表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花乙女は愛に咲く  作者: 遠野まさみ
ロレシオ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/142

(11)


「それではごきげんよう、ロレシオさま」


スカートをつまんでお辞儀をしたサラティアナが部屋から出て行って直ぐに気が付いた。サラティアナの席の横にハンカチーフが落ちていた。

きれいな刺繍で『A.S』と綴られており、直ぐにこれがサラティアナの母親がサラティアナの為に刺した刺繍なのだと分かった。


大切なものだ。直ぐに届けてあげなきゃ。


ロレシオはそう思い、部屋を駆け出た。ドアの外に居た衛兵が理由を問いたそうな顔をしたけどそれを話している余裕もなかった。


月の間を出た真っすぐの廊下には誰も居なかった。

西の突き当りに階段があって、この部屋に来訪者が来るにはあそこを通る。きっとあっちだと思ってロレシオはハンカチーフを持って廊下を走った。

角を曲がり、下を見ると、丁度短い階段の先の踊り場にサラティアナの後姿が見えた。


「サラティアナ、待って! 君、落とし物だよ」


ハンカチーフを上に掲げて振り向くサラティアナに見せる。驚いた顔のサラティアナが一瞬笑顔になって、それから大きな声を上げた。


「ロレシオさま!!」


何故かサラティアナが慌てて階段を駆け上がってくるのと、背中をドン、と押されたのを感じたのは同時。


「うっ!」


階段にうつぶせに倒されて、右足首を踏みつけられている。

なに……、と思って背後を見ると、衛兵の格好をした男が刀をロレシオに向かって振り下ろそうとしているところだった。


切られる!


そう思った時に大きな声が廊下に響いた。


「ロレシオさま!!」


ザシュッ、と刃が何かを切り裂く音がした。

しかしロレシオの背中に痛みはなく、その代わりあたたかい体がロレシオの背中を覆っていた。

視線を後ろに向けようとすると、そこには白く流れる髪の毛とだらりと垂れた腕に伝う赤い筋……。


「サ、サラティアナ!? え……、衛兵!!」


サラティアナの大声で既に集まっていたのか、サラティアナを切った男は直ぐに衛兵に捕えられた。

ロレシオはただただ狼狽して、サラティアナの体を揺さぶった。


「サラティアナ! しっかりして、サラティアナ!!」


ロレシオは背中から赤い血を流すサラティアナを抱き締めて、自らの上衣で背中の傷を押さえた。

しかし血は止まらない。

傷が深いのだろうか。それとも花乙女だから怪我の治り方が違うのだろうか。


「誰かお母さまを呼んで! 花乙女が怪我をしたんだ!!」


ロレシオの周囲で衛兵たちがバタバタと動く。ロレシオはただただサラティアナを抱き締めているほかなかった……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ