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彼らの登らない古塔生活  作者: うめつきおちゃ
そびえる塔、群がる人たち
13/50

エピローグ

「初級の魔法石2つに中級が1つ、ゴブリンの鋭爪が5つ!過去最高の戦果だな!」


寝床へ帰ると満足げにノツダが吠える。


「いいからまず手洗いうがい!クラマー、シャワーは私ら女性陣が先でいいんだよね」


とノエルが聞くと「どうぞー」とクラマーが軽く答える。


泥だらけ汗だらけ血だらけなのでこちらも早く落としたいが仕方ない。


「僕たちは外でも平気だよね」とクラマーが笑顔でコチラに言ってきた。


そうか?シャワー室の方が俺は嬉しいが、と言いかけるがやめておいた。


ノツダがクラマーのカバンから水を貯めてある魔法石を取り出して木のバケツに水を入れていく。


(これで洗うのか…。)


「とりあえずね、汗とか汚れ早く落としたいでしょ。」


と和かに言うクラマー。


(コイツさっきからずっとこんな感じだな。

よほど嬉しかったんだろう。)



初級とはいえ最後に戦ったゴブリンから「風属性の魔法石」とやらが手に入ったことが嬉しかった様子だ。


男たち3人で身体の汚れを落としているとノツダが


「明日は素材売りに行くから塔は休みでいいよな!な!」と話しかけてきた。


「俺じゃなくてクラマーに聞けよ。」


「そうだね。明日は素材を売ったり食材の買い出しに行ったりして英気を養おうか。」とクラマー。


えいき?とノツダは固まったので無視する。


「あー、俺さ、あのナイフ微妙だったかも。」1日を通した感想を告げる。


「あっ確かに最後ナイフなしで戦ってたよね。」


「うん、多分だけど、もっとリーチがなくて、インファイトって言えばいいのかな、そっち向きの方が性に合ってる気がした。」


「じゃーさー、なんかグローブから爪生えてるやつとかいいんじゃね?!」


「戦闘時以外が邪魔すぎんだろ。」


たしかに!と言いながらノツダが洗い終わった身体をブルブル震わせている。


え?もしかして身体拭くもんとかないのこの世界?と驚くと麻のようなもので出来たタオルをクラマーがくれた。

できる男よのぅ。


「でも、僕たちはあくまで素材や食料になるものを探索するのが仕事で、討伐組や攻略班みたいな装備は必要ないんじゃないかな。」


とクラマーが少しテンションを下げて言った。


(本当に戦うのが嫌なんだな。)


自分の振った話題でこうなると少しクるものがあるな。




着替えを済ませて3人で夕食の準備を始める、女性陣のシャワーが終わったので夕食の準備は交代してもらい俺とクラマーはシャワーを浴びに行く。


ノツダはもう大丈夫!綺麗になったし!とか叫んでノエルに怒られ遅れてきた。





シャワーから出ると夕飯が出来上がっていたので全員で卓に着く。


まだまだわからない事が多いし、多分この先もわからないままなんだろうけど、この4人に出会えて受け入れられたのは幸いだった。


「これなんだっけ、なんとかーじゃ!これ美味いなぁ」「トルティージャ」「あれそんな名前だっけ?」


ノツダとノエルがまたなんか言ってクラマーとシエルが笑ってる。

なんかいいな、家族みたいだ。


本当の家族については何も思い出せないけど。


それでも空虚じゃない、寂しくないといえば嘘だけど昨日ほどはそんな事感じなくなっていた。


そう言えば広場にいた人たちも大通りですれ違った人も皆んな暗そうな顔をしてなかった気がする。


皆んなここで居場所を見つけたのかな。


(いつか俺もこんな風になれるのかな。)


今はまだ知らないことが多すぎて考えることが多すぎる。

まぁまだ初日、と言うか、2日目か、これからだな。


食事を終えたあともなんとなく部屋に戻らず全員で今日の話に花を咲かしていると


「でもほんと、みんな無事帰って来れてよかったよ。」


クラマーのそんな言葉にシイナは無言で何度も頷くがその目は眠たそうだったので解散となった。


部屋に戻るとクラマーがついてきてた。


「入っていい?」


まだ何か話したいのか、断る理由もないので招き入れる。


「今日はありがとね。」さっきまでと違い真剣だ。


「いや、こっちのセリフだよ。クラマーや他のみんなのお陰で助かったし。」


「でも多分、アヤトは他のパーティに行った方がいいと思うんだ。」



え?クビ宣言?独断専行が多過ぎた?

それとも空気を壊す発言が多い事?

たった1日なのに思い当たることが多すぎる。


「あっ勘違いしないでね、別にいてほしくないとかじゃなくてさ。」と慌てるクラマーに


「理由は他にあるって事?」と尋ねる。


「今日1人で戦ってたでしょ?」


あーやっぱそれか…「いやーそれは…」


「1人でアレだけ戦えるならもっと好戦的な、例えば討伐部隊とか、そういうパーティに入った方がアヤト本人のためだと思うんだ。」


…? 

あーー…そっちか…なるほど。



「一応多くはないけどそれらしい人たちの紹介もできるよ。そういうところの方が装備とか施設も充実してるし、師匠っていうほど大仰じゃなくてもロールモデルになる人が近くにいた方が効率よく強くなるだろうし。」


「いや、そんな畳み掛けられるとすげー気遣って追い出される感出ちゃうじゃん。」


思わずツッコんでしまった。


クラマーは少し驚いた後笑い出す

「確かにそうだね、今のナシにしよう!凄い良くなかったね。」破顔一笑、何がこんなにツボに入ったのかお腹を抱えて笑う姿にコチラは引いてしまった。


「ーーっふー、ふふ、あー笑った。」ようやく落ち着いたようだ。


「楽しそうでよかったよ。」


ガンガンッ!

雑なノックと共にノツダが入ってきた。

「なにやってんの?!俺も混ぜろよ!」


ほんとにコイツは最初に紹介されたとおりだな。


「アヤトにね、これからもずっと我々アキラの仲間として宜しくねって話をしてたんだよ。」

とクラマーがノツダに説明する。


あっそう言えばなんでパーティの名前がアキラだなんて人名っぽいのか聞いてなかった。

まぁ今聞くことでもないか。


んだよつまんねーっ!だったらトレーニングしてる方が良いや。

と吐き捨ててノツダが部屋に帰っていった。

クラマーも今の話、良かったら忘れて。と言って部屋に戻った。


もしかしたらもっと合うところがあるのかもしれないけど、今の自分が幸せに過ごせる場所は多分ここなんだろう。

記憶はないけど、ない分どうせなら楽しい思い出を今から作りたい。

そんなことを考えて寝床につく。



今度会ったらローガンに気のいい奴らとこの硬いベッドを紹介してもらったことを感謝しないとな。




そして夜が更けて、また日が昇るのだ。

本当に生まれて初めて小説?というものを書きました。

高卒の自分は論文とかいうものすら書いた方がありませので、至らぬところしかないのは重々承知の上ですが恥を忍んで表に出してみました。


もしもこの文を読んでくださっている方がいらっしゃるのなら本当にありがとうございます。



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