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彼らの登らない古塔生活  作者: うめつきおちゃ
少年が、我に帰る
32/50

単眼の大鬼

1階層は難なく突破して2階層へ行きそこで軽食と休憩を取り3階層へ進んだ。


「これが3階層か、想像以上に何も変わらないな。」


と周りを見渡すと生姜鹿の群れが駆けている姿が見えた。

嫌な匂いがする。

血と獣のニオイ、捕食者のニオイだ。


「クラマー、なにかいる。肉食のモンスターだ。」


「全員警戒して。」


クラマーに指示される前に駆け出す。

斥候としての仕事だ。


相手よりも先に姿を捉える。

こちらだけが有利になれる地形を探す。

削れるような相手なら削る。

丘陵をひとつ越えふたつ目を登るとすぐに見つけた。



最悪だ。単眼の大鬼、通称サイクロプスだ。



この低階層で最も危険なルーキーキラーにここで接近を許すなんて誰のせいだ!

いや誰のせいでもない。

強いて言えばこの塔のせいだ!


仲間達のいる方へ2つ投げる。

撤退回避の合図だ。


生姜鹿を追ってサイクロプスはコチラへ近づいてくる。


(大丈夫、進行方向とアイツらの場所は被らないはずだ。)

頼むから気づくな。


不思議なもので心の底から願ったもの程それが叶わないものだ。


後日ローガンと食事に行った際に教えてもらった事だがサイクロプスは目がひとつしかなく視野が狭い、代わりに途轍もなく聴力が発達してるらしい。

それこそカルレスと同レベルだ。とパーティメンバーを引き合いに出すが当人はあまり嬉しくなさそうだった。


生姜鹿の群れが残した痕跡を無視して仲間達のいる方角へ進むサイクロプスが俺に気づかず横を抜けた。


(助かった)


思わず頭の中にそんな言葉が浮かぶ。


(違うだろ。コイツは今、俺に気づかないまま背中向けてんだ。千載一遇の絶好機。逃すバカでいたくない。)


奇襲の準備をする。

もし仲間達が見つからなければそのままコチラも隠れてやり過ごせばいい。

もし見つかったら、購入したばかりの新武器で奇襲をかける。


そう決意した俺瞬間サイクロプスが走り出す。


(見つかった!)


大急ぎで追従する。

丘陵を降りもう一つ登る。

頂上から見るとサイクロプスはクラマーの方へ駆けていた。

いや正しくはノツダを守ろうとその前に立つクラマーの方向だ。


ドンっと大きな音と共にクラマーが宙へ浮く


初級の風魔法ではあの巨体を止めることは叶わなかった。

ノエルの弓がこめかみに直撃するもダメージは低い。

シイナの光魔法で視界を奪うもの元々視界に頼らないサイクロプスには効果が薄いようだ。

眩しそうに目を抑えるヤツの前でノツダは腰を抜かしている。


やるしか無い。


「シイナ、クラマーに回復を、ノエルは矢無くなるまで射て!ノツダは立て、意地でも立って逃げろ!」


大声を出したコチラにサイクロプスの注意が向く。


やらなきゃやられる。

逆に楽しくなってきた。

全身を血が巡る感覚は生きてる実感を与えてくれる。

多分俺はそういう人間だったんだろう。


ヌヲンッ!


聴き慣れない掛け声と共にサイクロプスが腕を振り回し宙へ浮く。

クラマーへ行った攻撃だったので対処できた。

ゴブリン達がよく行う[打撃系の攻撃は空中へ跳んで逆らわない]という対処法だ。


ゴブリンから学ぶなんてな、と少し自嘲的に笑いながら態勢を立て直してるところへサイクロプスが腕を振り下ろしてきた。

避けられず直撃する。


ドゴッ!!!!!


あまりの衝撃に声も出ない。

気が飛びそうだ。

思考を止めた瞬間身体のコントロールを失い気絶するのを確信した。



ダメだ意識が持たない。

サイクロプスがコチラから興味を失い背を向ける。

そこから先は記憶がない。


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