表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼らの登らない古塔生活  作者: うめつきおちゃ
僕を守る君を守る人
39/50

言葉の真意


[そもそもが間違っている]


 この言葉から答えへ導いたのは意外な人物だった。


 ――――


 ローガンにヒントを貰ってから数日、俺たちは何も進展せずにいた。

 ただ人は何もせずとも腹が減る生き物なので困らない程度の日銭を稼ぐために塔へ向かった。

 家を直してくれた[生活向上委員会]と呼ばれる連中への支払いもあるらしい。


 ただ金のために、生きるために塔へ行く日々、ノツダのトレーニングする音が聞こえないのはここへ来てから初めてのことだった。


 なんとなくただ日々が過ぎることを恐れるものの何もできず何も思いつかず困っていた。


 そしてある日いつもの買取屋に素材の対価を受け取りに行くといつものオヤジではなく娘が店番をしていた。


「あれ?オヤジさんは?」


「いらっしゃい。父さんは今日、塔に行ってるよ。」


「えっ?!塔に?!そういう感じだったの?」


「うん。わたしが生まれる前だから16年前まで毎日のように塔へ入ってたらしいですー。わたしが生まれて引退したらしいけど。」


「16年……そうか。長いな。」


「今でもその時の仲間と一緒にたまーーに冒険しに行ってるよ。」


「そっか。凄いな。」


「そうなのかな?わかんないや。あっ、これ今回の報酬です。」


「あぁありがとう。」


「こちらこそ毎度ありがとうございます!ところでなんでまだ七階層行かないんですか?」


「え?あー……うん。まぁその前で詰まってて……。」


「その前?」


 いくらか掻い摘んでこれまでの経緯を話した。

 話していて情けなくなる。


「なるほどなるほど。へへーそんなことがー。」


 とかそんな雑な相槌が飛んでくる。


「スキルがあったら楽勝なんですね?」


「あぁ多分ね、どんなスキルが貰えるかはわからないけど……。」


「じゃあとりあえずスキル貰っちゃえば良いんじゃないですか?」


 …………????


 …………!


「あっ……なるほど。」


「ですですー。」


「ありがとっ!」


 買取屋を後にする。

 買い出しを忘れて家へ駆けて行った。



 ――――――――


「なるほど……確かにそれがいいかも。」


 まずノエルは賛成のようだ。


「いや、なんかそれズルい気がするぞ。俺バカだからわかんねーけど……。」


 ノツダは嫌そうだ。


「でも今のままじゃなにも変わらないよ?」


 とシイナは乗り気だ。


「自分たちで設定した条件を自分たちで破る……それってどうなんだろ……?」


 クラマーからは反対のニオイしかしないな。


「でもこのままじゃ結局のところ上手く行ってないしありだと思うんだ、[とりあえず先に七階層へ行ってスキル取ってから戻る]作戦。」


「んーでもそれはやっぱズルいだろ!上手く言えないけどさ!」


「僕もノツダに賛成かな。」


「でも[そもそも]クラマーは仲間が危険な目に遭うのが嫌だから登りたくないんだよな?」


 と確認するように覗き込むと小さく頷いた。


「でも今までだって運が良かっただけで危険な事はあったじゃん。もしあの時スキルがあればって事あったと思うんだ。」


「……まぁ否定はしないよ。」


「ならやっぱり私はアヤトに賛成かな。強くなれるなら強くなりたいし。」


 とノエルが挙手した。

 その隣でシイナも小さく手を上げる。

 


「確かに言ってることがコロコロ変わってるのは自覚してるよ。一貫性がないと思う。でも固執するべき事はコレじゃないと思う。」


……………俺の言葉を最後に…沈黙が流れる。


「…………わかった。」


「あれ?!クラマーいいのか?!」


「ノツダは反対?」


 シイナに詰められたノツダは


「いや、俺も反対ってほどじゃないっていうか……。」


「じゃあノツダ賛成ね!」

 

 ここ数ヶ月でシイナは精神的に成長を遂げた。

 その結果(あくまで恐らくだが)ノツダはシイナを意識している。

 思春期の男女が一つ屋根の下で生活してる以上そうなっても何もおかしい事はないわけだ。


「うん、僕も賛成にするよ。こないだの、多分アヤトが見たっていう大きなゴブリンはホブゴブリンって奴だと思う。前に、アヤトがパーティに入った初日に中級の魔法石を落としたゴブリン覚えてる?」


 うん。と頷く。


 (忘れようがない、こちらへ来て最初に戦い命を奪った相手だ。)


「アレは多分、ホブゴブリンの幼体だったんだよ。」


「え?そんなことあるの?」


 俺より周りの方が驚いている。


「ヨータイ?」とノツダはついてこれてないので見捨てていく。


「あの後気になって色んな人に話を聞いたけどゴブリンから中級魔法石なんてみんな聞いた事ないって言ってた。そしてゴブリンのボスとして生まれるホブゴブリンには稀に中級魔法石が埋まってるらしい。」


「な……るほど。」


 そうきたか。

 確かにアレ以降一度も中級クラスの魔法石なんて大金払って買ったシイナの回復魔法石しか見た事ない。


「つまりアイツの成体ってわけか。」


「でもよ、アヤトとノエルの2人で完勝したんだろう?もしかしたら図体だけで余裕かもしんねーぞ!」


 ノツダはそう言って中庭へ向かいトレーニングを始める。元気が戻ったようだ。


「アレが完勝ってのは違うよな。」


「まぁでもアレはアヤトの初戦な訳だし。てゆーか私もまともに向かってくる相手はアレがほとんど初めてだったから完勝とまでは行かなくてもかなり良い戦いだったとは思うよ。」


「とは言えあのボスゴブリン……いやホブゴブリンの巨大を見た後だと……やっぱスキルが欲しくなるよ。」


「結論はそこだと思う。スキルが必要か否か。」


今度は全員の意思が統一できたと思う。

 というかそもそも最初からきちんと話し合うべきだった。


 だれが条件とか言い出したんだ………………俺か。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ