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花乙女は愛に咲く  作者: 遠野まさみ
リンファスとロレシオ2

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(9)


野外音楽堂でのショーは面白かった。

舞踏会で流れるオーケストラとは使っている楽器も違い、また小気味いいリズムがリンファスを虜にした。

どちらかというとウエルトの村での収穫祭の時の音楽に似ており、馴染みやすいのも起因した。ダンスでも、頭に花輪を着けて踊る女性たちが明るく朗らかな笑みを浮かべているのにつられてリンファスもパッと笑顔になった。


「踊るかい? リンファス」


「踊りたいわ! ……でも、ロレシオは、こういう曲で踊れる?」


「どうだろう。こういう曲で踊るのは初めてだけど、気持ちが弾んでいるから踊れるかもしれない。良かったら一緒に踊って欲しいな」


にこやかに手を差し伸べるロレシオに、リンファスも応じて手を乗せる。

そして簡単な座席の並びから芝の敷かれたひらけた部分に出て、同じようにステージの軽快なダンスに合わせてリズムを取って踊っている人たちの輪に加わる。

二人組で手をつないだり離したりしながら、相手の顔を見たままくるりと回ってステップを踏む。

また手を繋いで、今度は腕を組む。そのままくるりと回って、お互いを見てステップ。

合わせた手を高く掲げて、女性だけ回る。スカートがひらりと波打って、そこにも色とりどりの花が咲いたようだった。


音楽がはじけ飛ぶ。人々が笑う。

会場を取り巻くかがり火があたりを赤いこがね色に染め上げている。いっときの高揚感が宙を舞い空へと駆け上がっていく。


やがて音楽が鳴りやみ、拍手喝采が贈られるステージの上では、花輪を付けた女性たちがお辞儀をしていた。

楽しかった時間があっという間に過ぎてしまって寂しかったけれど、とうに暮れた夜空の下で踊ったロレシオの黒のフードから覗く淡い金の髪が、照明を兼ねたかがり火の赤い火の色に染まって、朱金のその色は夕焼けの色と似ており、とても綺麗だったのが心に刻みたいほど印象的だった。









「実に楽しんだようだったね、リンファス」


笑うロレシオがそう言うので、申し訳ない気持ちになりながらも、でも心はさっきのダンスのリズムを刻む。


「収穫祭の音楽に似ていたんだもの、仕方ないでしょう? 

収穫祭の時はみんなが楽しそうに大きな焚火を囲んで踊るの。何重にも輪が広がって、夜中まで踊るのよ? 

普段は父さんの食事の用意があるから夜は家に居たけど、収穫祭の時だけは父さんも一晩中遊びに出てたから、私もお祭りを見ることが出来たのよ」


村での生活で唯一の楽しみだった祭りに似ているのだから、もう仕方ない。

リンファスが顔を綻ばせながらそう言うと、良かった、とロレシオは言って、踊って乱れたリンファスの髪を梳いた。

さらりと耳端に触れる指先がやさしくて、思わずどきりとしてしまう。

ロレシオはそのままリンファスを見つめて、やさし気に口端をゆるりと持ち上げた。


「僕も心から笑う経験を、久しぶりにしたよ。とても心地のいい体験だった。また君と来れたら良いな」


ロレシオが先の約束を持ち出してくれたので、是非、と応えた。


「私もとても楽しかったの。こんなに大はしゃぎしたのも、初めてだったのよ」


リンファスがそう言うと、それは良い、とロレシオが笑った。


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