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花乙女は愛に咲く  作者: 遠野まさみ
リンファスとロレシオ

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62/142

(1)

舞踏会の会場の庭を散策していたリンファスに、ハッとするくらい硬い声がリンファスに掛けられた。

この街に来てあまり聞かなくなった、リンファスに対して好意的じゃない声。誰かの気分を害したのだ、と直ぐに分かった。だからリンファスは、声の主の方に向かって頭を下げ謝罪した。


「す……、すみません……。庭に、お邪魔させて頂いています。部屋に……、……あの、……居る場所が、なかった、ので……」


言っていて、声が小さくなった。薄暗がりの中に、長身の人影を見つけたのだ。


広間から届く僅かなシャンデリアの灯りに映える淡い金の髪が分かる。

それは頭から被られたフードから零れた、背後から肩に掛けられている長い後ろ髪だけしか確認できなかった。


しかし、リンファスの目をくぎ付けにするには、それだけで十分だった。

庭に挿すシャンデリアの灯りを弾く金の髪は僅かな明かりに色とりどり咲き誇る花々の中で幻想的な光景としてリンファスの目に映った。

この色は知っている。インタルに来る時に宿から出てしまったリンファスを助けてくれた、ロレシオの髪の色だ。


彼は、その引き締まった体躯に広間に居たイヴラたちと同じように美しい色の礼服を身に纏い、すらりと其処に立っている。薄い光しか照らさない庭の花々を従えているような、そんな雰囲気を醸し出していた。


顔の左に細い光を受けてリンファスは彼を見た。彼が、その身の右半身に明かりを受けながらリンファスと向き合うと、何故かハッとしたように僅かに身を揺らした。


「君か……」


開かれた唇から紡がれた声はやはりやや硬いテノールで、呟かれただけのその声はするりとリンファスの鼓膜に馴染んだ。

この声も聞き覚えがある。リンファスを人さらいから守ってくれた人……。リンファスのお使いにも付き合ってくれた、ロレシオに間違いなかった。


ロレシオの声は夜の闇に馴染んでずっと聞いて居たいような、そんな玲瓏な響きの声だった。

しかし声が硬かったから、あまりこの場に留まることは良くないだろう。以前街へ連れて行ってくれた時も雰囲気が硬かったし、あまりリンファスに好意的でないことは明白だった。


リンファスは彼の時間を邪魔したことへの謝罪をして立ち去ろうとした。


「お、おくつろぎの所を邪魔するつもりはありませんでした……。すみませんでした」


そう言って頭を下げてこの場から去ろうとしたリンファスに、ロレシオは言葉を掛けた。


「君、もう具合は良いのか」


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