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花乙女は愛に咲く  作者: 遠野まさみ
花乙女として

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(16)


「リンファス、あんた少し休んだ方が良いんじゃないかい?」


アスナイヌトに花を届けに行って帰って来たところでリンファスはケイトに声を掛けられた。リンファスは荷馬車を玄関に止めたまま、ケイトに笑みを向けた。


「いえ。ウエルトではもっと早朝から働いていました。それに力仕事も少ないですし、私まだ出来ます」


リンファスがそう言うとケイトは何も言えないようだった。

ケイトもリンファスが自分に花が咲かないことを気にしていることを知っていてくれる。だから無理に仕事を取り上げようとはしなかった。


「だったら食事にしないか。あんたまだ昼を食べてないだろう。一緒に花茶を淹れよう。花のエキスが出ていて美味しいよ」


ケイトはそう言って厨房に向かった。リンファスは馬を馬屋に繋ぎ直してから館に入った。


玄関から食堂に入ると、ケイトが白い皿と共にティーカップを席に着いたリンファスの前に置いた。皿には花がひとつ載せられ、ティーカップからはあたたかい湯気と共にふわりと甘い花の香りがした。


「ミルクを入れてみるかい?」


「ミルクがあるんですか?」


花乙女の館だから花以外は水しかない、と最初に聞いた。ケイトはもう直ぐ茶話会があるからね、と言った。


「茶話会にはイヴラも参加するから、イヴラが食べる食べ物を用意しなきゃいけない。

この国の人はお茶にミルクを良く入れるからね、用意していたんだ。砂糖もあるから、もし良かったら試してみたら良い」


ミルクというのなら、リンファスがウエルトの村で飲んでいた野菜スープに使っていた山羊の乳と似ているかもしれない。

是非、とお願いすると、ケイトはミルクピッチャーにミルクを入れて出してくれた。


そして砂糖というものを、リンファスはおそるおそる使ってみた。

砂糖は地主のオファンズの所に麦を収めに行った時に見たことがある。オファンズたちがテーブルを囲んだその真ん中に、シュガーポットというものに入った、『角砂糖』という白いものを見たことがあったのだ。

勿論リンファスの家では買ったことすらない、上等なものだ。


花の花弁を一枚千切って口に入れると、カップを包むようにして手に持ち、花茶をひと口飲んだ。するりと喉を落ちていったあたたかい液体が、お腹に到達するのを感じた。

……不思議なもので、ミルクの甘みがお腹に染みる。花乙女は花しか食べないと聞いていたのにミルクを受け付けるということは、やはり自分が出来損ないだからかと少し項垂れた。


ケイトはリンファスの隣の席に腰掛けて、リンファスの肩をポンポンと撫でた。


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