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彼らの登らない古塔生活  作者: うめつきおちゃ
新たな日々の階段を
16/50

朝食/朝メシ

今日の朝食はバゲットと高原トマトのペーストだった。

自分がこのパーティに加入直後、ゴブリン4体と接敵しそのうち3体を討ち倒した。

その報酬は我々のような新米パーティにはありがたいほど多かった。

しかし人は生きてるだけで金がかかるのである。


多少、装備の新調したのもあるが、ほんの数日でその報酬を使い果たし、後は日々の生活のために日銭を稼ぐ自転車操業だ。



そんなおり、昨日いつも通り高原を散策中に単独で徘徊するゴブリンを発見できた。

誰かの日頃の行いが良かったからだとノエルは言っていた。


ゴブリンとの戦闘は初日以来だったが5対1だったので何も特筆することがないほどすんなりと終わった。

前回と違うのはノエルの短剣が安価な初心者用のモノから中級者クラスのモノに変わったことだった。


それにより前回は諦めていたゴブリンの骨角を剥ぎ取ることができた。

細かい話は聞いてないけどどうやら割と高値で売れるらしい。

なので今日は休みだ。


「昨日も言ったけど僕は昨日手に入れたゴブリンの素材と、魔法石をいつものお店に買い取ってもらいに行こうと思うけど、誰か一緒に行く?」


クラマーが尋ねるとシイナが小さく手を挙げた。

ノツダは「パス。」とだけ言ってキッチンから勝手に干し肉を探し出して食べている。


「ノエルとアヤトはどう?」


と言われても、買取屋か‥別に面白い場所じゃないんだよな。

待ってる間にすることもない、かといってすることも、特にないんだけど。


「私はエドガワさんの所に行こうかな。」


ノエルが呟く。

エドガワさん、初めて聞く名前だ。


「エドガワさんはローガンのパーティメンバーだよ。料理が上手で色々教えてくれるんだよ。」


こっちの意図を汲み取ってくれたのか、ノエルと目が合うと教えてくれた。

続けて


「ローガンのパーティは人数が多くて日替わりでメンバーを変えてるんだよね。」


そんなのありなのか。

パーティの上限は5人だと思ってた。

よく思い出したら確かに5人以上のメンツで集まってる人たちが視界の端にいた気がしてきた。


「そもそもパーティが5人なのは塔の入り口が5人以上だと反応しないからなんだよね。」


とクラマーが補足してくれた。

塔は入り口と向こう側はイコールではない。

石碑に触れて階層を指定することはできるが向こう側のどこに出るかは行くまでわからない。


一度だけ上層階への階段を見かけたがあの階段も実際に登るためのものでなく入り口の石碑と同じで触って起動するものとクラマーが言っていた。


階層を登ると難易度や環境が劇的に変化する、というものでもないらしい。

少なくとも5階層までは1階層と同じような高原が続くそうだ。

単純に手に入る素材や出会うモンスターが同じならわざわざ階段を探し出して登る必要もないわけだ。

そういうのは攻略班を名乗ってる奴らに任せればいい。

攻略班で思い出したが前にローガンにこのまま上層階もただの高原地帯なのかと聞いたことがあったが


「自分の目で確かめた方が楽しいぜ。」

とはぐらかされた。


石碑から飛べる階層には何らかの条件があるらしく、我々が現在飛べるのは1階層と5階層の2ヶ所だけ。


まだゴブリンにすら複数相手取った時苦戦する自分たちには荷が勝つだろう。


現状に満足していないわけではないが、かと言って今のまま変わりたくないと思う事もない。

向上心のようなものは一応あるのだ。


「どうした黙り込んで、腹でも痛いのか。」


ノエルが覗き込んでくる。


「アヤトが暗いのはいつもの事だろ。」


ノツダが遠くから茶化してくる。

ただ考え事をしていただけのつもりが、いつの間にか暗いやつという烙印を押されていたらしい。


「ノツダに比べれば誰だって暗いだろうよ。」


と言うとノツダは満足そうな顔を浮かべた。


バカにするわけじゃないんだけど君ちょっとホントいつか詐欺とか引っかかって大損こきそうだから気をつけてね。ホントに。


ドンド!ガチャッ


ノックとドアを開ける音が同時にした。



ーー髭面で赤毛の大男が返事も待たずに入ってきた。

ローガンだ。


「うおーい!邪魔するぜぇ。」


邪魔するなら帰ってくれ。

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