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彼らの登らない古塔生活  作者: うめつきおちゃ
そびえる塔、群がる人たち
8/50

砂漠と川原

宿を出て少し歩くと旧市街の大通りに出る。


大通りには人がたくさんいるがそのすべての人が塔のある方向へ移動している。

あの塔がこの街の全ての中心であるのがよくわかる光景なんだろう。


食料も生活家財も、衣服も武器も防具も嗜好品も、その全ての材料が古塔内にしか生息しないモンスターと呼ばれる生物由来らしい。


ここは砂漠のど真ん中だ。


にも関わらず魔法石の力で小さいが川が流れている。

砂漠らしくない植物も咲いている。

植えてある大きな木が日陰を作る。


ここに来るまでは塔以外何もなかったのに。



「水の出る魔法石が見つかる前はみんな古塔の中で生活してたらしいよ。」


クラマーがそう言うとノエルが「考えられないな。寝る時とかどうしてたんだろうね。と返す。


(塔の中か、確かに何もない砂漠のここよりは暮らしやすそうだな。)

まだ塔の中を知らない俺はそうおもった。


「そら辺り一面のモンスターを全滅さしてから寝るんだろ!」とノツダ。


「いや、交代で寝て起きてるメンツが見張りをするんだろう。」


と俺が言うとノツダが不満げな雰囲気を出す。


(モンスター、塔の中を徘徊してる生物の総称だ。いや総称らしい。まだ見たことないからわからない。)


「多分、そうだろうね。」


とクラマーが頷く。

それはあまり眠れなそうだな。なんて思っていると旧市街を抜けて広場についた。


俺の武器や防具も買い揃える金はパーティの予算から出してくれるらしい。


無一文の自分にはありがたい提案だったので喜んで受け入れる。


(大きな借りだ、結果で返すしかないな。)



「全員で行ってもなんだし、僕とアヤトの2人で行こうか。」


クラマーの提案を聞くや否やノツダはどっかに走って行った。

本当に本当に落ち着きのないヤツだ。


ノエルとシイナは服を見に行くと言っていた。


俺はクラマーについて歩き初心者用の装備を安く揃えられるという店に向かう。


どっからどこまでがこの店の商品なのかわからない乱雑さだ。


前もって話していた皮の靴と手袋を買った。

武器は色々試して悩んだがどれもしっくりこなかったので取り敢えずモンスターの解体にも使える安い中型のナイフを買う事にした。


準備を終えて塔の入り口に向かう途中で謎の食べ物を食べてるノツダと合流し3人で歩いているとローガンが声をかけてきた。


「よう!ルーキーども調子はどーだ!!?」



朝とは思えない大声で声をかけてきた。


「おはようございます。今日から5人体制なんで調子はまだわからないですけど、楽しみです。」


優等生らしい回答をクラマーがしてる横で口の中の何かと格闘中のノツダがモゴモゴ言ってる。


食べ終えてから喋れよ。


ローガンの周りにいるのは恐らくローガンのパーティメンバーだろう。

熟練者の雰囲気がすごい。

俺を品定めしてるのが目線でわかる。


その中の1人と目があった、


「君、戦える人でしょ?身体的にも精神的にも強いタイプだ。」


怖っ、いきなりなんだこいつ。


目の合った痩せ型で髪の長い不気味な雰囲気の男がゆっくりと近づきながら声をかけてきた。


(ローガンとタイプが違いすぎるけどコイツらどんな話するんだろう。)


「いや、わかんないっすね。昨日来たばっかなんで。」と顔を逸らしながら軽く流す。


「あーそう、君が、そっか。」



これからが楽しみだね。

かろうじて聴き取れるくらいの小声でそう呟く。と戻って行った。


健闘を祈ってくれたのだろう。

勝手にそう思う事にする。


そんな不気味な男もいるローガン一行も我々と同じく今から塔に入るらしく一同に向かう形になった。


昨日も感じたがこの広場はあまり奥行きがないのですぐに塔の入り口に着いた。


ノエルとシイナが少し遅れてやってきてローガン達に挨拶をしている。


このパーティがあの家に住めているのも、今の仕事を教えてくれたのもローガンたちのおかげらしい。


(俺もみんなもローガンにお世話になりっぱなしってわけか、デカいな。身体だけじゃなくいろんなもんが。)


先に行くぜ、とローガンが塔の入り口にある石碑に触れ他のパーティメンバーも手をつくと[20階層]と言ったら全員一瞬で消えた。


昨日のうち聞いていたが知らなかったら腰を抜かしていたかもしれない。それくらい衝撃的な光景だった。


じぁあ僕らも、というクラマーの号令で全員塔の前に立ち石碑に手をつける。


[1階層]


クラマーの声に石碑が反応する。


ブォンッ!!!!


(なんつー振動だ!!)


なんて表現したら良いのかわからない大きな音が耳の中でしたと思ったら物凄い振動がした。



目を開けると、先ほどまでの砂漠とはうってかわって涼やかな風の吹く高原に立っていた。


おそらくここは標高が高いのだろう。


近くには川が流れているし、その下流には湖も見える。

遠くに見える山脈は雲に届くほどだ。


素晴らしい景色に眼を奪われた。


「もし何かあってはぐれるような事になったらココが集合場所になるからよく周りの景色を覚えておいた方がいいよ。」


とノエルからのアドバイスを受ける。


「今回はわかりやすく川沿いを中心に散策しよう。」


とクラマーが提案し全員が賛成した。


ーーーーー


クラマーが石を肩にかけた鞄から取り出し川に浸けた。


「これは[固有魔法石]って呼ばれているもので、1つの魔法だけしか発動しない代わりに魔法使いの適正がなくても使えるヤツなんだ。」


と教えてくれた。

魔法を使うには適正があるらしい。


昨晩夕食で話題に上がり、試してみたが自分にはなかったものだ。

そもそもほとんどの人間はその適正がないらしいのだが。


ーーちなみに魔法石には「固有魔法石」と「魔法石」の2種があり、


「固有魔法石」は《水を貯める》、《周辺の温度をある一定に保つ》《少量のモノを収納できる》などの便利だが効果のうすいものが。

「魔法石」は固有魔法石には出さない威力、性能の魔法が使えるらしい。


(固有って言う割には魔法石も別に複数の魔法が使えるわけじゃないのが分かりにくいな。)


誰が名付けたのか知らないがセンスがない。


(まぁ適正のない自分には到底関係がない話だが。)


ーーーー


そんなことを考えてる間にクラマーが水を汲み終えたので下流へ向かうその時。


ーースンッと鼻を鳴らす。


泥と脂の混ざったような臭いがする。


「獣の匂いだ。近くはない。」


とクラマーに伝える。


昨晩の夕食時に気づいたがどうやら自分は他の面々よりも嗅覚に優れているらしい。

今はまだ知らない自分の特製の一つに気づけたのは嬉しかったが地味だと昨日は思った。


しかし今はそれが役に立った。

全員の目線が自分に集中する。


スンスンっ!

「いや、なんの匂いもしねぇじゃん!」ノツダが顔を上げて鼻を鳴らしそう怒った。


「ごめん、僕もわからない。」クラマーが申し訳なさそうにしている。


「何かいるって仮定した方がいいかもね。」


ノエルはそう言って背負った弓に手をかける。

シイナは不安そうに杖を構えた。


(近くはないが匂ってきたんだ、おそらく遠くもないだろう。)


匂いは風向きから考えると恐らく進行方向そのまま。


もしこちらから急襲を仕掛けるなら迂回するべき、と提案するとノツダとシエルは賛成したが。


クラマーとシイナはまず隠れてそのモンスターがなにか確かめようと言った。


そりゃそうだ、相手が何かもわからないのに攻撃することを前提にしていた。


もしかしたら自覚がないだけで自分はかなり好戦的な性格なのかもしれない。

また一つ自分のことがわかった。


「わかった。まず俺が1人で行って様子を見てくる。」と言うと


「アヤト、1人は危険だよ。僕も行く。」

とクラマーが言った。


「待って、クラマーは怪我明けなんだから私が行くよ。」


とノエルがクラマーを制止したので俺とノエルの2人で行く事になった。


ノツダも行きたがっていたがどう考えても隠密ができるタイプじゃないので断った。

その際なんて言えば角が立たないか悩んでいるとノエルが


「もし私たちがいない時に何かに襲われたら病み上がりのクラマーとシイナの2人を守れるのはノツダしかいない」


とかそんなことを言ってノツダを煽ててた。


「確かにな、2人のことは俺に任せとけ!」


と誇らしげに胸を叩いていたノツダは少し可愛げがあった。


2024/08/08 加筆修正しました。


誤字報告受けられるほど読者がいないので今更誤字に気づきました。

恥ずかしいですね。


読んでいただいた方がいたらすみませんでした。

これからもよろしくお願いします。

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