らしてきたため、故郷を離れることには一抹の不安があった。
年老いたエルフたちにとって、ここを離れることは、長い歴史を断ち切るような感覚だったかもしれない。しかし、それでも彼らは、リアの決断を信じて集まっていた。その光景を目にし、リアは責任の重さを再認識した。
「リア、準備は整った」そばに立っていた戦士エリオが声をかけてくれた。エリオは東の大陸に剣聖として名を馳せる有名な剣士だった。リアにとってもエリオは頼りになる仲間であり、共に里を守ってきた存在だ。リアは彼に微笑みかけ、静かにうなずいた。
「ええ、エリオ。出発しましょう」
リアはアキラに連絡を入れ、いよいよエルフの里を離れて新たな拠点へ向かうことを告げた。アキラからの返事には緊張と決意が込められていた。
「リア、大丈夫か?事前に準備しておいた食料や水、テントのリストを作成したから、必要な時にすぐ送るよ。無事に拠点に到達できるよう、俺も全力でサポートする」
その言葉に、リアは深い感謝の気持ちが湧き上がった。彼のサポートがなければ、この道のりはさらに厳しいものになっただろう。
エルフたちはそれぞれの思いを胸に、西の山脈へと続く長い旅路に足を踏み出した。数千年の歴史を持つエルフの里を後にすることは容易な決断ではなかった。
とくに年長者たちはこの地を離れることを頑なに拒んでいたが、リアは彼ら一人一人に危険性を説明し、説得を重ねた末に今回の拠点移動を実現させたのだ。
「私がこの移動を提案したからには、一人も欠けずに新天地へと導かなければ」リアは強い責任感を抱いていた。
彼女にとって、これはただの避難ではなく、すべてを背負った旅路だった。かつてクルスと共に魔女の瘴気と戦い、その力を一度封じた経験があるからこそ、再び自らの手で封印しようと心に誓っていたのだ。
アキラは移動計画を事前に立ててくれていた。彼の使う「バトルビュー」を駆使し、道中の地形や休息ポイント、魔物の出没が少ないルートを丹念に選定していたおかげで、初日の移動は予想以上に順調に進んだ。
夜になると、アキラが転送してくれたテントが次々に設営され、エルフたちはテントの中で体を休めることができた。また、彼が用意してくれた水や食料も分配され、エルフたちは異世界の食事に驚きつつも、恐る恐る口に運んでいく。
「これは……美味しい!」
暖かいスープが体に染み込み、みんなの表情がほころんだ。特に、簡単に温かい食事が取れるカップラーメンは大好評だった。異世界の味が彼らの心を温め、この過酷な旅路に一時の安らぎをもたらしてくれた。
翌朝、二日目が始まり、しばらくは順調に進んでいた。しかし、昼過ぎに差し掛かる頃、周囲の空気が次第に不穏になってきた。木々の間から聞こえる風の音や、重く湿った気配が漂っている。
「リア、森の奥から何かの気配がする」
エリオが低く告げ、周囲の戦士たちも警戒の態勢に入った。リアはすぐさまアキラに連絡を取り、バトルビューでの状況確認を依頼した。
「アキラ、近くに魔物がいるみたい。確認できる?」
アキラはバトルビューを起動し、数秒後にリアの周囲をスキャンした。「リア、3時の方向に100メートル先に魔物が2体いる。他のエルフたちと連携して慎重に進んで」
リアは仲間たちに指示を出し、まずは2時の方向にいる魔物たちに近づくことにした。エルフの戦士たちが円を描くように周囲を守り、魔物を取り囲んでいく。
リアは剣を構え、アキラのサポートに頼りながら確実に戦場の状況を把握する。最初の2体の魔物を迅速に仕留め、周囲のエルフたちも見事な連携で彼女に続いた。
だが、さらに進むと、予想を超える困難が彼らを待っていた。




