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evil tale  作者: 明間アキラ
第三章 「順応」 ー第三地区編ー
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第二十話「カチコミ」

ルーカスがさらに続き、

外へ出ると、そこに広がったのは

豪勢な庭だった。


誰でも思い描くような庭園、

その門をからぞろぞろと男たちが入ってくる。


真っ黒なスーツに白シャツを着て、手には剣ではなく

刀のようなものを持った連中、

彼らが我が物顔で屋敷に侵入している。


「海守組っすね」


サラが前に出て、歩いていくと、

彼らはそれ以上距離を詰めてこなかったが

それでも後ろには続々と彼らが来ている。


彼らは、

今にもこちらに噛みついてきそうな顔で

ルーカスたちを睨み付けていた。


(本当にヤクザみたいな連中だな)


そこで、サラが前に出て、

大きく、遠くまで届く声で話し始める。


「ご挨拶っすねえ、

 うちらとは縁切ったってことでしょうか?」


そのうちの一人、赤い髪をした獣人の青年が前に出て

彼らへ語り掛けてくる


「誠に勝手ながらこっちにもこっちの事情がございやして」


刀をサラへ向けてくる獣人の青年

若いながらも、ただ普通の声から

こういう場に慣れてきたのであろう異常な平静さを感じさせる。


「義理だの人情だの言ってたみたいっすけど

 これへの説明はないってことっすか?」


「ええ」


二人の間に緊張が走り、重い沈黙が周囲を押しつぶさんばかりに漂う。

サラが彼らに銃を向けるが、怯む様子はない。


「せめて、説明くらい欲しいんすが、

 あんたらの上はどういうつもりなんすかね」


「さあ、あっしらはただ叔父貴や親父の言うこと聞くだけですんで」


そうやって睨みあいを続けていると、

サラの後ろから武装した革命軍の兵士たちが

ぞろぞろと出てきた。


全員で彼らに銃を向け、


「話すことはないと?」


サラがそう言い放つ。

静かに、だが、彼らよりも威圧的に


「話が早くて助かりやす」


黒スーツの男がじりじりと近寄って来る。


その足元へ魔法が撃たれた。


「どうしたんすか?

 話し合いなら普通にこっち来てくださいよ」


サラの銃口から煙が出る。

彼女は優しい口調のままだが、


「やれ」


赤髪の男が刀をルーカスらに向け、そう言った。


男たちの雄たけびが周囲にこだまし、

刀を突き出して、突進してくる。


「ごらあああああ!!!」


「撃て」

サラの低く、小さな声。

だが、兵士たちの魔法が次々と発射される。


火の玉は彼らの体を貫く。

それに倒れてしまう人もいるが、

倒れない人もいて、そのまま突っ込んでくる。


サラが腕を上向きへ直角に曲げて、手を後ろに揺らして、

兵士たちを下げさせる。

そして、

「ゴーギャンさん」と彼に何かを言った。


それにうなずき、ゴーギャンは兵士たちに指示を飛ばしだした。

兵士たちは玄関先に十人ほどを残して、屋敷に散り散りとなっていく。


そして、

「リリー、ルーカス」

そうサラが二人に声をかけると、二人は前に出た。




魔導銃で傷を負わなかった連中は、まず二人を倒そうと

突進してくる。


だが、ある者は

リリーの拳に倒れ、ある者はルーカスの銃と打撃に倒れた。


振り下ろされた刀、それをものともせず、

逆に彼女の拳が刀を粉砕し、


「なっ!?」


そのまま拳が顔を捉えて歪ませていく。

そうやって倒れた男を飛び越え、

赤髪の青年の前へ近づいていった。



一方、ルーカスはショットガンを撃ち続ける。


威力のダイアルを七にして

太く、高熱の火の玉が男たちを貫くが


それでも突破する男もいた。


「おら!」


彼の刀がルーカスの首に突き刺さる。


「変な首の色しやがって・・・あっ!?」

だが、ルーカスは平然としていて、威力ダイアルを9にまわし、

銃口を腹に突きつける。



ルーカスは口角を釣り上げて笑い

引き金が引く。


すると、


「ごあ」

彼の腹は穴あきチーズになり

そのままぐったりと倒れた。


「おどれ!!」


短刀を刺そうと振りかざす男

それをルーカスは

銃身に持ち手を変え、魔導銃で殴り飛ばした。


「ハハ! 綺麗なホームランだ」





その頃、赤髪の青年にリリーが迫っていた。



「兄貴」

そう言ってリリーと彼の間に立つ

強面の男が振り下ろした刀を

リリーは軽く躱す。


半身になって、それを交わすと

「ふごっ!」

顔を掴み、握り、

そして、そのまま振り回した。


それをリリーは

赤髪の青年へと投げる。


青年はそれを受け止め、

あごが砕け、

「ああ」

と言葉の出ない男を地面に置くと、

刀でリリーに切りかかった。

「はあ!」


だが、それも手で受け止められ、

簡単に握りつぶされる。


「・・・・降参すれば追撃しないけど」


そんなリリーの言葉も聞かず、

赤髪の青年は短刀を抜いた。


「そんな真似するぐらいなら死んだほうがましだ!!」


そう言って切りかかる。




その時、屋敷の窓から銃口が出てきた。

それが揃ったのを確認すると

後ろにいたサラが挙げた腕を振り下ろす。


「撃て!!」


さっきと比にならない弾幕が降り注ぎ、

リリーもルーカスも後ろに引き、


海守組たちも

「下がれ!」

赤髪の青年の合図とともに門の外へと出ていった。



「退いてるっすか?」

サラが上にいる兵士に聞く。


「退いてます、退いてますが、ある距離の所で止まってます」


「わかりました。行きますよ二人とも」


三人が門の外へと出る。


外は都市だった。

第一や第四地区でルーカスが見た都市の景色と似たような場所

違うのは人がいないことと、

黒スーツの男たちが負傷者を担いでぞろぞろと歩いていることだ。


「・・・・・」

赤髪の青年がリリーの方を見ていたが、

彼らも踵を返し、全員で後退していった。




「ひとまず、これで撃退できたってことか?」

「そうみたいっすが・・・・結構まずいっすね」


サラの顔はまだ険しいままで

ずっと何かを考えこんでいる。


「彼らがうちにこんなに敵意むき出しなんて・・・・」


あごの下に手を置いて

ぶつぶつと独り言をつぶやき、


「二人はここで見張っててください」

どたどたと走って行ってしまったかと思えば、とんぼ返りしてきて、


「出ますよ、二人とも!」

そう勢いよく口にした。




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