表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花乙女は愛に咲く  作者: 遠野まさみ
リンファスとロレシオ2

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

93/142

(5)

「愛してくれない相手に心を委ねるのは、自分を殺すことと等しい……。自分の心はまず、自分で守らねば……」


ロレシオは、ひと言ひと言、噛みしめるようにそう言った。

ロレシオがその言葉に込めた気持ちを図ることは、今のリンファスには難しく、考えた末に口に出来たのはこんな言葉だった。


「私は……、……自分を大事に……、していなかったのでしょうか……」


自分で守らなければならなかったのに、リンファスはそれが出来ていなかった、とロレシオは指摘した。

振り返って考えると、確かにリンファスは、常にファトマルの為に働いていた。

自分が屋根のある部屋を得、食事を得ることも目的のひとつではあったが、その行動の結果は、ファトマルが如何に機嫌よく暮らせるか、という事だったのだ。

だがそれは、リンファスがウエルトで生きて来るのに必要な行為だった。それでも咎められなければならないことなのだろうか。


リンファスの問いにロレシオは、そうだと思うよ、と応えた。


「自分だけは、自分で守らなければならない。運が良ければ、周りに助けてもらえることもあるだろうけどね。それは周りの環境という、運次第だ」


運、という天秤に掛けられて、リンファスは誰にも助けてもらえない環境に傾いた。

そこで自分を守ることをしなかったのは、リンファスがそういう考え方を知らなかったからだ。


生まれた時から傍にはファトマルが居て、リンファスを罵倒した。母親が死んだのもお前の所為だと罵った。

ファトマルの不運は全て自分の所為だと思っていた。


でもそれは運が悪かったうえに、リンファスがファトマルに心を預けてしまったからだと、ロレシオは言った。

だったらリンファスは、これからどうしたらいいのだろう?


「まず、自分の意思を持つことだ。自分でどうしたいかを選ぶ。

……例えば今日、僕が僕の意思で君を誘ったようにね。

君にはそれに対して、イエスかノーかの二つの選択肢があって、君はイエスを選んだ。

そうやって、自分で選択していくことが大事だ。自分の行動を、自分で選んでいく。

それはつまり、自分の心を尊重することに繋がる。だから君は、花乙女であることを求められても、それにノーと言う権利だってあったんだ」


役割を……、否定するだって!? 思いもしなかったことを言われて、リンファスは動揺する。


「や……、役割を頂けなかったら、どう過ごしていけば良いの……? 私は……、私が今此処に居る意味を……、何に見出せば……?」


「それを決めるのも、自分の心だ。君が生きている意味を見出せる価値のあることこそが、君の心を支えると思うよ」


……生きている意味を見出せること……。


リンファスは口の中でその言葉を何度も呟いたが、今、それを即座に見つけることは難しく、現状、リンファスにとってそれは、誰かの役に立つという事、つまり花乙女として花を着け、アスナイヌトに捧げることだった。


「ロレシオ……。私……、自分のことなんて、考えたことがなかったの……。でも……、私に求められる役割があるなら……、それを全うしたいわ……。それがこの街に来た理由だもの……」


インタルに来ることを決めた時のことを思い出してリンファスが言うと、ロレシオは口許に微笑みを浮かべた。

リンファスがそう言うのと、まるで分っていたみたいだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ