残りの一人
「クラマー!もう起きて平気なのか?まだ寝てていいんだぞ。」
ノエルが心配そうに2階の青年に声をかけると
「大丈夫、そんなに心配しないで。もう熱は下がったし痛み止めも効いてるから平気だよ。それにシイナの回復魔法も効いてるしね。」
と言った。
魔法、そんなものがあるのか。
記憶そのものがないから不確かだが魔法という言葉は聞き馴染みがある気がする。
「怪我が病気でもしてたんなら別に、今降りてこなくても後日改めて挨拶に行くけど。」
と、クラマーと呼ばれた青年に対し少し冷たい突き放すように言ってしまった。
そんなつもりはないが、多分俺の悪い癖なんだろう。失言とまではいかない気もするがあまり人当たりのいい言葉が出てこないので冷たい言葉を吐いてしまった。
(自分のことで唯一わかるのが自分の悪いところか。ままならんな。)
「心配してくれてありがとう。初めまして僕はクラマー、よろしくね。寝てたのは病気じゃなくて」
とクラマーが言うやいなや、
「古塔でモンスターにやられたんだよな。俺なら避けて一撃入れるくらい余裕で出来んだけどクラマーは避けらんなかったんだよ。」
と偉そうにノツダが割って入ってきた。
その無邪気な表情の少年を見てクラマーは肩をすくめ、ノエルが「アンタはまたそういうこと言う。」と呆れていた。
シイナはノツダに冷ややかな眼を向けている。
本当にわかりやすい関係性だ。
「ローガンに特に説明なくここへ連れられてきたんだが、ここで4人で暮らしてるのか?」と尋ねるとクラマーがそうだよ。と答えた。
ここまでのやり取りでわかったことは、ここは最初自分が思っていたような案内所や初心者育成機関ではないという事。
彼らに、自分はここの新人として入ると思われているだろうってことだ。
「俺がここに…そのパーティとやらに入るのか…」思うだけのつもりが口に出ていた。
「嫌だった?でももしウチが嫌だとしても、どこか属してた方が色々と楽だし君自身助かる部分もあると思う。僕たちは歓迎するよ。」
とクラマーは続けた。
(爽やかで誠実な笑顔。俺には似合わなそうだな。)
「ちなみに私たちの仕事は、主に古塔内にある資源の回収とその搬送だね。」
とクラマーの言葉を補足するようにノエルが続けていく。
「戦闘は基本しない。どうしてもって時以外は危険を避けるし階上に登るのも余裕がある時だけ、回収した資源の中に自分たちで利用できるものは持ち帰るのも自由だからお金も資源もない私たちみたいなルーキーだらけのパーティにはピッタリな仕事だよ。」
なるほど‥確かに無一文でなんの所持品もない俺には渡りに船だな。それと訂正しよう、この2人は頼りになりそうだ。理路整然とした説明がありがたい………
「そうか、じゃあお世話になろうかな、クラマーだっけ?俺はアヤト。時期ハズレのルーキーってことらしいけどよろしく」
自己紹介が済んでなかったので改めて挨拶をする。
クラマーが手を出してきたので握手をする。爽やかなヤツだ。
しかし何か喉に魚の小骨がつっかえたようなもどかしさを感じる。なんだろう。なんか言ってたな………
(いま、たしか‥)
「え???ルーキーだらけのパーティ!??」
2024/08/08 修正加筆しました
大筋は一切いじらず読みやすく分かりやすく見やすくしたつもりです。
伝わってると嬉しいです。