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evil tale  作者: 明間アキラ
第四章 「戦争」 ークリ平原の戦い編ー
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第四十二話「天災」

サラは部屋で自分と同じぐらいの大きさの黒い長方形の

箱に様々なものを詰め、背中に背負うと

「行きましょう」

そうルーカスに声をかけた。


「・・・ああ」


彼女に連れられ、

慌ただしく動き回る兵士たちの横を通り抜けるルーカス。


「こっちだ、こっち」

「全員揃ってるか?!」


そんな声が飛び交い、忙しなく物資を箱に詰めたり、

運んだり、整列している兵士たちの横を通り過ぎていき、


「・・・・忙しそうだな」

「ええ、でも、私たちも忙しいっすよ」


列車へと乗り込んだ。


周りはコートの兵士たちや騎士ばかりで

全員が何かしらの武装をしている。


そんな物騒な乗客を乗せた列車に揺られること数十分。


第一地区の最西端の駅、ウェスタンボードに着いた。


笛の音がなり、

「サウスボード」

という看板が見え、二人は降りる。


都市と言うには管理の行き届いていない場所

その駅を出ると住宅街のはるか先、

そこで大きな壁があった。


「あの壁の向こうに行きます」


そう言うサラについて行き、

歩いて壁の近くまでくると、

その大きさに圧倒される。


(三十メートルくらいはあるか?)


上には厚着のコートを着た兵士や鎧を着た騎士たちもいて

ここでも銃器を運び、設置したり、

整列して、説明を受けていたりと様々だ。


封鎖された線路の横を歩き、

城門のような場所に着くとサラが門番に声をかける。


サラの顔を見ただけで何も言わずに通された

二人はその外へ出る。


そこには

壁の周りに深く掘られた堀の上に屈強な大橋が架かり、

その堀は都市の向こう側まで続いている。


その堀の周辺には綺麗になにもなく、

横にして何十mになるかもしれない線路の上には当然、何もない。


しかし、それ以外は青々とした森林が生い茂っていた。

屈強で、十数メートルはあるだろう、木々が生えそろい、

その中には光すらあまり入らず、薄暗い。

そんな景色が辺り一面に広がっている。


「じゃあ、行きますよ」

そう言ってサラはその大きな線路が幾本も通った橋を歩いていく。

「・・・ああ」

ルーカスのその後ろへついて行った。


橋を渡り、自然へと足を踏み入れる。

木々に隠れて遠目からでは目立たない背の低い草木を踏みならし、

かき分けながら進んでいく二人。


「・・・どこへ行くのか聞いてもいいか?」

「実を言うと、そこまで綿密な目的地があるわけじゃないです。」

「どういうことだ?」


互いに前だけを向いて

顔は見ないまま、二人は歩を進めながら

話し合う。


「敵が来るであろう大体の方向と位置は知らされましたが

実際、正確なのは今のところわからないんすよ。

なので、私たちが今からそれを探すんです。」


「わかるのか?」

「リリーに超感覚習ってませんでした?

アレがあったら」

「悪いが、あんまりだった。」

「まあ、そっちに関しては任してくださいよ。

私、あれだけは得意なんで」

「俺は何すればいい?」


「ついてきて、私を守ってください。

戦力のルーカスさん、索敵の私です。

なので、ルーカスさんは敵襲に備えて、

周りの警戒を。私は超感覚であたりを探るので、

あんまり大きな声は出さないほしいっす」


そこから二人は意識を研ぎ澄ませ

森の中を歩いていく。


サラは確かな足取りへ一定の方向へどんどんと歩く。

ルーカスは大きな木の枝に飛び乗ったり、高い場所と地面を猿のように行き来しながら

辺りを目で確認していた。


(目もよくなったな、ずいぶん遠くまではっきり見える。

だけど気配だけはわかんないな。

あの方法もビビる感覚が薄まり過ぎてあんまり効果なかったし)


サラは彼の遥か下の地面で目をつぶりながら、

目にすら見えない遥か先までを把握していった。


(いない、いない、いない

もう数キロはもぐってますけど、相手の斥候の気配すらないっす。

地形の把握は地図とかで済ましたんでしょうか、じゃあいったんここらで報告しましょうか)


彼女はトランシーバーを取り出し、テオに呼びかける。


「東南東6㎞敵影なし」

「周辺を探れ」

「了解」


(過剰感覚)

彼女の感覚が研ぎ澄まされ、

本来人が感じてはいけない領域までの情報が彼女へと流れる。


風が痛い。植物は抵抗で押しのけているが

ナイフでも突きたてられているように感じてくる。


(・・・・・いない。)


おかしい全くいない。

それは彼女の中で違和感となる。

普通、魔獣の一匹、人の一人ぐらい

居てもおかしくない。いや、いなければおかしいのだ。


この周辺にも、郷土愛ゆえに壁の中へ入らず、ハンターや騎士へ

警護依頼するような集団もいる。


そことここはあまり遠くない、それにカティア騎士団が大所帯で押しかけている

という情報が確かなら、ここまで来て、彼女の探知に引っ掛からないわけがない。


(ここから20km先まで、誰がいるかはわからないにしても

いるかいないかぐらいはわかるはず・・・・なのにいないっす。

まだ、行軍が遅れてるんすか?

だったらもっと奥までいかないといけないっすね)


そう思い、

「周辺半径20km、敵影」

なし

と報告しようとしたその時、


彼女の探知範囲の端の端、その末端に一つだけ、気配があった。

しかし、横にいる植物よりも、小さな虫のような魔獣たちよりも

その気配は、魔力は、存在感は、

圧倒的に大きく、膨大で、圧倒的であった。


それを認識した瞬間、サラが叫ぶ。

「ルーカスさん!!降りてきて!!」


その声を聴いてルーカスが彼女の元へ来ると

サラは彼の手を掴み、地面へと潜る。


まるで地面が彼らを迎え入れるかのように

二人分の空間を作っては閉じてを繰り返しながら

下へ下へと下った。


一方、その気配の主は、大きな黒の三角帽をかぶり、

ローブに、大きな宝石の付いた杖を持つ、

まさに魔女と言った風貌の少女だ。


黒色の髪は服装に溶け込み、

まだ幼くあどけのない顔と、少女と言わざるを得ない体格。


その少女は、

ローブが風に揺れる中、彼女にだけ重力は縛ることをやめたのか

自然に、空を漂っている。


そして、何かをぼそぼそと呟きながら

自分と同じぐらいの背丈はあるであろう

大きな宝石が先端に付いた杖を、頭上へ掲げていた。


「位置調整、角度、被害想定、威力、標的、確認。」


「星よ、降れ」


その幼げな声と共に杖が振り下ろされると同時、

空から轟音が響く。


ゴォォオ

という音が空から鳴ったかと思うと、

雲を通り抜けてきたのは

火を纏った大きな岩だ。


それがいくつも落ちて来た。


数個ではきかない、

数十個の隕石。


それが地面に落ち、凄まじい衝撃音を鳴らしながら、

森や地面を砕く。


ドゴォォオン

音がいたるところから聞こえ続け、

あちらこちらにあったはずの緑があっという間に

砕け散り、燃え尽きていた。


地中の深くにいる二人にもその音が届く。

「どうした?」

トランシーバーから

聞こえるノイズのかかったテオの呼びかけにサラは答える。


「アリアっす! アリアが来てます!」

「じゃあ、その音は」

「今、隕石を降らしてます!」

「なるほど」


(誰だアリアって)


何も知らないルーカスとは違い、二人はそのアリアについて話していた。


「見たのか?」

「いえ、探知範囲のギリギリ外から隕石を降らしてきました

こっちも気づかれたのかと」


「いや、それはない。

あいつは敵の探知とかをやるような奴じゃない。

多分、偶然か別の要因だ。

誰かがお前を超える探知をしたのか、

たまたまそこでアリアが星降らしをやったのか

判断のしようはない。」


「じゃあ、こちらが見つかっていないとして

なぜ攻撃を?」


焦った様子でテオにそう聞くサラ。


「整地してるんだろう」


テオは当然のようにそう答えた。


「整地?」

「あいつらにとって森が邪魔ってことだ。

そんだけ大所帯で来てるんだろう」


会話中も鳴りやまない轟音は森の木々を粉々に粉砕する。

残った場所には黒く焦げた植物だったもの、

えぐれて、はげた地面が残る。


その光景がどんどんと広がっていた。


「これサウスボードは大丈夫なんすか?!」

「小さい隕石程度じゃ都市の魔法壁は突破できないし、

それぐらいアイツも知ってる。

何度かやろうとしてたしな」


「そ、そんな」


「だからまあ、

多分、森が邪魔だったのと、アイツもやりたかったんだろ」


少し怯えた様子のサラに対して

ルーカスには怯えは全く見られない。

もちろん、テオの声にもいささかの恐怖は感じられなかった。


全くもって普通の事として

この事象を捉え、ありのままを受け入れている。


「・・・面白い奴だな」

「ああ、全くだよ」


ルーカスの感想にもテオは面白がって答えてくれる。


「超飛び級で学院に入ったはいいが、

月に触りたいとか言って

岩石と重力、天文学しかやらない奇人として有名だった。

卒業はしてたが、それ以外の授業も練習もやってんのは見たことないな。

結果こうなったのは良いのか悪いのか」


「顔見知りなのか?」

「いや、あいつが有名人ってだけだ。」


二人がそんな普通の調子で喋る中、

サラが割り込んで、話しだした。


「ほ、放っておいて大丈夫なんすか?」


「残念だが、お前に上空にいるアイツを撃ち落とせる可能性はほぼない。

逃げられるのがオチだし、隕石砕いても時間の無駄だ。

森ぐらい焼かしとけ。そのうち止むから

終わったら、もう一度探知した後、戻って報告だ。

いいな?」


「は、はい」

言い聞かせるように言葉を紡ぐテオの声を聴き、

そう返事をしてトランシーバーの音声を切るサラは


「る、ルーカスさんは大丈夫っすか?」

震える声で彼にそう呼びかけた。


「大丈夫だけど」

「そ、そうっすよね・・・」


何ともなさそうなルーカスに対して、

サラは少し、呆れたような、失望したような、悔しそうな

そんな顔をしながら彼から目をそらして、下を向く。



二人はそのまま土に包まれた空間で

上の轟音を聞き続けた。


それが止んでしばらくしてから

外へ出る。


外へ出て目に入ったのは燃えて、朽ちた木々とはげた地面だった。

火はどんどんと燃え広がり、あたり一面は火と煙で満ちている。


「抵抗は高めといてください

ガスとか吸っちゃうと死んじゃうので」


そう言って彼女はまた目をつぶり、

周りを確認する。


(敵・・・・来たっすね。)


「ルーカスさん戻りましょう。」

「もういいのか?」


「ええ」


二人は炎の中を走り、サウスボードに戻る。

その遥か後ろでは

地平線を覆い尽くすような銀色の大軍団が進軍していた。

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