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花乙女は愛に咲く  作者: 遠野まさみ
舞踏会へ

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最近、宿舎の乙女たちから街の店に品物を取りに行ってくれないかという頼みが増えた。

相変わらずリンファスにはプルネルの友情の花しか咲いていない状態だから、兎に角もらえる仕事を頑張って行おうとしていた。


「じゃあ、ハラントさんとちょっと街まで行ってきますので荷馬車をお借りします、ケイトさん」


積極的に仕事をこなすリンファスに、ケイトは不安そうな顔をした。


「リンファス、本来はあんたがそんなことをしなくてもいいんだよ。折角花が咲いたのに、また倒れたらどうするんだい?」


ケイトの気遣いは嬉しいが、リンファスが身に着けているのは友情の花であって、花乙女に求められている『愛情』の花ではない。だから、他の『愛情』の花を着けている花乙女の為に働くのは、当然なのだ。


「お仕事していた方が、私も気持ちが休まります。お願いですから、行かせてください」


リンファスが自発的に仕事をしていると分かるとケイトも強く言えないようで、仕方ないね、と荷馬車を用意してくれた。リンファスが玄関まで行くと、ケイトはため息交じりに嘆いた。


「月末には月に一度の舞踏会があるってのに、あんたは全然かまわないねえ……。なにかイヴラと接点があるといいんだけど、もう舞踏会までには茶話会はないし……」


「舞踏会……?」


そう言えばプルネルも舞踏会に出席するからドレスを仕立てるようなことを言っていたのだった。自分には関係ないこと思ってあの時は聞き流してしまったけど、何故か今日は興味を引かれて、リンファスはケイトに聞き返していた。


「そうさ、花乙女は月に一度、イヴラと正式に交際を始めるかどうかを見極める舞踏会に参加するのさ。勿論任意だけど、今居る花乙女はみんな参加するし、だからドレスの仕立てやアクセサリーの新調が多いのさ」


そうなんだ……。そう思ってまたプルネルの言葉を思い出す。


――『人とお会いしないと、好いてももらえないし、愛してもいただけないのよ』


本当にそうだ。プルネルと会ってなかったら、友情は生まれなかった。イヴラにだって、会ってみなければ、好きになってもらえるかどうか分からない。

茶話会では失敗してしまったから、舞踏会でやり直せないだろうか。


リンファスは勇気を出して、ケイトに聞いてみた。


「……ケイトさん……、その舞踏会、……私も参加できるでしょうか……?」


恐る恐る問うた声は、少し震えた。リンファスの言葉を聞いたケイトは驚きの顔をして、……そして残念そうに首を振った。


「あんたがそう考えてくれるのは凄く嬉しいね……。

でも舞踏会は茶話会とは違って、イヴラと花乙女の交際を始めるかどうかを見極める場なんだ。イヴラの花が咲いてないと参加できない。

あんたに咲いているのは紫の花だろう? 紫の瞳はこの世界で花乙女にしか現れない……。

あんたのその花では、舞踏会に参加できないんだよ……」


とても残念そうに、ケイトは言ってくれた。そういう決まりがあるのなら仕方がない。リンファスが花を着けていないのがいけないのだ。


「ケイトさん、私の言ったことなら気にしないでください。ウエルトの村でも、私は何時も帰りを待つ側でした。いつでも待てます」


リンファスの言葉にケイトは微笑む。


「あんただったら、何時かイヴラに見初められるさ。なんていったって、あんたはいい子なんだから」


「ふふ、買い被り過ぎです、ケイトさん。花が着いていないのが、全ての証拠ですから」


リンファスはケイトに応えると、荷馬車に乗った。館の乙女たちの品物を受け取って来なければならない。リンファスは荷馬車を走らせた。






……その様子を、隣の館から見ている視線があった……。




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