表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花乙女は愛に咲く  作者: 遠野まさみ
リンファスとロレシオ2

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/142

(3)


この日リンファスはプルネルにあのリボンを頭に結んでもらった。

今までイヴラに会いに宿舎を出るときにはいつも一緒だったプルネルが居ないことの不安を解消してくれる気がしたのだ。

プルネルは穏やかな顔で楽しんで来てね、と言ってリンファスを送り出してくれた。


時間に余裕をもって楡の木を訪れると、果たしてロレシオは既に其処に居た。

通りのガス灯に背を向け、何時も通りフードマントを被って微動だにしないでその場に立っている。

どう声を掛けたものかと思っていると、ふとロレシオが懐から何かを取り出してそれを見た後、此方を見た。


「やあ、リンファス。少し早いね」


ロレシオはパチン、と手の中に持っていたものの蓋を閉じ、また懐に仕舞った。


「い、いえ、ロレシオさんをお待たせしてしまって……」


リンファスは常に待つ側だった。

家ではファトマルの帰りを待ち、市では客が来るのを待っていた。麦を収めに行くのだって、オファンズの家を訪れてもリンファスは彼が出てくるのを玄関で待っていた。だから人に待たれた経験がない

。恐縮して言うと、レディを待たせるのは紳士の振る舞いではないよ、とロレシオは笑った。


「まあ、敬語はなしにしようじゃないか、リンファス。堅苦しいことは抜きで、君と話したい」


ロレシオがそう言うので、リンファスは頷いた。


ロレシオはリンファスを導いて辻馬車を拾い、リンファスを馬車へと乗せた。

馬車のドアを開けるとタラップに足を掛けるときに手を差し出されておろおろする。

そんな丁寧な扱いをされたことがないリンファスは、舞踏会のダンスでもないのに男性の手を握っても良いものだろうかと戸惑って、動作が止まってしまった。


「リンファス。タラップが高いから、僕の手を取って」


「は、はい……」


リンファスの戸惑いを正確にくみ取ったロレシオは、やさしくもう少しリンファスの方に手を伸ばしてくれた。

その手に自分の手を乗せてみると、大きくてあたたかな手はリンファスのやせぎすな手を包んでしまえる程で、タラップに載って馬車に乗り込むときに手の方を見ると、リンファスが落ちないように見守っていてくれているそのロレシオの様子が、まるで紳士的で恥ずかしくなってしまう。


そんな言動で分かってしまう。ロレシオは良家の子息だ。リンファスとは釣り合わない。

リンファスは生まれも育ちも良くない、寂れた村の子なのだ。こんな釣り合わない待遇を受けて、もしそれに慣れてしまったら、ロレシオに飽きられてしまった時に、どうしたらいいのだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ