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花乙女は愛に咲く  作者: 遠野まさみ
リンファスとロレシオ

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(14)

「だって私のように役立たずな人間は、働く事しか出来ないんですもの……」


――『お前のような奇異な子供は働く事しか出来ることはないだろうが!』


常々ファトマルから言われていた言葉だ。

だからリンファスは身を粉にして働いてきた。そうすることでしか、居場所を見つけられなかった。

そう言うと彼は、ほう……、と頷いた。


「……興味深いね。君は愛情に飢えていた筈だ。しかしそれに反し、働くことを選び、結果として同情の花しか咲かなかった。

その状態で、君は満足できるの?」


リンファスは彼の言葉を聞いて、自分の言葉にかみ砕いた。


愛情に飢えていた……。

そうだろうか。愛してもらえないのは、自分が至らなかったからだ。

ファトマルの役に立たなかったから愛されなかった。

至らない所があるのであれば、それを補うために働くのは当たり前だ。

その結果が同情の花なのであれば、それはリンファスに相応しい花なのではないだろうか……?


「私が至らなかった結果が、この花なのだと思っています。だから、私はこの花で満足です」


勿論、ハンナの言うように『愛されて幸せになって、アスナイヌトの役に立つ』為には、この花で満足しては駄目だろう。

でも今はこれで十分なのだ。一つも咲かなかったイヴラからの花がロレシオのおかげで咲いたのだから。


「君は本当に不思議な花乙女だ。……僕が知っている花乙女とは、随分違うようだ」


彼はそう言って、かすかに笑った。

その時リンファスの胸に咲いていた『同情』の花と今咲いた左の手首の花が落ち、代わりにもう一輪蕾が姿を見せると、紅茶にミルクがほどけるように花びらがゆらりと解けた。

『同情』の花とは花弁の形が違う。これは、何の花なのだろうか……?


「これは……? 今、何を思ってくださったのですか……?」


「僕が? 僕は今、君を面白いと思ったんだよ。

僕が今まで知っていた花乙女とは全然違う。

君は何も持っていなくて、でも、何も求めていない。

そんな人がこの世に居るなんて、今まで思いもしなかったんだ。

……だから、敢えて言うなら『興味』だろうか。……そう、君に興味がわいた。君のことを、もっと知りたいと思うよ。

これで説明になるかい?」


興味……? 興味だって……!? リンファスのことを知りたい? リンファスの、何を知りたいのだろう……?


「……知って、……どうされるのですか……?」


純粋な疑問だった。今まで誰にも興味を持たれたことがない。

プルネルは友情の花をくれたが、それと同じような事だろうか……?


「……そうだな……。まず、君の人となりが分かる。そうしたら僕は、次に君に会った時にどんなことを話そうかと考えることが出来る……、のではないかな?」


「また、会ってくださるのですか?」


「嫌かい?」


とんでもない! まさかリンファスにまた会いたいなどと思ってくれる人が現れるとは、考えてもみなかった。

思えばこの前約束した時も、何故約束をしたのだろうと疑問だったのだ。

だとしたら、あの時も、リンファスに興味を持ってくれていたのだろうか……?


「この前の舞踏会で今日のお約束をくださったのは……、それでなのですか……?」


リンファスが問うと、ロレシオは暗闇に口の端を曲げて上げた。


「実に真を突く皮肉だね。……あの時は、僕も多少動揺していた。……自分の中の変化を認めるのには、時間がかかるものなんだよ」


「そうだったのですか……。いえ、すみませんでした。でも、お約束を頂けたおかげで、花の贈り主が分かって、その上、新しい花までいただいてしまって……」


本当にあの時のロレシオには、感謝しかない。でも……。


「私……、貴方が知りたいと思うことを、話せるでしょうか……」


結果が出せなければ役立たずになる。それは生まれてからの生活で身に染みていた。

不安になってそう問うてみると、焦ることはないさ、と声がやわらかく返った。


「周りの乙女たちに聞いてごらん。きっとどの乙女も、一朝一夕に愛情の花を満開にした子は居ないと思うよ。君もそう考えればいいのではないかな」


リンファスのことを思いやってそう言ってくれているのだと、声音で分かった。



この人はやさしい人だ。リンファスは月のない夜にそう思った。




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