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彼らの登らない古塔生活  作者: うめつきおちゃ
新たな日々の階段を
22/50

雨の森と衝突

部屋に戻り準備をすませて、階段を降りるとこれまた珍しくシイナが1番に準備を済まして待っていた。


「ずいぶん早いね。」


「はい!実は昨晩寝る前に準備してたんです。」

出会ってから今までで1番目が輝いている。


全員揃ったので塔へ向かう。

その途中、広場の大通りで声をかけられる。


「あーアヤトくんやーー!昨日はお疲れーっす!イェーイ!」


「エドガワさん、今日も元気っすね。昨日はお疲れ様でした。」


「固いかたーい!あーノエルちゃんもおるやん!!昨日ウチんとこ来てくれたんだって〜いなくてごめんねぇ〜。」


テヘッて聞こえてきそうなポーズでエドガワさんがノエルに謝ってる。


「えー全然ですよーこっちこそ居ないのにお邪魔してすみませんでした。今度からちゃんと事前にお声がけしますね。」


「ノエルちゃんも固いよ〜もっと緩く行かな〜。」


クネクネ踊りながらノエルに絡みつく。

ノツダは苦手なのか珍しく黙りこくっている。

クラマーとシイナも挨拶をする。


「あれ?シイナちゃん昨日アヤトくんに渡した魔法石受け取った??」


「あっ、はい。頂きました。ありがとうございます。」


「ちょっと扱いにくそうやけど使ってたら慣れるし使わなきゃ慣れんと思うし頑張ってな〜ほんじゃまたねぇ」


つかみどころのない人だな。

シイナはアドバイスを噛み締めてるようだ。


「じゃあ行こうか。」


5人で石碑に触れる

「1階層」

衝撃が走り高原に出る。



ーー雨が降っている。

向こうとコチラで天気が違うのを体験するのは初めてだ。


「とりあえず雨宿りできそうな場所を探そう。」


呆然としていた、クラマーに言われてハッとする。

幸いなことに背の高い木々で鬱蒼とした森が近くにあったので一時避難する。

出鼻をくじかれたシイナは少し淋しそうな表情を浮かべてる。


「ここ暗いな、焚き火でもする?」


とノツダが提案するが落ちてる枝はどれも湿気ってる、雨が降り出してから割と時間が経過してるらしい。

クラマーが[小さな火をだすだけ]の固有魔法石を持ってきているのを思い出し取り出すが、あくまでも着火用のため役に立ってない。


「わたしの新しい魔法、試してみてもいいですか。」


全員がシイナの方を一度見てから顔を見合わせる。


「たしか光の球を動かすみたいな魔法だったよね。」クラマーが聞くとシイナはコクコクと頷く。

松明の代わりになるかもしれない。


「エドガワさんも使わなきゃ慣れないって言ってたしいいと思う。」

「行きます!」


ノエルが言い切ると同時にカバンから魔法石を取り出した。

片手の平にそれをのせ前に出す。


「ライトボール」


ポンっ!


掛け声と共に光る球が手のひらから飛び出した。

眩しくて全員が目をしかめる。

光の球が上下左右縦横無尽に動く。

シイナが魔法石を乗せていない方の手で操っているようだ。

ノツダが楽しそうに歓声を上げる。


「相手にどうなるんだろうな。」


思わず漏らしたその言葉にシイナが反応し、近くの光をぶつける。

が光は霧散した。


物理的なダメージは無さそうだな。

指向性がある分[フラッシュバン]よりは使い所が多そうだ。

そんな事を、考えていると

ノツダが


「んだよ、使えねぇ」


と小さく呟いた。


バカ!コイツ!マジか!


シイナはその呟きが聞こえたようだ。

表情がゆっくりと崩れていく。

クラマーがフォローに、ノエルが説教の姿勢に入る。

だがそれよりも早くシイナは駆け出してしまった。


「シイナ!待って!」


クラマーの叫びが雨にかき消される

危険だ。雨を避け森に入るのは決して人間だけの習性じゃないはずだ。

ココは1階層だから昨日のような大型モンスターはいない。

それでもシイナが単独で勝てる相手は居ないのだ。


シイナの背を追いながらそんな事を考える。

雨で全てのニオイがかき消されている。

見失ったら一巻のおしまいだろう。

雨で足場の緩くなった森の中を全力で駆け抜ける。


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