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彼らの登らない古塔生活  作者: うめつきおちゃ
過去を超えたくて
50/50

エピローグ

 「俺とシュガーはジェフリーのどこへ向かうけどノツダはどうする?」


「いや、疲れたし先、帰るよ。魔法石は買取屋に渡しとく。」

 ノツダはそう言うとさっさと歩き出してしまった。

 

「あれ?ノツダ帰っちゃうんだ?」

「みたいだな。まぁ疲れたんだろ……。」


 ノツダは塔の出口(石碑)までもだいぶ無口だったし何か思うところがあるんだろう……。

 ……良いところ見せられなかっただけじゃなくスキルを使い切って倒れ込んでる姿を見られたのが恥ずかしかっただけかもしれないが……。


「とりあえず魚屋行ってからジェフリーの所向かうわ。もろもろ助かったよ。ありがとな。」


「いやいや、こっちも楽しめたし。また機会があったら連れてってよ!」


 シュガーとも解散してジェフリーのところへ行く。


 ――――――


「おう、ずいぶん遅かったな?」

 横柄な昔ながらの職人然とした態度でジェフリーがお出迎えしてくれた。

 まぁお使い頼んだら丸半日近く帰ってこなきゃムカつきもするか。

 

「シュガーんとこに行ったら在庫がなくて塔の中まで採りにいくことになったんだよ。」


「それだけでこんな時間かかるのか?まだまだルーキーだな。」

 嫌な言い方だが事実なので言い返せない。


「食ってくか?」お使い品を机の上に並べると訊かれたがお断りした。


「ウチはメンバー揃って晩飯食うってルールでやってるもんでな。」

 と説明するとジェフリーは哀愁の漂う表情になり「皆んな最初はそういうルール作るんだよな……」と呟いた。


「アンタもそういう時期が?」


「……ああ、まぁな。広場で働いてる年寄りはだいたいがそうだ。今と違ってどんな奴でも塔に挑むしかなかったからな。あの頃はまだ広場も瓦礫だらけで人の住める場所なんかなかった。とにかく生きるのに必死な時代さ。」


 「驚嘆するよ。今じゃ砂漠の中に人数こそ少ないが立派な集落としてココは完成してる。あんたたち先人のおかげだよ。」

 

 「わかってりゃいいのさ。褒められたいわけじゃねぇ。で話ってなんだったか?」


「あぁ、スキルの覚醒ってやつについて聞きたいんだ。」

 一日かけてようやく本題へはいれた。


「あぁそうだったな。覚醒なんていや聞こえはいいが、あんなもんは要するに上限が変わるだけだぞ?それについて何が知りたい?」


 ?上限が変わるだけだと?


「いや、ちょっと待ってくれ。前提に違和感がある。……この前、俺が経験したのはもっと違う何かだったぞ?」


 ジェフリーにこの前のバフォメット戦で起きた事象についてかいつまんで説明すると

「お前そりゃスキルの覚醒じゃあないな。」

 

 「は?」


「わからん。わからんがそれらをアリきで考えるなよ。あくまで最後の手段。そう考えるくらいでいたほうがいい。」


「……どうやら邪魔したようだな。」


「みたいだな。次は客として来い、多少は勉強してやるわい」


「忘れるなよ?」


 


 ――――

 

 結局なにもわからないままジェフリーの所を後にした。

 一日がかりで成果はほぼ無に等しいのは残念だがこの世界には謎が多すぎる。


 家に帰ると自分以外の全員がすでに帰っていた。


「おかえりー」「おかえり」「おかえりなさい」

「ただいま」


 ノツダから今日俺たちが勝手に塔へ行ったことは伝わっているはずだが不機嫌な人間はいないようだ。

 協調性を大事にするクラマー辺りは多少怒ると想定していたが杞憂だったな。

 一応先んじて謝罪しておこう。


「相談もなしに塔へ行ってわるかったな。」

 と誰に向けるでもなく言うとクラマーは首を振った。

 「僕らはもうルーキーじゃないから、これからはそういう依頼を受けることがあると思う。そんな時は自分の実力と相談して個々に判断するべきじゃないかってノエルと話していたんだ。」


 「……自主性と自立って話か?」


「そうだね。で、そのあと新しい家についてはなしていたの。」


 「ノエルの今の口ぶりから察するに新居探しはあまり芳しくないのか?」


「建物自体はあったらしいんだけど……」

 シイナも歯切れの悪い言い方をしている。


 「ようするに高いんだよ!まだ高原地帯をうろついてるオレらにはさ!」

 ノツダはお怒りのご様子。


「今日の報酬を足しても届かないか?……いや賃貸か。」


「でも問題は半年分の前払い分が払えないって話なんだけど……今日の報酬って?」


 おかしいな、ノツダから聞いてると……アイツ目をそらすどころか身体ごとそっぽ向きやがった。

 理解した。誰も不機嫌になってないのは『ホブゴブリン』と戦闘になったことは言ってないからだ。


「ゴブリンを数体じゃ足りないだろうな。その後に引っ越し作業で塔に行けないことを考えるとある程度の余裕は欲しいし。」


「ノツダお前伝えてないな。」

「やめろ!わざわざ言うな!」


「なにを言って――「ホブだよ。今日俺らが倒したのは。」


 クラマーを遮って告げる。


 ノエルは呆れたような表情をしている。

 非好戦派の二人はお説教の準備運動を始める。


 あぁもしかしたら塔に登っているほうが楽かもしれない。


 

読んで頂きありがとうございます。

いったん、この物語は更新を止めさせていただきたく思います。


簡潔にしたとたん大量のPVを頂けましてありがたいです。


ありがとうございました。また機会があれば続きを書きたいです。




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