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evil tale  作者: 明間アキラ
第三章 「順応」 ー第三地区編ー
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第二十八話「喧嘩の始まり」

部屋にアダムの声が響いた。


「おい!! 何してんだ!!」

リリーに向かって

そう怒鳴ったアダムはジョンと彼女の間に入った。


繋がれていた手がほどかれ、ジョンの目が心なしかより暗くなった気がする。


「・・・あんまりうるさくすると、怖がっちゃうかと思って、ごめん」

リリーはそう謝るが、

逆に、ルーカスは少しにやつき、嫌な笑みを浮かべて、

アダムに語り掛けた。


「・・・こっちのリリーが何したよ、アダムさん?」

「・・・黙れ」

腹の底から響く、その低い声で、

そう威圧するアダムだが、ルーカスは続ける。


「手つないでて微笑ましかったじゃないか、何をそんな怒ることがあるんだよ」

「お前に関係ないだろ」


瞳孔の開いた目でにらみを利かせるが

それでも止まらない。


「だから、そんなに怒んなって、なあ?」

「うるせえぞ!!」


うざったい人間の模範のようなくちぶりで

話し続けるルーカスの襟元を掴み、持ち上げるアダム


しかし、ルーカスは

怒声が響いてから、俯いて、下を向いたまま動かなくなったジョンを見て、

言葉をつないでいく。


「おいおい、ジョン君悲しんでないか? ダメだろそんな怒鳴り散らしちゃあ

それにさあ、そんなに嫌ならずっと見とけばいいのに、なんで目離してんだよ。」

「黙れ!!!」


とうとう堪忍袋の緒が切れたアダムは、

怒りのまま彼を突き飛ばした。


力いっぱい彼を突き飛ばすと、

凄まじい力でルーカスは壁の方へと吹き飛び、

壁にめり込む。


激しい激突音が部屋に響き、部屋を揺らす。

それでもなお怒りは収まらず


「お前に何がわかるんだよ!! ジョンはなあ!!」


歯を噛み締めて、目に涙を浮かべてそう言い放った。

そのアダムの顔は、

ルーカスなりに言うとすれば鬼、

怒りと憎悪、敵意で歪んだその顔はルーカスだけを目におさめ、

今にも跳びかかってきそうだ。


それを見て、ルーカスは

「ふふふ」

笑いがこらえきれなかった。


「あはははははは!!」

吹き飛び地面にへたり込んでいたと思われた彼は床を手でたたきながら

大笑いを始める。


「てめえ!!」

アダムの怒りも彼にとっては笑いの燃料でしかないのか

彼が怒るほど

ルーカスの笑いは、薪をくべられた火のように大きくなっていった。


「ぷっ! あははははは!! あ~、くッ! ハハハハハ!!

はー、ふー、ふー」


腹を抑えながら、呼吸を整え、ゆっくりと立ち上がるルーカス。

楽し気な笑顔を浮かべ、人を嘲笑する彼は


頭に血が上ったアダムに一言、告げる


「ばーか」


そんな幼稚な言葉で十分だった。


とうとう何かが切れてしまった

アダムはルーカスの方へ跳び込んでくる。


「!!」


右腕が顔面に向かって振りぬかれる。


だが、ルーカスも同時にアダムの顔めがけてフルスイングを放った。


肉や骨がきしむ音が響く。

二人は同時にお互いの顔を殴り合った。

体が仰け反り、鼻血が滴る。


二人ともよろめくがすぐに態勢を立て直し、

その悪意と敵意はぶつかり合った。


「おいおい、すぐ追いかけねえとまずいんじゃねえの?」

「てめえぶっ殺してすぐに追いついてやるよ!!」


また右手を振りかぶり、互いにぶつかり合う。

今度は腹と顔に拳が刺さるが、二人が止まることはない。


「おら!ぐほっ!」

「ぶるぅ! くっ! はあ!!」

二人の拳が相手の体を打ち合う。

防御など一切考えられていない

その攻撃が互いの体をうつ。


魔力障壁は何度も突破され、

体に直接ダメージが入っているはずなのにお互い一歩も引かない。

ルーカスの顔から

ぐちゃあ

と嫌な音がするが止まらない。


二人の殴り合いが拮抗状態となり、

お互いの体を殴り合うことから

進まなくなって数秒した時、

アダムの動きが止まった。


そして、そこへ振り下ろされるルーカスの拳

完全に当たったかと思ったその時、

彼の体は部屋を突き破り、廊下へと叩きだされていた




その一方、

海守組本部からも離れた裏路地、

そこを金髪のエルフが必死に走っていた。

皮のブーツで大地を踏みしめ、前へ前へと進んでいく。


「はあ、はあ、」

肩で息をし、腕を大きく振りながら彼女は疾走していた。


「なんで、はあ、こんなに走るなら、はあ、

スカート止めればよかった、はあ、はあ」


自身の過去の選択を悔いるが、もうこうなっては遅い。

ダラダラと垂れ流した汗が体を伝い、服を濡らしていく。


「ふぅ、ふぅ・・・・

はあ、はあ、もう・・・」


短く切った金髪を振り乱しながら

サラが後ろを確認し、感覚を広げる。


(超感覚)


周りの音や風の感触が彼女に知らせてくれる。

前を向き直しても、

今の彼女には後ろの風景、

誰がどこにいて、何がどこにあるのか、

手に取るように感じられる。


(無視するにもほどがあるでしょ

私たちにどうしてほしいんすか?

あの人たちは)


それらからわかったことは


(なんか来てますねえ)


彼女のずっと後ろ、ある建物の屋根の上から

誰かが彼女を見つめている。


(ええと、誰でしたっけあれ・・・・)


遠くから茶髪の獣人が彼女を凝視する。

距離にすれば300mは離れているが、

その視線は彼女の高められた五感にビシビシと突き刺さっていた。


(無視してんのか、邪魔したいのか

どっちなんすか、まったく・・・・)


(はあ、さっき立ち止まったらいきなり水の塊飛ばされるし、

巻こうと回り道したら、先回りされて攻撃してくるし、)


彼女の灰が限界を迎え、ゆっくりと歩きだしてしまう。


「はあ、はあ、大体、ここからあそこ行くの普通は

馬車とかじゃあ」


すると、獣人が動いた。

その300mの距離を


屋根の上を走り、身をひるがえし

あっという間に詰めてくる。


そして、歩く彼女に向かって

電撃を放った。



「嘘ォ!?」


必死に跳んでどうにか躱し、また走って逃げるサラ


(こうなったら!

 過剰感覚)


サラはまた五感を高める。

風邪が少し痛く、足を伝わり、地面から返ってくる力が

臓器に刺さる感じがする。



だが、


(今!)


獣人が放つ攻撃の予備動作を的確にとらえ、

魔導銃で彼女を撃つ。


獣人は手を前に出し、魔法を撃とうとしたその瞬間に

攻撃をされ、


「くっ!」


為すすべなく体に爆発が当たった。



そして、彼女はまた駆け出す。


(妨害っすか? まあ、あの人なら一人でも十分でしょうが

それにしてもあんまりやる気がないのか・・・

あの娘、確か、二十八代目、雪桜、名前を受け継ぎ続けて代々海守組に仕える一家

あの人、本気を出せば私を捕らえるなんて簡単でしょうになんでこんなこと・・・)


「やっぱり急いだほうがいいっすね」


心臓はもう張り裂けそうになり、

肺と脇腹は悲鳴を上げている。


だが、それでも走る。

奇怪な敵とあの紙へ疑問と期待を寄せながら

自らの取れる選択に向かってひた走る。


「さっさと行きますか、お坊ちゃんの家に!!」



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