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evil tale  作者: 明間アキラ
第三章 「順応」 ー第三地区編ー
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第二十二話「miss and miss」

「誰って・・・」

突如、少女に名前を聞かれたルーカス

虚ろな目をした本当に人形のようなエルフの少女


今にもパタンと倒れてしまいそうなほど

目に生気がないその子は、ぼうっと彼の方を眺めて

無機質に問いかけてくる。


(・・・本名は駄目だな)


とっさの判断で嘘を言う。


「ダニエルだよ」


「ダニエル、違う」


(!?)


その少女の発言に思わず、顔をこわばらせてしまうルーカス。

(どういう意味だ?)


驚く彼を気にも留めず、少女はドアの前で突っ立っているのだ。


(俺が違う・・・ダニエルじゃなくて)


ダニエルという名前が違うのではなく

彼、ルーカス自身が違う。


よくよく彼女の手を見ると何かくしゃくしゃの紙がある。

(なんだこれ・・・)


それがちらりと見えた。


(あれは・・・・似顔絵!?)


まるで写真ではないかと思うほど精密な似顔絵、

何人もの人が描かれており、

その中にリリーがいた。


それにたじろいていると少女の腕が変わっていく。


気味の悪い、あの黒に染まり、形を変え、

大きな腕になる。

肩から足元へだらんと垂れる大きな腕

人形の腕をお遊びで別の腕に取り換えたような

いびつな黒い剛腕


それを見て、

「っ!」

(あいつは!!)


彼の敵意と感情が一気に高ぶり、

手が黒色に染まる。



だが、さっきまで気にするそぶりも見せなかった少女は、

突如としてルーカスを腕で攻撃した。


その軌道は腕のものというにはあまりに奇怪すぎる動きだった。

肩の付け根から腕が動く。関節がある人の腕というより

大きく巨大な鞭のような軌道でそれは彼らに飛んで来た。


「なっ!?」


それを受けて

ルーカスは列車の壁を突き破り、

外へ弾き飛ばされていった。




しかし、それを気づかない二人ではない。

「ねえ」

「ええ」

リリーがドアを開け、

周りを確認しようとした。


口の端にソースがついたままだが、

少女と目が合う。


「い、た」


目の前にいるのはいびつな腕をつけた少女

彼女の手が振られる。

だが、それが完了する前に少女はリリーに殴り飛ばされた。


ボールが跳ねるように床を転がる少女


「サラ!」


リリーは少女と向き直る。


少女の顔は崩れていた。

下あごは殴られた衝撃で変な方向へずれ、

その異形さが増しいていた。

だが、それもすぐさま元に戻る。


「・・加減しすぎたかな」


そして、少女の体は更に変わっていく。

黒いかただの頭のない怪物

黒い体表、細い日本の腕と日本の巨大な腕を持つ奇怪な化け物


人の頭がなく首の断面で止まっていることと

腕が四つあること以外は、

黒いただの人間のようだが、

彼女が殴った時にした感触は、明らかに人の肌ではなかった。


その化け物とリリーが向かい合う。


眼も顔もない怪物だが

まるで睨みあうように二人の動きが止まる。

しかし、それを断ち切るように化け物の体へ火の玉が貫通した。


細長い形の高熱は化け物に穴をあけ、

更にそれが何度もサラたちがいた部屋から飛んでくる。


いくつもの穴が化け物に開く。


「・・・・・」

だが、化け物は平然としていた。

胸や胴を貫かれ、それを細い腕で触る化け物だったが

それもすぐにふさがっていく。


「・・・・・」


化け物と見合うリリー

(ルーカスと同じ、だよね?

 何が効くの・・・)


彼女がそうやって考えていると

化け物は巨大な腕で列車の壁を破壊し、

外へと飛び出す。

固い金属や木が一気砕け、

バキンという音を鳴らす。


「あっ!」

リリーから声が漏れるが、もう遅い。

化け物は列車の外に逃げ出していた。


そして、その体を変形させ、巨大な腕を引き延ばし、

列車の車輪に絡みつけた。



それを空中でやる器用さ、形勢不利と見るなり、すぐに逃げ出す潔さ、厄介な怪物だろう。

だが、彼女は一つだけ、失念していた。


自分が最初、ゴミのように外に放ったもの。

空中で、そいつと目が合う。


列車と同じ側で走り、

自分と同じような黒色を腕に纏い、

血管のような管となって浮き出ている

黒いスーツの男


その顔は笑顔だった。

だが、それから感じたのは明らな敵意だった。

彼女を見据える眼からは明確な敵意が向けられていた。


彼の全身に力がこもる。

走馬灯のようにゆっくりと流れる時間のなか、

彼女の胸に彼の拳が突き刺さった。


「ウラアァ!!」


だが、同時に彼も、ルーカスも忘れていた。

今、絡めた長いものが動くものに引っ掛かった状態で

引っ張るとどうなるだろうか。


彼が拳を振りぬき、化け物が動くと

聞いたこともないような金属のきしむ音と風切り音が聞こえる。

「あっ」


彼が後ろを向いた時にはもう赤い列車の天井が傍に迫っていた。


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