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闇の魔女の声

ディブロスとの激戦を乗り越えて数日が経過していた。リアとクルスは、戦いの後の緊張感から解放され、普段のような穏やかな会話を楽しんでいた。


お互いの心には、つかの間の平和が広がっていた。


「クルス、あなたがいてくれて、本当に心強かったわ。ディブロスを倒せたのは、あなたの助けがあったからこそよ」

リアは照れくさそうに微笑みながら言った。彼女の声は、戦いの後の安心感に満ちていた。


「いやいや、前も言ったけど俺なんてスマホ越しに応援してただけだって。」

クルスも笑い返しながら答えた。その声に、リアの胸がじんわりと温かくなる。


「こうして話していると、まるであなたの世界で普通に会話しているみたいね」

リアがそう言うと、クルスは少し視線を落として頷いた。


「ああ、俺も不思議な気分だよ。現実の世界でこんな風に話せたら、どんなにいいかって思うことがある。でも、今はこうして声だけでも繋がれてるから、ありがたいって思う」


リアは彼の言葉に頷きながらも、心のどこかでざわめくものを感じていた。直接会いたい――それはここ数日、リアが自覚し始めた切実な願いだった。しかし、それが叶わない現実が彼女を苛立たせていた。


「クルス……やっぱり私、いつか直接会いたいわ。あなたに感謝を伝えたいし、ちゃんと顔を見て話したいの。ここ数日そんな事ばっかり考えてた」


リアの言葉に、クルスは一瞬驚いたように息を呑んだ。しかし、その目には同じような感情が宿っていた。


「リア……俺もだよ。君に会いたい。この壁をいつか乗り越える方法を見つけたいと思ってる」


二人はしばらく黙ったまま、お互いの声だけを感じていた。その静けさが、直接会えないもどかしさを一層際立たせていた。


「クルス、もっとあなたのことを知りたいわ。あなたがどんな人か、どんな世界で暮らしているのか、もっと話してほしいの」


「俺のことか……まあ、そんなに面白い話じゃないけどね」とクルスは少し照れながらも微笑んだ。


リアは興味津々な様子で続けた。「どんな生活をしているの?普段、何を考えているの?」


「そうだな……俺は普通の高校生だよ。朝起きて学校に行って、授業を受けて、友達と話したりして。あとは、家でスマホいじったり、ゲームしたり……」


リアはクスッと笑った。「ゲームって、戦いの訓練みたいなものかしら?」


「いやいや、全然違うよ。ただの遊びみたいなもんさ。でもね、謎解きが多いゲームが好きなんだ。昔から、小説やゲームの謎を解くのが好きでね。そういうものを通じて、何かを解決していく感覚が面白いんだ」


リアは少し驚いた表情を見せた。

「問題を解決することが好きなのね。なんだかクルス、あなたらしいわ」


クルスは少し照れたように肩をすくめた。「まあね。俺の世界にもいろいろな問題とか課題があるんだよ。経済格差とか、国同士の争いとか、大きな問題が山積みでさ。いつもニュースでそれを見てると、どうにかならないのかなって考えたりするんだ」


リアは真剣な眼差しで彼を見つめた。

「それで、あなたはそんな大きな問題も解決したいと思っているの?」


「うん、漠然とだけどね。今はただの高校生で、そんなことをする力も知識もないけど……でも、いつか、もっと大きなことに挑戦してみたいと思ってる。俺が好きな謎解きみたいに、問題を一つずつ解いていくことができれば、少しは世界を良くできるんじゃないかって」


その言葉に、リアの胸がじんと熱くなった。クルスの持つ優しさと情熱が、彼女の心に深く響いた。


「クルス……あなたの世界は、とても複雑な場所なのね。そんな世界で、クルスが問題解決に興味を持つなんて、すごいことだわ」


「いや、まだ何もしてないし、偉そうなことを言えるわけじゃないけどね。でも、リアと話してると、君の世界の問題にも興味が湧いてくるんだ。君を助けたいって思うし、君の世界をもっと知りたいって思うよ」


リアはその言葉に感動し、ふっと微笑んだ。

「ありがとう、クルス。あなたと話していると、私も勇気が湧いてくるわ」


そんな中、クルスが闇の魔女についての情報を探していると、異世界ブラウザで奇妙なリンクを見つけた。それには「秘されし真実」とだけ書かれていた。


「なんだこれ、怪しいな……でも、何か手がかりがあるかもしれない」


リアが不安げに声を発する。「クルス、それは危険かもしれないわ。下手に触れるべきじゃないと思う」


しかし、好奇心と焦燥感が勝ったクルスはリンクをタップした。その瞬間、スマホが闇に覆われ、画面が異様な低い音を発し始めた。


「な、なんだこれ……?」


クルスが動揺する中、耳元に冷たく甘美な囁きが響いた。


「お前が共鳴者か……」


その声は底なしの闇から這い上がってくるようで、クルスの全身を凍らせた。リアもその異常な気配を感じ取り、声を荒げた。


「クルス、今すぐその画面を閉じて!早く!」


しかし、リアの叫びもむなしく、クルスの体はその場で固まってしまった。画面に浮かび上がる不吉な古代文字が、闇の魔女の存在を示していた。


「伝承通りだな。共鳴者は好奇心が強い。その好奇心が、私の復活を導くとはな」


その言葉と共に、クルスの画面から黒い霧が噴き出し、部屋全体を覆い始めた。そしてその瞬間、リアのいるルーセリアでも異変が起きた。


リアは突然、足元の大地が震え始めたのを感じた。そして空は瞬く間に真っ黒な雲に覆われ、不気味な瘴気が辺りを包み始めた。


「これは……一体……?」


リアの胸に冷たい恐怖が広がる。闇の瘴気が空から降り注ぎ、街や森が闇に染まっていく。遠くから悲鳴や叫び声が聞こえた。


それは、リアが今まで経験したどんな危機とも違う、絶望そのものだった。


「クルス……何が起きているの?」


リアは震える手で剣を握りしめ、闇に覆われる街を見つめた。そして共鳴を通じて彼の声を聞こうとしたが、繋がりが不安定になっていた。


「クルス!答えて、クルス!」


だが、クルスの声は届かない。それどころか、共鳴越しに漏れ聞こえてくるのは、闇の魔女の冷たい囁きだった。


「私の復活は成し遂げられた。共鳴者よ、お前にはもう用はない」


その声にリアは激しい怒りと恐怖を覚えた。しかし、次の瞬間、共鳴が途切れ、クルスの声が完全に消えてしまった。


「クルス……!嘘でしょ、こんな形で……!」


リアの目には涙が溢れ、剣を握る手が震えた。遠くに広がる闇が、彼女の心に重くのしかかる。


一方、クルスもまた、リアとの繋がりが完全に断たれたことを感じ、胸が張り裂けるような痛みを覚えていた。


「リア……リア……!」


必死に叫ぶが、もうリアの声は届かない。スマホは黒くひび割れ、暗転した画面に自分の顔が映り込むだけだった。


リアとクルスは、会えないどころか繋がりすら断たれた状況に置かれ、それぞれが深い喪失感と絶望を抱えたまま、暗い未来に向き合わざるを得なかった。


それでも、二人の心の中には、また再び繋がることを願う強い思いが燃え続けていた。

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