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彼らの登らない古塔生活  作者: うめつきおちゃ
過去を超えたくて
48/50

始まりはだいたい一目惚れ


「これが塔の中ー!?広ぉーーっい!」


 シュガーは初めて見る景色に舞い上がって不思議な踊りを始めてる。

 ノツダは遠い目をして「ふっ、懐かしいな……オレも初めて来た時はあんなだったかもな。もう慣れちまったぜ。」とか抜かしてる。


「お前さっきから微妙にスカしてるけど、もしかしてシュガーに惚れたか?」

 踊るシュガーには聴こえない程度の声でノツダにそう話しかけると「はあ?意味わかっんねし」とかいう微妙な噛み方をして拗ねた。


 ノツダは最近、随分と大人になったと思ったけどまだまだ思春期だった。コイツに恋愛はまだ早そうだ。


「シュガー!!もう十分楽しんだろ?目的をさっさと終わらせて帰ろう。」


「はーい!」と元気よく返事をしてコチラへ向かってくるシュガーを見つめるノツダはさっきより意識しているようだ。

「仲良くなりたいなら手伝おうか?」


「いやだね、つーか興味ねーし!それにどうせ全部クラマー達に伝えるだろ!」


「ははっ!まるで中学生だな……」

 中学生……?

 なんだっけそれ……?


 隣を見るとノツダも不思議そうな表情をしている。

「中学生?」

「なんだっけそれ?」

「いや、アヤトが言ったんだろう!」


「なんの話してるの?」シュガーに訊かれる。


「いや……なんか今、自然と出た単語が何かわからなくて……お互いに、俺もノツダも知ってるような単語なんだけど思い出せないんだよ。」


「あー、それはほら二人は七階層超えたからちょっとだけ思い出してるんだよ。()()()を。」


……昔の事。

 つまり、この世界に来る前の事か?


「でもよー、七階層に行ったのはもう十日近く前で、それから一度もそんなことなかったぞ?」


「ノツダの言うとおりだ。俺たちはそれが不思議だなって塔から帰るたびに話していたんだ。」


「そんなこと言われてもなぁ『個人的な記憶は塔の中にある』ってヤツなんじゃないの?」


「……なんだそれは?初耳だぞ。誰が言ってた?」


「オレもだ!アヤトより先輩だけど初めて聞いた!」

 たった一月のことで先輩ヅラするな。


「そう?でも私もお父さんとママに聞いただけだから詳しくないからなぁ。ちゃんと知りたいなら二人の師匠的な人とかに聞いた方がいいと思うよ。」


 たしかにコチラ側で生まれたシュガーにあれこれ聞いても結局は又聞きになるならローガン達辺りに聞いた方が良さそうだ。


「えー気になるじゃん!教えてよ!」

「ノツダ、シュガーの言うとおり、あとで誰かに聞いた方がいいと思う。ここはさっさと収穫を終わらせて帰ろう。」

 と、ノツダを制止するとムッとした表情になった。


 なんだコイツ何を怒って……ん、まさかコイツただシュガーと話がしたかっただけなのか?

 

 コチラの表情で思惑がバレたのを察したのかノツダは顔を背けた。

 

「この古木!怪しいぞー……やっぱりあった!テンゴクダケだ!!」


 シュガーはコチラの事情など、どこ吹く風。

 さっさと採集ポイントに目星をつけドンドン進んでいく。

「シュガー、一応訊くけど塔の中でのルールや仕組みってわかってるんだよな?」


「わかってるよー!入ってきた石碑から帰れる!以上!!」

 まぁ間違ってない……けど最低限がすぎる。


 ――――


 その後一時間もしない内に目標は達成した。

 

 シュガーの圧倒的な知識による高速採集の賜物だ

 。

 俺たちには、ただの木、ただの野草、ただの虫にしか見えないものから様々な情報を得て目標まで辿る彼女は一人前のハンターそのもの。

 

 その知見を得ようと俺達は話を聞いたり質問をしてみたりしたが正直、全然わからなかった。

 斥候(せっこう)として、ぜひ手に入れたい技能だっただけに残念だ。


 専業で草木の世話をし続けているシュガーだから身についたモノなのだろう。


 そしてついに俺たちはそんな彼女に任せて、ただ周りを警戒するだけで終わってしまったのである。


「じゃあ帰ろっか?」

 シュガーが()()()に採集していたキノコやら果物やらを即席のカバンにパンパンにしてそう言った。


「……」

 話す機会があまり得られなかったノツダは不満げな表情を浮かべる。

 「休みの日でも聞いてデートでもしてこい。」とノツダに囁くと「は、はぁ?」と耳を赤くしていた。

 うーん、このウブな感じだと、十二、三歳くらいなのか?……十五はいくかな?くらいだと思っていたがもう少ししたかもしれない。

「お前、もしかしてシイナより年下かもな。」


「はあ?!そんなわけ――――」 


「ねぇ!二人、この足跡なにかわかる?」

 シュガーが何か見つけたらしい。


まだノツダは不機嫌そうだが無視して足跡を確認しにいく。


「ゴブリンのそれかなって思ったけど……」

 シュガーの指さす方を見る。


 一回り以上大きい。

 あたりを注意深く見渡すと他にも足跡があった。


「こっちがゴブリンだな。」

「形は同じだね。」

 

「つまり、でかいゴブリン……ホブゴブリンだな!」


「ホブ、ってボスなんだっけ?ゴブリン達の。」


「あぁ、過去に見たことあるけどデカいよ。でもまぁ足跡から見るに方向は被ってないから安全に帰れるよ。」と告げる。

 


 ノツダがニヤッと笑う。

 コイツ今、絶対余計なこと考えてるな。


「アヤト、オレたちは成長してるよな?」


「……あぁ、スキルも手に入れたしな。」

 今それを認めるのは悪手だとわかっているがそう答えた。

 

「そう!つまり今のオレ達ならホブゴブリンなぞ恐るるにたらず!狩ろうぜ!」

 やっぱりそうなるか。


「お前は単純すぎる。」と悪態吐きつつも正直なところオレも試してみたい。今、自分がどれだけやれるのかを。スキルがない時よりどれだけ強くなったのかを。


「私も見たいかも!」とシュガーが言ってしまったのでノツダは完全にやる気だ。


「まずは相手の数と立地の確認。使えそうな地形を探そう。」と二人に言うとシュガーは「さすが本職だね。」と笑った。


「アヤト、やるんだよな?」


「あとでクラマー達に謝るぞ。」


 謝罪を前提とした残念な戦いが始まる。

 

読んでいただきありがとうございます。


ブクマやら評価やらいただける作品を書けるように努力してます!そんな感じですよろしくお願いします!

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