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evil tale  作者: 明間アキラ
第三章 「順応」 ー第三地区編ー
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第二十一話「出立の後、出立」

あわただしく走ったり、

何やら騒いだり、勝ったのに浮かれてはしゃいだりしている

兵士たちの横を通り抜けて、

サラは歩きながら二人に


「今から、三人、列車でへシラスまで移動します

 準備してください。」

とだけ言った。


それ以外何の説明もする気がないと言わんばかりに先を歩いていくサラ。


二人は言われた通り、リュックを背負い、サラの元へと戻る。


「もう、出るんですか?」

「ええ」

「そしたら、坊ちゃんによろしく言っといてください」

「わかりました。行ってきます」

「ええ、行ってらっしゃい」


そうゴーギャンに軽く挨拶をして、

三人は外へと出ていった。


「駅行きますよ」


そう言われ、都市の駅まで歩く。

その途中、歩きながらサラは説明を始めた。


「今からへシラスっていう港町まで移動します」

「なんでそこに?」

「そこに海守組の本部があるんす

 そこと話をつけます。」


そう言い切るサラ


「連中、話とか聞いてくれなさそうだが」


「何をしてもいいから聞かせろ、とテオ総督からありがたいお言葉が」

「・・そうか」


三人のスーツを着た男女が駅に向かう。

女は二人とも帽子を深くかぶり、

サラは片手にあの黒い箱ではなく、ギターケースのようなものに持ち替えた。

ルーカスも似たようなものを持ちっているが、リリーは手ぶらだ。


(ギターってここにもあんのか・・)

「何の集まりか聞かれたら、まあ、旅芸人とでも答えてください」

「リリーが歌うのか?」

「・・・そうなりますね」

「・・・歌は・・・」

「本気にしないで、安心してくださいよ、もう」


サラの顔がまた元の人懐っこい顔に戻り、

けらけらと笑う。


リリーは「え、そうなの」という顔をして、驚いていた。


そんな風に町の中心へと歩いていると、

海守組がいて静かだった街並み段々と活気を取り戻していく。


人が増え、スーツ姿の男女や

労働者らしい人々が外を出歩いている。


「顔とか大丈夫なのか?」

ルーカスが二人に問いかけた。


サラは帽子を深くかぶり、

「案外ばれませんよ」

とくいくいと引っ張って、見せつける。


(本当かよ、確かに写真とかはなかった気はするが・・・)



「そんな、気が利くあなたには任務を与えましょう」


体よくパシリにされ、三人分の切符を買いに行くルーカス


言われた通りに一つに区切られている

四人が座れる部屋のような座席を買った。


結構金額としても高く、扱いもいい。


ファーストクラスとも呼べるような

座席だろう。


(こんなところに座れんのか)


内心ウキウキで切符を買うルーカスだったが、

上にも車内にも騎士がいるという

事実を思い返し、疑心暗鬼にも似た警戒心がまた呼び起こされる。


不審にならないように努めるが

同にもそれは叶わぬ様子でルーカスは明らかに挙動不審だ。


その一方、サラとリリーは全く動じていないらしい。


「そんなビクビクしないでくださいよ」

と軽く言ってのけるサラだがルーカスから不安が取れるわけではない。


「・・・俺は、大丈夫なのか?」


「襲撃があの様子じゃ、誰も見てないでしょう

 記事だって書けやしないでしょうし、

 貴方の素顔を知ったあのエルフは死んでました」


「・・・・そうだな」


「リリーさんは・・・・ここまで顔とか伝わてるんすかねえ

 まあ、ばれたらそん時っす」


なんともないと言った顔でそう返すサラ

高い席で周りと区切られているから気が抜けているのか

彼女たち特有の超人的な感覚で安全だとわかっているのか

ルーカスにはわからないが


(まあ、写真は見たことないし、無線だって革命軍側以外で使ってる様子はなかった。

だとすればまあ、俺の顔は割れてないって考えた方がいいか)


改めて異世界であることを思い返し、納得しながら

彼はあることに疑問を持った。


「そう言えば、その黒いのはいつからあるんだ?」


ルーカスが無線機を指さす。


何でそんなものがそこにあるのか

彼がそう思うものはいくつかあったがこれも代表的なものだ。


「いつから?ええと、これはあのゴーギャンさんが作ったもんっす」

「さっき会ったあの人か?」

「ええ、そうっす。

 なんなら、魔導銃だって、開発者はテオ兄様とゴーギャンさんっす」


「・・・へえ、初耳だ」


「そっか、ルーカスさんが何も知らないこと、

 話してると、結構忘れちゃいますね」


「じゃあ、この革命の発端はその二人なのか?」


「んん~、まあ、そうっ、すかね?」


サラは歯切れが悪そうに、首をかしげながらそう言う。


「まあルーカスさんが気にすることではないですし、

 聞きたいなら、もっと話しやすい場所で話しますよ」


「まあ、そん時聞くか・・・」

(・・・・・・・)

ルーカスがリリーの方を見る。

ずっと視界の端で会話にも入らず、動いている彼女


(・・・・・・自由だなあ)


駅で買った弁当で口をパンパンにしているリリー

「ん?」

彼女もルーカスを見て、目を合わせた。


「・・・なんでもない。ごめん」

何だか申し訳なくなって謝ってしまうルーカスに

リリーは不思議そうな顔をしながら

「・・・・食べる?」

と言って、肉を指したフォークを少し彼の方に向けた。


「いい、好きに食べてくれ」


そう言われるとリリーは何事もなかったかのように

バクバクとまた食べ始めた。


「・・・思えば私達、朝から何も食べてませんでしたね」

「そうだな」


ルーカスが席を立って、列車内で物を売っている人に会いに行く。


「ええと、サンドイッチ二つください」

おばちゃんからサンドイッチを買い、

持って帰ろうとする。


しかし、その彼の部屋の前に誰かがいた。


(子供? 女の子か?)


そこにいたのは、ワンピースを着ている少女だ。

エルフらしく、耳の尖った銀髪で青い目の小さなお人形のような少女


それがルーカスたちの部屋の前で

たたずんでいる。


それに近寄るとちらっと彼の方を見る。


「どうしたんだ?」


彼が声をかけると


「あなた、だれ?」

とたどたどしい言葉でそう返してきた。



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