冒険の朝に
ベッドが恐ろしく硬いので早々に目が覚めた。
(イタタタ、変なクセがつくわ‥。)
昨日はゆっくり見て回れなかったので建物の中を少し歩く。
この建物は入り口のすぐ右手に階段があって正面は吹き抜けのような形になっている。
吹き抜けにカマドと調理用の石でできた作業台、木のテーブル、木の椅子があり昨日はここで食事をとった。
中庭のような形だが2階が屋根がわりになるから雨風は心配ない。
左手側以外の三面が囲まれていて開いた一面がそのまま庭のような空間に繋がっていて庭は洗濯物を干すためのヒモがかかってる。
全体的にキャンプ場のような雰囲気でわりと気に入った。
(あとは寝床だな‥。)
2階に上がると4部屋あり大きめの部屋が2つ、それぞれクラマーとノツダ、ノエルとシイナが利用している。
と言っても基本は寝るだけの部屋だ。
小さい部屋は昨日から一つが俺の個室となった、もう一つは倉庫として利用してるらしい。
来て早々一人部屋にして貰えたのはありがたい限りだ。
そしてこの建物はなんと驚くべき事になんとバスルームがありトイレとシャワーがあるのだ。
魔法石とかいう石を利用したものなのだがコレのおかげで外観から想像するよりずっと居心地のいいものになっていた。
(恐らくだけど大昔、食堂を兼ねた宿か住宅兼食堂みたいな建物をリノベーションしたんだろうな。)
ローガンの言っていた鏡はバスルームにあった。
だがそこに映る自分の姿を見てもなんとなく自分には思えない、不思議な感覚に陥る。
いつか慣れるのだろうか。
そうしているとノエルが起きてきたので挨拶をする。
「あら?早いね?おはよう。」
「あぁおはよう、ベッドに慣れなくて目が覚めたから少し見て回ってたんだ。」
「あー硬いもんねー。いつか買いかけたいんだけど。」
「高いのか?」
「まぁそれよりも優先するものが、ね、武器とか防具とかさ。」
「なるほど。」
(あっ、バスルーム使いたいのか、邪魔しちゃったな。)
バスルームを出てキッチンでで見慣れない食材たちを見ていると気がついたら全員が降りてきていた。
そのまま全員が揃い朝食が始まる。
なんとなく第一印象でリーダーはノエルだと思っていたが実際はクラマーがリーダーだそうだ。どちらもそれらしい雰囲気がある。
ーーーーーー
食事があらかた済んだ頃、
「アヤトに簡単だけど僕らの1日の流れを説明するね。わからないことは後でまとめて聞くよ。」
とクラマーが言う。
ノツダは食べ終わったのかどっかにいった。
トイレかなんかだろう。落ち着きのない奴だ。
「まず起きたら朝食、時間は決まってないけどみんなが起きてたらなるべくみんなで食べる。
そっちの方が美味しいからね。
そのあとはブリーフィング、って言うと大仰だけど、何階層の何を狙うとかそんな話だね。
あっ、あと前日に大物が拾えてたらソレを売りにいったり買い出しにいったり、まぁする事を決める。
基本は日帰りで一旦荷物を全部持って毎日ここにみんなで帰る。夜も基本みんな揃ってここで食べる。それだけ、簡単でしょ。」
クラマーは楽しそうに語る。
とりあえず朝夜は全員でメシを食う。
その日の朝その日のスケジュールを決める。
って感じだろう。
(基本全員行動なんだな。)
「塔内では前衛にノツダと僕、ノエルとシイナが後衛って感じで進んでく。一度だけ最大で5階層までは登ったことはあるけど、アレはかなり無茶したし割に合わないから、基本はそれ以下の低難度階層での散策がメイン。つまらないかも知らないけど安全第一で。」
と真面目そうな顔に切り替えったのを見て、まだ食べ終わっていなかったシイナがほっとしたような表情を浮かべている。
多分シイナは見たとおり大人しく冒険心などは薄いのだろう。
クラマーもどちらかといえば冒険よりもみんなで仲良く過ごしたいと思ってそうな感じがする。
「アヤトは武芸の心得のようなものはあるのか?スポーツとかでもいいけど。」
とノエルに聞かれる。
あくまで想像だがノエルは多少好戦的な雰囲気がする。
(スポーツか、スポーツって‥なんだっけ?)
「体格は良いし、とりあえず前衛やってもらおうか。行きの広場で武器を実際に触ったらなにか手に馴染むものがあるかも。」
とノエルが言った。
私は弓を触った時にすごく手に馴染んだから多分経験者なんだと思うなんてたしか昨日言っていたな。
「武器、か。自分が武器を持って戦うなんてイメージ湧かないな。」と言うとクラマーが
「あくまでも護身用だからそんなに難しく考えなくていいよ。この一月で何度か頭に入ったけど戦闘になったのなんてつい数日前が初めてだったんだから。」と言った。
いつの間にか戻ったノツダは少し不満げに「実戦積まなきゃ慣れるもんも慣れないと思うけどなー。」と言う。
シイナは小声でごめんなさいと呟いた。
多分彼女は戦闘が苦手なのだろう。
そんなシイナが食べ終わったのを見たクラマーから一度解散して準備をしたら塔に向かおうと言ったので朝食の会は終了した。
部屋に戻り準備をするにしても特になにを準備すればいいのかもわからないし準備するものもないので硬くてボロいベッドに座って時間が過ぎるのを待つことにする。
昨晩の食事の時に聞いた話では、塔を登るごとに少しづつ記憶が戻ることがあるらしいが、
確信的なことはまだ何一つ解明されてないようだ。
(この場所のことも、あの古びた大きな塔のことも、自分自身のこともわからない事が多すぎて逆にどうでも良くなりそうだ。)
その謎を解くために上層階を目指してる連中を[攻略班」と呼ぶらしい。
そのほかに[討伐組]と呼ばれる好戦的な奴らが集まった集団や[生活向上委員会]とかいう奴らもいるらしい。
ちなみにトイレやシャワー、廃墟の復元などは全て生活向上委員会のおかげらしい。
(感謝しかない。)
ちなみに広場で家具を売ってるのも彼らの関係らしい。
素晴らしいなまったく。とかそんな無駄なことを考えてるとノックの音がした。
「さぁ準備できたかな、そろそろ行こうか。」
クラマーに呼ばれる。
はじめて塔に入る緊張で鼓動が速くなるのを感じた。
2024/08/08 加筆修正しました。
自分で読み直していても「自分で書いてるから」わかりにくいところや読みにくいところに気づくのがとても難しいですね。
読んでくださってる方ができるだけストレスなく読めるように心がけていますけどもしそうでなかったら申し訳ないです。




