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evil tale  作者: 明間アキラ
第二章 「変身」 ー第二地区襲撃編ー
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第十七話「歓迎」

三人は、応接間に戻り、身支度を始めた。

だが、大荷物を持っているのはサラだけだったので


「ちょっと外行っててください」


とリリーとルーカスは二人で廊下に立っていた。


「・・・・・・」

「・・・・・・」


ドアを挟むようにして立ち、

二人とも壁を見続けている。


気まずいようなそうでもないような空気が二人にただよう。


「ねえ」

そんな中、リリーが口を開いた。


「・・ルーカスで、いい?」

「ああ」


口下手なのか

一言一言をそのばで考え出すように

ゆっくりと喋るリリー


「ルーカスは、帰るところがないって、言ってたけど、本当?」

「ああ、ないよ」

「そう・・・」

「急にどうしたんだ?」

「・・・・ごめん、ただ、気になったの」


ためらいがちにそう聞いてきたリリーとの会話は

そこで途切れた。



部屋の中でドタバタが止み、

ドアが開けられると、その中から大きな黒い長方形の箱が

ひょっこりと出てきた。


「よっ、よいしょ」


そんな掛け声とともに

それが放り出され、部屋から出てくる。

一つ目、二つ目、三つ目

狭いドアから隙間を縫うようにはい出てくる


「ああ、疲れました」


サラは、そのカバンから垂れた紐を

肩にかけ、二つを横にぶら下げた。


そして、もう一つはリリーが持ち上げた。

重さなど一切感じさせず、ハンドバッグでも持つかのように軽々持つ。


ルーカスは手ぶらのまま少し気まずさを感じていたが、

「じゃあ、行きましょうか」

その声と共に三人は歩き出した。


その間も周りでは忙しなく動き回っており、

鉄道局の外では多くの人々が整列していた。


三人で少し歩き、ラベンの駅に着くと、

サラにコートを着た連中が道を開けた。


サラの荷物を眼鏡をかけた男が受け取り、

三人の後ろをついてくる。


人で一本道ができ、列車の中にすんなり入りこむと。

三人は四人で向かい合うあの形の席に座り、横の席のグループには

荷物持ちの人が座った。


ルーカスが窓の外を眺めると、


人がぎっしりといる中に妙に周りから間隔をあけられている

空間があり、そこでは駅構内ではテオと彼より少し背の高い長い黒髪を垂らした女が

話し合ってる。


よくは聞こえなかった

不安そうな彼女をテオがなだめているようで、

それが終わるとテオは彼らの方へと歩き、

荷物持ちの男の斜め前に座った。


そうして、テオが座ると、次々と

コートの連中が中に乗ってきた。


何人かは立ったままで車両の隅に立ち、

他は四人席に二人ほどで座る。


他の車両にも大量に乗り込んでいき

駅にいた人はみるみる減り、見送りの数十人を残して、

列車は出発した。


「お久しぶりっす、ライムさん」

サラは揺れる列車の中で、荷物を持ちをした男に話しかけた。


「ええ、お久しぶりです。サラさん」

「この二年ぐらい何だかんだ会いませんでしたね」

「ええ、本当ですよ、」


そんな他愛もない話を始めていた。


ルーカスはリリーの前に座っていたが、

二人ともそろって窓の外を眺めている。


第二地区から第一地区は本来、正規の手順では

とてつもない時間がかかる。


だが、前にルーカスが乗った列車とは違い、中継地点で止まることがない。


上に乗っているのは厚着の兵士たちで交代もない。

一直線に列車は走り、途中にいくつもの駅を通り過ぎていく。


「リリー」

「どうしたの?」

「どれくらいかかるんだ?」

「知らない」

「・・・・・そうか」


遠くには壮大な山脈、

大きな川を渡り、森林の横を通り抜ける


たまに彼らの方へと近づいてくる

魔獣たちは列車の上から飛んでくる火の玉で貫かれ

動かなくなった。



五時間にも及ぶ列車での移動を終えたころには、

もう日が傾き始め、空には夕焼けが広がっていた。


そんな中、第一地区の城門が開けられる。

そして中に入ると、そこにいたのは旗を掲げた人々だった。


銃を重ね合わせたような紋章の旗を

掲げるものや、小さな旗を振り回すもの


彼らがこの列車の帰りを待っていた。


肩を組み、大声で騒ぐ人々

そこで止まるのかと思いきや列車はさらに先へと進む。


(出迎えでもないのか)


そうやって第一地区に入り、

いくつもの駅を通り過ぎるがどこでもそんな状態で、

列車は彼らを横切って、大きな駅に着いた。


もちろん、そこはこれまで以上の盛り上がりを見せていて、

もはやお祭り騒ぎだ。


そこへ着くとテオとライムと呼ばれていた青年が立ち上がり、

何人かの兵士が横について、列車の外へ出る。

すると、まるで国をまたがるスパースターがレッドカーペットを歩くように

人々が大騒ぎをしていた。


「テオ総督が戻ったぞ!!」

「第二地区が下ったらしいぞ」

「あの頭の固い政府連中もこれで肝を冷やしただろう」

「これで俺らの村は安全になる」


人々が思い思いに騒ぎ、

テオを取り囲んでいる。


多くの者が魔導銃を担ぎ上げ、

銃の旗を振る。


(すげえな、あれ)


その狂乱ぶりにルーカスも内心少し驚いていたが、

それよりも身近な疑問が彼に湧き出ていた。


「俺らはいつ出るんだ?」

「最後っす」


あの大騒ぎもテオが最初に出ていくと

それにつれられるように引いていく。


観客たちがいなくなり、

駅に人がまばらになって

スペースが開く。


すると、次に兵士たちが外へ出た。


ぞろぞろと兵士たちが歩き、

また駅が人で埋まるが、

それもましになっていく。


そうやって、あらかた兵士が出終わったころ、

数名の兵士を連れ、三人は列車の外へと出た。


駅の中を歩き、

外へと出ていく。


大理石や煉瓦でつくられた街並み

背の高い建物も目立ち、細長い建物に多くの部屋があるような

アパートから大きな住宅まで様々見える。


また、外へにはさっきと同じような人々がそこら中にいた。


「こっちすよ」


サラはその人の波をかいくぐるように兵士たちを連れ出した。


旗を掲げた騒ぐ人々が少なくなる方へと進んでいく。


そして、裏路地に入る。そこにあったのは縦に長い建物だ。


兵士は入り口で止まり、三人で中に入る。


中にあったのはまず階段、

小汚い石の階段を上り、あるドアの前にくる。


「ここっす」


サラがドアを開けると

中にあったのは大きなテーブルに背の低いソファ

棚にも書類群や黒い箱がおかれ、部屋の奥には普通の机と椅子がある

そんな部屋が広がっていた。

壁にもドアがあり、両方に部屋が繋がっているようだ。


「ルーカスさん、ここが私らの事務所であり、待機場所っす。」


サラが話し始めたのも気にせず、

リリーは慣れた足取りでソファに吸い込まれ、座って、ぼんやりとし始めた。


「まあ、この娘みたいにゆっくりしといてください

あ、そうだ。あれ返してください二人とも」


そう言われるとリリーとルーカスは懐から黒い手のひらサイズの箱を取り出した。


(トランシーバーだよな、これ)


それをサラに渡すと、箱の黒いくぼみに

彼女の分も合わせて三つをストンといれた。



「当分はここが拠点っす。」


「・・・・何をしてればいいんだ?」

そう言うルーカスにサラは


「ああ、そう言えば言ってなかったすね、ここの役割」


と何の説明もしていないことを思い出したらしい。


「この特別遊撃隊は、テオ兄様から直接命令が飛んでくるっす。」


「命令の種類は何でもっす。

それこそ、前みたいな襲撃もやります。

あっちに行けこっちに行けって結構色んな所に飛ばされては

襲撃、諜報、護衛、って感じで何でもやります。

兵士もある程度は動かせますが、基本的には少人数で動くことが多いっす」


「えっと、つまり・・・」


「なんで、命令がない限り待機っすね

まあ、多分すぐにどこかへ飛ばされると思うんで、

今のうちにゆっくりしといてくださいね」


そう言ってサラは隣のへのドアを開けた。

ベッドルームらしくそこで眠ったらしい。


「俺はどうしようかな」

そう言いながら彼もリリーと同じく

ぼけっとし始めてしまったのだった。


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