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花乙女は愛に咲く  作者: 遠野まさみ
ロレシオ

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(13)


サラティアナは部屋で少し休んだ後、家に帰ると言った。怪我の一報を聞きつけた父親のグレン・アンヴァ公爵が迎えに来るという。それまで少しおしゃべりをすることにした。


「ロレシオ、きれいな花をありがとう」


「そんな……。僕の方こそお礼を言わなきゃいけない。あの衛兵はきっと僕を狙っていたんだ。身を挺して守ってくれた君は、戦いの女神の化身でもあるのかな」


「ふふ、そんな大げさなものではないわ。友達を守るのは当たり前ですもの」


サラティアナの言葉に、ロレシオは感動で打ち震えた。


「君は僕を友達として認めてくれるの?」


「ロレシオが先に認めてくれたのよ。この花で証明してくれたわ」


二人は見つめ合って、ふふふ、と笑った。其処へルーカスが入って来た。


「サラティアナさま。公爵がお迎えにお見えです」


その言葉をロレシオはとても残念に聞いた。しかしサラティアナは今日は怪我をしたのだから(完璧に治ってはいるが)、早く家に帰った方が良いだろう。

ロレシオは名残惜しくサラティアナを見送った。


「また会いに来て」


「きっと来るわ」


微笑んで去って行くサラティアナの後姿を何時までも見つめてしまう。角を曲がるとその姿も見えなくなって、ロレシオは部屋に戻ろうとした。


(次……。次はいつ来てくれるんだろう……)


初めて出来た友達と、もっといっぱい話したい。ロレシオは次の約束を取り付けようと、サラティアナの後を追った。


タタタ、と廊下を走り、もう直ぐで階段の曲がり角というところで、サラティアナの無事を喜ぶアンヴァ公爵と思われる声がした。


「サラティアナ、よくぞ無事で!」


「お父さま、カタリアナさまが治してくださったのよ」


「それは凄い。お前もますますカタリアナさまに目通りが叶うようになるだろう。……で、王子の方はどうだ」


アンヴァ公爵の声が王子、と言った。……ロレシオのことだ。ロレシオは知らず、息をひそめた。


「大丈夫ですわ。無事、友達になれましたの。ほら、これを見て、お父さま。ロレシオの花よ」


「おお、素晴らしいじゃないか! お前は利口な子だ。きっとやってのけてくれると思っていたよ。さっき私が宮に入ってくるのと入れ違いになった衛兵がお前を切りつけた衛兵のことを話していた。

こっちの思惑通り、レーヴン公爵が裏で手を引いた男だったようだ。これでレーヴンも王の叱責を免れない。私の地位はますます盤石なものになるぞ」


「レーヴンさまには女の子が居ないですものね。わたくしは花乙女ということで、最初からロレシオに受け入れられていたのですわ」


「いいぞ、その調子だ。お前が王家に嫁げば、わたしにももう怖いものはない」


どきん、どきんと心臓の音が大きく聞こえる。


さあ、と頭から血が引く感じがする。


……なに。なにを話しているの……。サラティアナは、なにを話しているの……?


サラティアナとアンヴァ公爵の会話の意味が分からなくて、ロレシオの脚が震えた。


「わたくしも、カタリアナさまのようになりたいですわ。カタリアナさまはアディアの花乙女の憧れの的ですもの」


「噂の奇異な銀の瞳も、花となってしまえば美しいばかりだしな」


「まあ、お父さま」


アンヴァ公爵の笑い声が階段に響いている。ロレシオはそっとその場を離れた。


サラティアナが、カタリアナのようになりたいと言っていた。それはつまり……。


(……サラティアナは、僕と友達になれて喜んだんじゃない……)


最初から、王家の地位が目的だったのだ。父親のアンヴァ公爵も同じ意図だったのだろう。……いや、どちらが先かは分からないが、兎に角あの親子の意図はそうだということだ。


ふらふらとした足取りで部屋に戻る。ベッドにそのまま突っ伏した。


……裏切られた……。初めて出来た友達だと思ったのに……。


じわりと枕が濡れた。


悔しくても涙が出るのだと、ロレシオはこの時初めて知った……。



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