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彼らの登らない古塔生活  作者: うめつきおちゃ
新たな日々の階段を
19/50

実力差

カルレスの全身を使ったハンドサインを受け取ったローガンたちはものすごく早かった。


サインについて聞いていないので何が何体いるのか一切わからない。

俺の事など忘れたかのように三者三様の方向に駆け出す。


エドガワは魔法石を取り出すと何か唱える。

足元の地面が雪を掻き分け盛り上がり波のように蠢き彼女を素早く運んでいった。


ローガンとジェイは完全に力技で駆け抜ける。

そうやって踏み締められた道を追従する。

ジェイの姿は割とすぐに見失った。

速すぎる。


ローガンについて行く途中で血の匂いが漂ってきた。


「ローガン、血だ。血の匂いがするぞ。」


「なーにーっー?アイツら俺抜きで始めやがったな!」

ローガンが加速する。


血の匂いの元にたどり着いた時には殆ど終わっていた。

血だらけの白い毛むくじゃらのナニカが4体倒れ込んでいた。

どうやったらこんな風になるんだ。

地面のあちこちが隆起している、さっきエドガワが使用していた魔法か。


「くそー終わってんじゃねーか!」


ローガンが吠える、血の匂いに混じって何か不思議な匂いがしたのでそちらに目をやると降った所を四足歩行で逃げて行くナニカを見つけた。


「ローガン、アイツはいいのか。」


と声をかけると言い終わる前にローガンは飛び出して行った。


「よく気づいたね、僕には聴こえなかったよ。」


と毛むくじゃらのナニカを解体中のカルレスが声をかけてきたので作業を手伝う。


「音じゃないでしょ、君の特性。」


言いたいことはなんとなくわかった。

よく見るとカルレスは髪を縛っている。

耳がとても大きい、こちらがそれを見ている事に気づくと手に血がついたまま髪の毛を掻き下ろした。

コンプレックスなのかもしれない、悪いことをしたな。とバツの悪い顔をする。


「カルレスはなー耳がめっちゃええねんてー」


別の個体を解体中のエドガワが大きな声でこちらに語りかける。


「自分は鼻です、嗅覚が多少良いみたいで。そんな特性なんて程のもんじゃないと思うんすけど。」


聞いてしまったのでコチラも教えると「どんなモノでも特性は特性だ。」とジェイが言った。


「芸は身を助けるって言うからね。」

カルレスが親近感のようなものを感じたのかこちらになんとも言えない視線を送ってくる。


そっすかね。


「そういや、このモンスターの名前ってなんなんすか?」


「マナティだ。」


「いやそれ海のヤツやん!!イエティやろ、テキトー言い過ぎやろ。」


ジェイのボケにエドガワがツッコむ。


いやボケじゃなさそうだ!

クールな殺し屋にしか見えないジェイが耳で真っ赤にして俯き震えている。

エドガワはそれをみて指さして笑ってる。

俺は顔を逸らし口を押さえて笑いを堪える。


「よっしゃ大量だしもういいか、帰るか。」


帰ってきたローガンは片手に大きな魔法石を持っていたがそれ以上に鮮血に染まるその出立ちに驚愕した。


特に怪我した様子もないし、全部返り血だろう。

いやどうやったらそんな血が出るような攻撃できるのか想像もつかない。


ほんの数時間で分かったことは、今現在比べることすら難しいほどレベル差があると言うことだった。

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