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evil tale  作者: 明間アキラ
第三章 「順応」 ー第三地区編ー
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第三十一話「共闘:前編」

話しは少し前に遡る。

サラがさっそうと雪桜を助ける少し前、

ルーカスがアダムを煽り、殴り合いを始めた少し後、


この町のある家と家に挟まれて細い裏路地で

二人は会っていた。


いや、正確に言うならサラが雪桜に連れ去られていた。


彼女の下駄をカタカタをと鳴らしながら壁を飛びまわる

俊敏な動きで彼女は服を掴まれ、

ここに投げ入れられていた。


ドスンと音を立て、サラは抵抗できず、放り投げられて地面に落ちるが、


「ちっ!」

彼女はすぐに舌打ちをしながら銃を向け、引き金を引いた。


だが、雪桜には通じない。

体に当たると服を焦がすこともなく、火の玉が搔き消えていく。


そして、そのまま、雪桜は

「やめときや、ウチにそないなもん効かんで」

と余裕綽々といった顔で棒立ちのまま攻撃を受け続けていた。


それを見たサラは後ろを向いて必死に逃げようとしたが

すぐに先回りされてしまう。


サラの追い詰められた犬のような、敵意に満ち満ちている

目を見て、雪桜は口を開いた。


「待ちいや、ウチはあんたと戦いたいんやない」

その訴えを聞いてもサラは銃を向けたままだ。


「ウチがあんたを倒したいならもうとっくにやっとるわ。

それがわからんアンタやないやろ、サラはん?」


「・・・・・・・・」

不満げに銃を下すサラを見て、

彼女は安堵し、大きく息を吐いて、また話をつづけた。


「はぁ~、ほんま、普段と人格ちゃいすぎちゃう?

きっついわぁ」


彼女の顔から真剣な様子や敵意が薄まり、

随分と表情筋が活発になった。


「それで、なんすか?」

こちらはまだ表情も固く、ぶっきらぼうに返している。


「すっとぼけんのも、大概にしいや?

わかってなかったら、あんたはわざわざ本部抜け出して会長の家に走っとらんやろ

あんたの考えが正しっちゅうこっちゃ」


「・・・・だから、それでどうして欲しいんすか?」


サラのまだ敵意の抜けきらない声で彼女にそう尋ねる。


「追いかけて来ったことは形上、あんたらも協力してるように見せないとダメってことっすよね?

それがどうしたこんなことしてるんすか? 

ああ、その前に、ちゃんと言葉にして聞いてないっすから改めて聞いておきましょうか」


ジョージに紙をもらった時の違和感、

雪桜による追跡のやる気があるようでない感覚

『坊ちゃんによろしく』というメッセージの意味、

それを鑑みて、彼女はこう考えていた。


「あんたらの若、跡取りのお坊ちゃんがが人質ないしはそういう危機的状態にあって、

言うことを聞かざるを得ない。そういうことであってるんすか?」


「・・・・ああ、そういうことや」

そして、それは正しかったらしい。


「なるほど、味方は死んでも売らないあなた達でも、跡取り握られると従順なもんなんっすねえ」

「・・・面目ない」

皮肉るような彼女の言い回しを聞いても、雪桜は下を向いて謝ることしかできないらしい。


「それで、なんすか? 一緒におたくのお坊ちゃん助けてくれって頼みに来たんすか?」

雪桜はそれを聞いて、真剣な顔つきに戻る。


そして、

「その通りや」

膝を地面に着き、手を前において、

額を地に付け、


「頼む、ウチらの若を助けてくれ」

何の迷いもなく、敵意すらも捨て、

頭を地面にこすりつけ、サラにそう希った。


「・・・・・・・」

「虫がええのはわかっとる。

けど、頼む。この通りや。」


彼女に断る理由はない。

そのままうなずいてやってもいいし、なんなら彼女の方から言いたかったぐらいだ。

だから純粋に彼女は気になっていた。


「なんでそこまでするんすか」

「・・・そうせなあかんと思うから」


その答えを聞いて、彼女は雪桜を見つめた。

その姿をじっくりと見て、

「・・・・わかりました」


そこからは大方彼女の計画通りだった。

ダミー人形で気を引き、最大限注意を雪桜に向けた段階で狙撃、

念には念を入れたおかげでそれは成功した。


だが、彼女の誤算は、


(この化け物、他のより強いっすね)


彼女の目の前にいる女性型の黒い化け物。

かぎ爪の付いた、いやに長い両手

背中には二本のうごめく大蛇のような触手

脇腹には赤ん坊のような手と槍の先のような突起が一組ずつある


コイツが想像以上だったことだ。


目の前にたたずむソイツにはなった攻撃は何も効果を持たない

彼女が携えている大きな魔導銃を一発、体に当てたが貫通はできないらしい。


(爆発も効きませんでしたし、どうしたもんすかね)


そこへ化け物が脇腹にはえた槍を飛ばしてきた。

それをサラは大きく跳んで回避する。


軽やかに飛び上がり、

雪桜の近くに着地して、二人は化け物と向かい合った。


「アンタ、クラス3とちゃうかったん?

さっきとえらい身のこなしが違うみたいやけど」

「・・・・色々あるんすよ」


「まあ、ええわ、んで、あれ倒せる手立てはあんの?」

「ないっす」


態勢を崩し、大仰に反応する雪桜は

「ないんかい!」

と叫んだ。


「あったら最初からするにきまってるでしょ」

「お前、あんなアレしろコレしろ言うといて最後はこれか!」

「計算外のことはいつでもおきます」

「じゃあ、どうすんねんあれ!?」


淡々と話すサラと

感情的に話す雪桜


化け物はない首をかしげるように不思議そうに彼女らに体を向けている。

攻撃を何度もすかされたことで慎重になっているのか

それとも何か別の理由なのか

何なのかわからないが、化け物は動かない。


「態度のでかい人ですねえ

あの二人は本当にやりやすかったなあ」


「悪かったな」


サラは自分の腰に下げてある太ももくらいの大きさのナイフを手に取る。


余り金属らしさを感じさせない、光沢のないナイフ、

それを握りこむと刃の周りに青白い光が迸った。


そして、その瞬間、化け物が彼女らに攻撃を仕掛ける。

脇腹の槍を射出し、飛ばしてきた。

一本出るとまた同じような槍が再装填される。


それを何発も彼女らに向けて撃ってくるが、

彼女らには当たらない。


屋敷を取り囲む塀に当たり、

ひびが入って、崩れていく。


しかし、サラも雪桜も、横に走ってそれを避け、

化け物に近づき、切りかかった。


二人の刃が首に突き刺さるが、

当然、そんなもので化け物が怯むわけもなく、

そのまま触手が彼女らに向かう。


それを後ろに跳んで避けた。


サラはそのまま後ろに滑り、

雪桜はまた前に跳び出していった。


跳んでくる触手と槍を打ち払いながら、

刀を振るい、切りかかる。


「やあぁああ!!」


化け物は攻撃を潜り抜けられると

何の抵抗もなく切られていたが、切った傍から断面がつらなっていき、

元通りになってしまう。


「ああ、もうそれ反則やろ!」

愚痴をこぼす雪桜にまた触手が跳び、

あの赤ん坊のような手も彼女へ伸びていった。


それを切り払って、彼女が片手を前に突き出すと

「おらぁ!!」


彼女の手から赤い雷が発射され、化け物の体に当たった。


雷を化け物は手で受け止める。

その手も解けてはいくが、再生とのせめぎ合いが始まって、

溶かされては、再生してを繰り返している。


化け物の反応は何ともなさそうだ。


「おい、サラはん! 

このままやったらウチらの魔力が尽きて終わるで!!なあ!」


そんな言葉を聞いているのかいないのか

サラはその間に背中に背負っていたギターケースを下し、中を開いた。


(あっ・・・まあ、いっか)


彼女が中から取り出したのはルーカスが使っている魔導銃だった。


ダイアルを押し込み、爆破の魔法を使えるように構える。


(渡すの忘れてましたね)


それを構えて、化け物の方へ向け、引き金を引いた。

赤色の薄い光が化け物に伸び、当たるとあのライフルよりも大きな爆発を起こす。


だが、

化け物はそのまま佇み、変わらず健在だった。

そこへ何度か爆発を続けるが爆炎と煙の中で

ソレがケロッとしているぐらい

今のサラは手に取るぐらい簡単にわかっている。


(ああ、耳痛いなぁ)


爆発音が響き、高められた五感が彼女に苦痛となり、

雪桜の喋り声もあまり聞こえなくなる。


それでも、集中力でそれらを整理し、聞き分けていく。


爆炎の中から飛んでくる触手を爆破で撃ち落とし、

槍は身をよじって避ける。


雪桜にも同じように攻撃がされるが同様に避けた。


雷を止めながら

「おい、魔法効いてんのか、これ」

とサラに向かって叫ぶ。


サラはショットガンから持ち替え、銃身の長い拳銃を二丁持ち、

化け物に撃ちまくる。

青い火の玉が何度も放たれ、

触手は貫けるがやはり本体には通らない。


(全然効いてないっすね・・・・どうしたもんか・・・)


「お~い、サラはん!」

「あんま喋ると舌噛みますよ!」


二人が大声で言いあう。

「どないすんねん!疲れてんのかもわからんし、 

 そもそも攻撃が効かんし、効いても治るし!」


攻撃が来る。

触手の攻撃は単調で防ぐのには苦労しない。

しかし、避けた先の壁や塀を軽々と粉砕するその威力を見るに、

油断しても良いことはなさそうだ。


「逃げるか?!!」

「逃げてどこ行くんすか、あっちだって敵がいるんすよね?!!」

「ああ!! これより面倒なのがおる!!」

「だったら逃げるなんて言ってんじゃないっすよ!!」


二人の話を遮るようにまた攻撃が来るが

余裕を持って躱す。


「こんなに喋って相手に聞こえないんすか?」

「聞こえてないんとちゃうの?! 耳ないし!」


「・・・・・・・」


ドゴンッ!!

触手が壁を壊す音だけが響く。


「なんか言ってや!!」


(どうするっすか、このまま飛び跳ね続けても

いつか力尽きてアレを食らうことになる。

逃げようにも逃げる先がない。

そもそも、今は棒立ちのアレが次の瞬間もあのままなんて保証もない。

あの硬さや魔力を考えればむしろ私以上に動けて当然・・・)


そう思った矢先だった。

化け物がサラの方を向いたかと思うと、


「っ!?」

とてつもない速度で突進してきた。


酷く直線的な突進。

その長い手を左右に出しながらまっすぐとんでくる。

そのある意味幼稚にも思える攻撃をサラは済んでのところでしゃがんで避けた。


頭上を風が通り過ぎ、自分の顔に風がかかったかと思うと後ろで轟音が響く。

屋敷の周りを囲んでいた塀が跡形もなくなってしまう。


「もうちょい遅かったらハゲてたんとちゃうんか、あれ」

「・・・アイツ、その軽口もちゃんと聞いてんじゃないっすか?」


サラが雪桜の近くに跳びよる。


「一緒に死にたいんか?」

「私じゃあれを受け止めれませんので」


化け物がゆっくりと瓦礫から姿を見せ、

彼女たちの方へと向き直る。


そのなかがサラがぼそりと呟いた。

「ちょっとあるかもしれません」

「まじか!?」


それに歓喜の声をあげる雪桜は

「ええ、また指示通り動いてくれないっすか?」

「おっしゃあ!」

張り切って、前に出た。


「じゃあ、とりあえず、あいつを至近距離で相手して、時間を稼いでください。」

「任せとき! ちゃんと借りは返すでえ!」

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