第五十二話「食後のデザート」
二人は食事を進め、とうとうデザートまで来た。
(これもデカいな)
ソースがかけられた、フルーツやフレーク、
アイスクリームにホイップクリーム、
それらがカラフルに混ざり合ったパフェ。
(食後に出てくるには、デカい。
おやつ時に、デザート単品で頼むサイズだなこれ)
そんなことを思う彼だが、
今や彼も規格外の魔力消費をするようになった。
全く重さも息苦しさもなく
パフェの甘味が喉を通り過ぎていく。
(でも、食べられる・・・なんか変な感じだ
全然苦しくならない。それに・・・・うまいなあ)
思えば、彼はここまで甘いものを味わったことが少なかった。
実家の料理は別の意味で味がしなかったようだし、
そこ以外でこんなものを食べる機会はなかった。
(美味しい)
少し顔がほころび、
パフェを口に運ぶ手が止まらないルーカス。
美味しそうにパフェをほおばる
そんな彼の姿を見て
テオが少し笑った。
「・・・・なんだよ」
それに気づいたルーカスが不満げに
そう口を開く。
「悪い悪い、
アンタも案外普通だなって思っただけだ。
そんなにうまそうに食ってくれるなら
呼んだ甲斐があったよ。」
その不平不満を聞いて、
小さい子供でも相手にするように
テオは、優しい笑みを浮かべる
これまでルーカスが見て来た
彼とはまた違う顔を見せてきた。
「・・・・・・あんたも案外普通だな」
ルーカスがそんな彼を見て思ったのはそんなことだった。
この世界の普通、
いや、普通ではないかもしれないが、
この世界でただ恵まれた男。
ただ単純にそういう風に生まれ、
彼もそうやって生きて来ただけのある意味、普通の人。
「なんだよ、俺が普通じゃなく見えてたのか?」
「ああ」
「え、えらく、はっきり言うな・・・」
彼は犯罪者で、聞いた話では隕石すら破壊するらしい、
空に見えたあの光線がテオのものだとサラに聞いた時は
さすがに度肝を抜かれた。
だが、人であることには変わりない。
この世界で生きていることには変わりない。
ルーカスもそれに変わりはないのだが、
自身に前世の記憶がある分、
本当の意味でこの世界の人間ではないような
そんな思い込みを患っていた。
そんな中会った、不思議で変な存在である彼。
化け物になった彼を
仲間に引き入れて来た得体のしれない人物。
そんな彼を見るたびに
ルーカスは勝手にも、
(コイツは特別な人なのではないか)
と勘違いをしてしまっていたのだ。
(もう酒飲んで酔って、
ちょっと上機嫌になってる若い兄ちゃんにしか
見えなくなってきた)
「魔王みたいな奴だと思ってたよ」
それが彼の単純なテオへの感想だった。
転生者ではなくとも、そういう特別な何か
曰くのある人物であると。
しかし、その発言は軽率すぎだったらしい。
「魔王? なんだそれ?」
テオがそう聞いてくる。
「・・・・・あ」
ルーカスが自身の失態に気づくには
少しだけ時間がかかった。
「???」
(うわ、本当に知らなそうな顔してやがる)
心底不思議そうな、純粋な疑問
頭の上に疑問符が浮き出てきそうな顔で
彼は首を傾げた。
「魔王?
・・・・・魔術の王?魔法の王?
魔導の王?魔獣の王?
・・・・・・んん?
昔にそんなあだ名の付いた王居たっけ・・・・」
酔った頭を動かして、考え込み始めるテオは、
「赤王、大王、インポ王、
巨王、勇敢王、色食王、ハゲ・・・・」
自ら疑問を深め、
顔を上にあげて、顎に手を置いて、
この世界で有名な歴史上の人物を上げていく。
「魔王・・・・・・そんなのいたか?
酒が入っててうまく思い出せそうにねえ」
だが、思いつかなかったようだ。
不運にもここでは魔王なんて二つ名のある
王様はいなかったらしい。
(どうする?・・・・・魔王ってどう説明するんだ?
なんか、全体的に黒くて、強そうで、それっぽい雰囲気してるから
そう思っただけなんだが・・・・・)
特に深い意味はない。
つまりはそういうことだ。
ルーカスがそうなんとなくイメージしていただけ。
しかし、テオからすれば
突然、自分の知らない何かに例えらたわけで、
「で、誰なんだ?それ」
興味深々と言った感じで
彼の様子を伺って来る。
「・・・・えっと、物語だよ」
嘘ではない。
というよりも
何の誤魔化しも思いつかなかった
ルーカスの口から出たのはそれだった。
「物語?へえ・・・・・あ、あれか!?
へ、でも・・・」
また考え込んでいたテオは
そう言われた瞬間、
急に顔色を変え、驚いた様子でルーカスを見た。
「・・・・ジジイって、そんな本出してたっけ?」
突如、ルーカスにとって
意味の分からないことを言って来る。
「誰だよジジイって」
「ああ、すまん、俺のじいちゃんなんだ。
ノーランドって言うんだけど」
「知らんな」
「じゃあ、違うのか
まあ、そもそも、あれはジジイの机にあった奴だし、
出版ようって感じじゃなかったな」
何やらノーランドという
おじいさんの秘密が開かされてしまったようだが、
ルーカスにとっては何のことだかさっぱりわからない。
「いや、俺も労働員時代に暇すぎて
ちらっと読んだだけだからあんまり詳しくは知らん」
ここでようやっといつもの
誤魔化しが戻ってきて、
ルーカスはテオを言いくるめることができた。
「へえ、アレにも元ネタがあるってことか・・・」
「その爺さんがどうしたんだ?」
「いや、ウチのジジイが机にしまってたノートに
そんな物語が書いてあった気がするんだ・・・」
(どういうジジイだ?まさか・・・・)
とても重要そうなことを言っているような気がして
色々考えたいルーカスだったが、
「で?その魔王ってのはどんなやつなんだ?」
テオのその問いで
そちらへ対応せざるを得なくなってしまった。
「ええとなあ・・・」
出所は誤魔化せたが
テオの魔王への興味は尽きないらしい。
いったんおじいさんの事は忘れて、
(どういう・・・やつ?
ええっと)
自分の中にある魔王のイメージをかき集める。
(魔族の王?
何だ魔族って、ここに魔族なんていないし、
魔獣の王って言っても通じなさそうだし・・・・)
湧き上がる前世的で、
現世的でないイメージを払いのけ、
かき集めて、何とか絞り出していった答えは
「世界征服を目指してて、
全体的に黒っぽい悪者の統領?」
というものだった。
「えらく、あやふやと言うか抽象的だな」
「悪い、あんまり覚えてないんだ。
ただそういうイメージってだけで」
「ほ~ん。で、俺が近いって?」
「ああ」
「んん、まあ、確かに征服はしてないが
国をひっくり返そうとはしてるし・・・
黒は俺も好きだな。
後は統領?
まあ、一応率いてる立場ではあるか。
悪者って言いたくはないが、
政府から見れば俺は大悪党だしな・・・」
勝手に自分と連想を繰り返し、
「ハハハ!!
確かに、俺はその魔王ってやつみたいだ!
魔王か・・・魔王な
いいなそれ」
酔っ払いはそれを気に入ってくれたようだ。
「お、おう、
一応、悪役なんだけどな、そいつ。」
ルーカスがそう言っても
「いいじゃねえか悪役でも。
俺はあんまり正道を歩いてこなかったし、
むしろそれが相応しいのかもな」
テオは何だか誇らしげに笑っている。
「ま、まあ、気に入ってくれたならよかった」
(なんか無駄に冷や冷やしたな)
いったん、満足した様子の彼の更なる追及を
逃れるため、ルーカスはパフェを少し急いで
食べきる。
「俺のも食うか?」
が、がっついたと
思われて逆にテオにそう言われてしまった。
「いや、いい」
そう断るが、
「別に遠慮しなくていいぞ」
その言葉で、
「・・・・・じゃあ」
本末転倒な話ではあるが、
それを受け入れてしまった。
ルーカスにとってその申し出は少し断りづらかったのだ。
テオの魔法で浮かされたパフェを受け取り、
ルーカスは少し遠慮がちに頭を下げながら、食べ始める。
「・・・・・・」
(何だその生温かな視線は!!)
心の中でそう叫びながら
パフェを食べるルーカス。
そんな奇妙な時間が続き
ルーカスがパフェを食べ終わると、
テオが口を開いた。
「俺はもうちょいここにいるが
アンタはどうする?」
「帰るよ」
「そうか、じゃあ
次からもよろしく頼むぜ
アイツらにもそう伝えといてくれ」
テオの自然な優しい笑顔に見送られ、
ルーカスはレストランを後にした。
「・・・・美味かったな」
そう呟きながら
街道を歩き、彼はある方へと帰っていく。
ここで彼とサラに与えられた宿舎、
町の隅にある建物の間に
溶け込んでいる普通の四階建ての建物。
そこの階段を上がり、
二階のある部屋に入る。
「結構広・・・」
彼の与えられたアパートの空き部屋、
その一室に入ろうとすると
中に気配を感じた。
「・・・サラか?」
その気配を頼りに
部屋の奥へと入り、
寝室の方へ行くと、
そこには
ぼんやりとした目でルーカスを見つめる
サラの姿があった。
載せたくなったので、現在の年齢置いておきますね。
テオ:28歳 ルーカス:18歳 サラ:25歳 リリー:28歳




