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彼らの登らない古塔生活  作者: うめつきおちゃ
新たな日々の階段を
18/50

私を雪山に連れてって

宿を出て小道を抜ける、ローガンは見えない。

大通りに出ると遠くにその後ろ姿が見えたので駆け寄る。

はぁはぁ‥追いついた。


「あれ?お前なんでそんな息切れてんだ?」


ローガンは俺が遅れてることに気づいていなかったららしい。


「荷物、取りに行くくらい、待てよ。」


息を整えながら文句を言うと、気づかんかったわガハハハっ!と笑いながら歩を進める。

前途多難だ。


広場に着くと銀貨を数枚渡されたので訝しむと、コレで自分用の携帯食と水買ってこい、と言われた。


今の俺にとってこれは大金だ、デカいのは身体と態度だけじゃなかったのか。と感心していると


「あとそうだ防寒具も買えよ、向こうは無茶苦茶に寒いから。」


え?寒いの?

ここはこんな暑いのに?

「石碑んとこで待ってるわ。」


そういうとサッサと歩き出した。

急いで防寒具を売ってる店を探す。

相変わらずここは乱雑でどこに何が売ってるか分かりにくい、と困っていると男に声をかけらる。

その男は何度か見たことのある顔をしていた。


「ようルーキー!なんか探してんのか、聞いてくれたら手伝えると思うぜ。」


揉手をしながらコチラを覗ってくる。

仲介料が目当てなのを隠す気がなさそうだ。


「あれ?もしかして俺が誰かわかってない?」


驚いたような表情を浮かべる。

いや見覚えはある気がしないこともないんだけど。

あまりこちらがピンときてないのを察したのか

「隣の家に住んでるだろ!」とツッコミを入れてきた。

そうか、見覚えがあるはずだ。

何度か家の周りで会ったことがある。気がする



「はぁ‥まぁいいよ、で何を探してんだ。」


呆れ顔から立ち直り商売人の顔に戻る。


「ずいぶんと寒い所に行かなきゃならんらしいので防寒具を探してるんだ。」


と伝えると


「防寒具か…防寒具?そんなもん必要ねーだろ。もし必要としてんならソイツはローガンのところのパーティか[鉄鉱夫部隊]の変わりモンたちぐらいだろ。」


と言われた。

そのローガンのとこに呼ばれたんだよと伝えると「え?お前さん凄いやつなのか。」と目を見開いく。


「いや、ルーキーなのは知ってるだろ。きっとローガンのお遊びだろ。」


「あー、そうか?そういうことするタイプにゃ見えないけどな。」


そう言うやいなや何処かへ行った。

ここで待ってればいいのだろうか、なんて考えながら手持ち無沙汰になり周りを物色しているとすぐに何かを持って帰ってきた。


「鬼ウサギの毛皮から作ったコートだ。これならローガンたちの行くような雪山でも問題ない逸品だぜ。」


くすんだ白色のコートを広げて見せてくれた。

大きさもちょうど良さそうだしコレにする。


「他に必要なもんはないのか?」


携帯食料と水も欲しい。と告げると近くにいた商人に声をかけて持ってきてくれた。


「全部で銀貨4枚ってところだな。」


思った以上に安い。

絶対ふっかけられるのかと思ってたから気が抜けた。

ローガンのパーティにはみんな昔からお世話になってるから、とのことだ。


「ありがとう隣のおっさん。助かったよ。」


と告げ支払いを済ませると塔の入り口へ向かう。

おっさんは自分の名前を叫ぶが人混みの喧騒で聞こえない。

そのうち機会があったら家の方に訪ねてみる事にしよう。


塔の入り口へ行くとすでにローガンとその仲間たちが待っていたので駆け寄る。


「お待たせしました。」


ローガン以外のメンツに頭を下げる。

下げた頭を覗き込む若い女性と目があった。


「イェーイ!!ウチはエドガワ!よろしくメカドック!目!」


やべー奴だ。

出会って1秒で察した。

可愛らしい表面に騙される間もなく全てを理解した。


「ひさしぶりだね、覚えてる?僕は覚えてるよ、君のこと。」

痩せ型で髪の長い不気味な雰囲気の男がイェーイ!と言いながらピースサインをしている女性の後ろから声をかけてくる。


「どうも、[アキラ]のアヤトです。今日はお世話になります。」


挨拶をする。


「いやーん!無視せんといてー。」


嘘泣きをするエドガワ。

エドガワって確か朝聞いた名前だな。


「エドガワさんってウチのパーティのノエルと知り合いだったりします?」


「ノエルちゃんなー知ってんでーー」


クルクル回りながら石碑の方へ行くのでついて行く。


「まぁとりあえず話は向こう行ってからにしろ。」


スキンヘッドの男が無表情でそう言った。


赤毛の髭面、金髪のギャル、ロン毛の痩身、スキンヘッドのマッチョ。

ウチのパーティと違ってキャラが濃すぎる。

石碑に手を当てるとローガンが


「28階層」


と言い爆音と振動に包まれる。

目の前が真っ白だ。

信じられないくらい寒い。

急いでコートを羽織る。


「どーだ!スゲーだろ。」


目の前に広がる景色の全てが純白だ。

自分以外のメンツは見慣れた景色なのだろう、普通にスタスタ歩いている。

いやよく見るとズボズボ雪に足を取られながら歩いていた。


「雪山用の靴作ってくれる奴誰かしらねぇか。」


ローガンが誰に向けてでもなくそう言った。


「たぶん、ジェフリーのとこならどうにか、してくれそう。」


髪の長い男が答える。

よく考えたらこの人とスキンヘッドの人の名前わかんねぇや。

今聞くのがいいだろう。

遅くなると気まずくなるし。

と思い声をかけようとした時、


「先に行く。」


と言い残し髪の長い男は前方へ、まるでここが見知った舗装路のように駆けていく。


「早いでしょ!ビューン!ビューン!カルレスはスカウトだからいっつも先に行って敵を発見してくれるんだー。」


モコモコの防寒具を着たエドガワが教えてくれた。

カルレスって言うのか。


「その、申し訳ないんすけど、そっちの方の名前って教えてもらえます?」


スキンヘッドの男に尋ねると「ジェイ」とだけ返ってきた。

カルレスとジェイか。

ようやく全員の名前がわかった。

しかし今これはどこに向かって歩いているんだ。

低階層の高原地帯は遠くまで見渡せるしランドマーク代わりになるような自然物がいくつかあったから困るようなことはなかったがココは違う。

後ろを振り向くと足跡がすでに少し消えていた。

ローガンが先頭を行く、果たしてこれは何か目的地があるのか。

なかったとして、返って来れるのか。


白い景色と裏腹に黒い感情が頭の中で大きくなりつつある。

買ったばかりのコートが馴染まず動きにくい。


遠くで何かが動く。

あっ!カルレスやー。

エドガワにはソレが誰かわかるらしい。


「敵を見つけたようだな。」


ジェイが呟く。

身体の動きで信号を送っているらしい。

これならウチのパーティでもすぐに真似できそうだ。


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