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彼らの登らない古塔生活  作者: うめつきおちゃ
過去を超えたくて
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ホブゴブリン討伐戦

 索敵の基本を教えてくれる人なんていない。

 向こうじゃどうだったか覚えてないがコチラの世界じゃみんな自分が生きることでまだまだ手一杯だからだ。


 「ローガンと仲良くしてるなら教えてもらえば?」

 シュガーは簡単にそう言ったが実際、命がかかってる場面で他人を信用して言いなりになれるほど人間は出来てないと思う。


「つまり?」

「自分で得た経験と知識でやりくりする必要があるんだよ。他人の命まで責任取れないからな。」


 薄情だって言う人もいるかもしれない。

 死に慣れれば逆に何も感じないかもしれない。


 でも俺たちはそうやって生きてきてる。


「あったぞ。奴らの食い残しだ。」

 ノツダが嫌そうに持ち上げたのはリンゴのような果物だった。

「まだ唾液が乾いてない。」 

 方向は合ってるしだいぶ近づいてるようだ。


「ここからはいつ接敵してもおかしくない。丘陵の陰になるよう移動する。」


「アヤト、オレのナイフ使うか?」

「あぁ借りるよ。」ノツダの解体用ナイフは鋭利だが刃渡が短い。無いよりはマシ程度だろう。


「シュガーは絶対に姿を見せるなよ?」

「わかってる。風下、物陰。」

「まぁいざとなったらオレが助けてやんよ。」


 恥ずかしくなるなら言わなきゃいいのに。

 もう少しの間ノツダの青春を見守っていたいがどうやら、そうもいかないらしい。


「……」

 手でサインを出し二人を制止する。

 事前に決めたとおり俺がホブゴブリンのことを止めてる間にノツダがスキルを使ってゴブリン達を片付ける。そしてその後、数的有利の状態を作りホブを狩る。


 俺は一人丘陵を回り込むと……ホブゴブリンと取り巻きのゴブリンは二体。

 足跡から予想した通りだ。


「うおおお!」

 ノツダが丘の上から大声で走り出す。

 そちらに取り巻きのゴブリン達の気が取られてるうちに一気にホブゴブリンと距離を詰める。


「フィジカルブースト!!」

「バスターキャノン!」

 

 ノツダはその身体能力を一時的に上げるスキルを使い取り巻きを軽く蹂躙する。


 ドンっ!と俺のスキルを使った蹴りがホブに直撃するもギリギリのところでガードと後方へのステップが重なったらしく体勢を崩すだけに終わってしまった。


「不発だ!オレじゃ倒しきれない!時間稼ぎに移行する!」と大声で告げる。


 体重差があるとは言え、もう少しダメージ稼げると思っていただけにショックを隠せない。


 立ちあがろうとするホブの顔面にシャイニングウィザードをぶち込む手もあるが、もし抱えられたら地獄を見そうだな。…………シャイニングウィザード?


『うぐぉおおお!!』

 

 そんなことを考えてるとホブが雄叫びを上げてコチラへ走ってきた。タックルを狙ってるのがわかる。

「くそがっ……!」


 避ける間もなく弾き飛ばされたあと三、四回転して止まった。ホブは腕を押さえている。

 恐らくスキルのダメージが腕にキテいたらしい、全力のタックルだったらもっと激しくダメージを負っていただろう事から推察できる。


 向こうは片腕、こちらはぶつかったダメージと地面で擦った分。芝じゃなかったらコチラの方が一方的にダメージレースで負けていたかもしれないが、

 現在は互角だろう。


「うぉおおおお!」ノツダの勝鬨が聞こえた。


「悪いな。タイマンはここまでだ。」


 ダッダッダッ

 人間とは思えないスピードと跳躍で駆け寄って来たノツダが跳んだ。

 ホブがそちらを注視した隙をついて最初に折った方の腕を狙いスキルを放つ。


「おらあ!!」

「バスターキャノン!」


 グオオオ!

 ホブゴブリンが倒れて悶絶している。

 あとはトドメを刺すだけだが……この巨体が悶絶し暴れていると近寄れない。


「オレ……もう……無理……。」

 ノツダは肩で息をしている。スキルの使用時間が切れたようだ。

 持っていた槍も握れなくなって地面に置いている。

 

 どうするどうする。オレもスキルの使用回数が切れたし何もここからやれる手がない。

 このままだとコイツは回復してしまう。

 いくら片手は破壊したとはいえノツダもスキルも無しのタイマンはキツい……。


「ノツダ!その槍貸して!」

 丘陵の向こうで隠れていたはずのシュガーがすぐ近くまで来ていた。

「おまっ……なにして……んだよ……?」


 ノツダは息がまだ整わない。

「槍だな?」と俺が勝手にノツダの槍をシュガーに渡すとカバンから謎のキノコを出した。

「……?」

「これはテンゴクダケ、さっき拾っといて大正解だったね!」と言って槍でキノコを刺し始める。


「いや、それ今やることか……?」

「何言ってんの!テンゴクダケは毒キノコなんだよ?こうやって武器に塗ってモンスターに傷つければ麻痺させられるんだから!」


「なっ、マジかよ……。」


「昔は皆んなこうやって色々駆使して戦ってたってお父さん言ってたよ。最近はいい武器とか防具が作れるようになったからやらなくなったらしいけどね。」


 はい。と渡された槍でホブゴブリンに数発、見様見真似の形で突きを入れる。

 いくらか傷をつけることに成功し、少し待っていると毒が回ったのか痙攣し始めた。


「早すぎるだろ。」

 その効果の強さと早さに俺は驚愕した。

 

「猛毒だからね!」

「味はうまいんだけどな……」

 どうやらノツダは経験者らしい。

 よく生きてんなコイツ。


 ――――

 

「……ふぅ。」

 まともに動けなくなったホブゴブリンにトドメを刺して3体分の魔法石を回収する。……見てもあまり違いがわからないがホブの分は高いはずと信じよう。


「素材は持ち切れないし、満身創痍だし帰るか?」

「そーだね!賛成!ノツダも辛そうだしね。」

 



 帰り道は絶対に何とも遭遇しないよう細心の注意を払いつつ帰路へつく。

 

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