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花乙女は愛に咲く  作者: 遠野まさみ
花乙女として

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(14)


初めて見上げる世界樹は、まさしく枝で天を覆っていた。

逞しく伸ばされた枝が天に浮かぶ雲を支えていて、その枝の先の行方は空のはるか彼方のように見えた。


幹も大人が何十人繋がって囲っても囲いきれないような大きな幹だった。

そしてその根元まで来ると、地面に潜っている根が網の目のように張り巡らされているから大地が揺るがないのだと、ケイトが教えてくれた。


何にせよ、その大きさはスケール違いの大きさだった。リンファスは口を開けてぽかんと天を仰ぎ、枝の間から見える青空と其処に浮かぶ雲を支えている枝ぶりを眺めていた。


「リンファス。花をこっちに持ってきとくれ」


多分ケイトが呼んでくれなければ、もっと長い時間の間、呆けていただろう。リンファスはケイトの声にはっと我に返って、荷馬車の荷台から花の入った籠を下してケイトの居るところへ持って行った。


ケイトは白い石の祭壇のような場所で跪いている。


「これは、アスナイヌトさまに祈りを捧げるための祭壇さ。丁度祭壇が王城の祈りの間から一直線に作られている。王族の方々は祈りの間からこの祭壇の方角に向かって、何時も王城から祈りを捧げて居るって話だよ」


二本の大きな石の柱の上に載っている梁のような石材の真ん中に、花を模った紋章のようなものが彫られている。

そして、祭壇本体の上には、花を身に纏った髪の長い女性が彫られたレリーフが飾られてあった。


ぼうっとそのレリーフを眺めていると、ケイトが皴を深く微笑んで、この方がアスナイヌトさまさ、と言った。


「うんと古い時代に作られたものだ……。当時は彩色も施されていたようだよ。

ほら、アスナイヌトさまが纏っている花々にも顔料の跡が残っているだろう? 

それに何といっても瞳だ。今ではこんなに劣化しちまったけど、それでも淡い紫の瞳をなさっていることが分かる……。

……この方が、この世界を無償の愛で守ってくださっているんだよ……」


ケイトは敬愛の表情を浮かべながらリンファスに説明してくれた。

長く滑らかにウエーブを打つ髪、微笑みを浮かべた慈愛に満ちた瞳、僅かに残る顔料が色華やかだったことを示す、身に纏っている花々。


この人が、アスナイヌト……。この人の子供として、花乙女が生まれる……。


何処か不思議な気持ちがして、リンファスは祭壇の後ろにそびえ立つ世界樹をもう一度仰ぎ見た。枝に支えられた雲の隙間からきらきらと陽光が零れてきて眩しい。


「ケイトさん……、なんだか穏やかな気持ちになります……」


「そうだよ、なんたってアスナイヌトさまの許に居るんだからね。花乙女が安らぎを覚えるのは当然さ」


そうか、そうなんだ。ケイトが感じることを、リンファスも感じられるということは、リンファスはやはり花乙女なのだ。ケイトの言葉に少し自信を持つ。


(私は、花乙女……)


リンファスは心の中で唱えた。



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