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花乙女は愛に咲く  作者: 遠野まさみ
リンファス、王都へ
2/142

(1)


「今日も売れ残ってしまった……」


荷馬車に揺られながら、リンファスは一人零した。人が引いてしまう午後まで市で粘ったけど、そもそもリンファスの手から畑の野菜を買ってくれる客は少ない。

今日は休日ということもあり、余計に市への買い物客は少なかった。最後の客には半値しか代金をもらえなかったうえに、罵声を浴びせられた。曰く、


「アンタはついてるだろ! 本当だったら悪魔の子は殺されてもおかしくないんだからね。

そんな見た目でファトマルに育ててもらった上に、寝床まで与えてもらえるなんてラッキーじゃないか。

生かされてるだけで儲けもんなんだから、半値でも代金もらえるだけありがたいと思って欲しいね!」


だそうだ。


確かにそうなので、何も言えなかった。


リンファスは村人たちがみんな茶色の髪と茶色の目、そして照り付ける日差しの中での農作業で焼けた肌をしているのに、リンファス一人だけ真っ白な肌で、髪は白く目は紫で明らかに村の中で異端児だった。


結局売り上げは50ルーカしかない。荷馬車の荷台には売れ残った野菜がこんもりと積み上げられていて、これらも朝早くから収穫したと言うのに、また家で食べるスープの材料になるだけなのかと思ったら、空虚感が胸に漂う。


(駄目ね、私……。全然父さんの役に立たない……)


巾着に入れた小銭を触ると、はあ、と重たいため息が零れる。

今日の売り上げはたったこれだけ……。これでは父が一回博打に使ってしまえばなくなってしまう。

そのことを凄く怒られるのだろうな、と思うと、リンファスの顔はますます俯いた。


(でも……、一回は出来るもの……)


売り上げがない時は競馬場に行けないから、家に居る父の機嫌はすこぶる悪くなる。それを考えたら、一回分だけでも稼げて良かったのだと思う。


(早く帰ろう……)


兎に角見向きもしてくれない客たちを相手にずっと市に居るのは辛かった。家に帰れば多少の安堵は出来る。リンファスは荷馬車を走らせた。



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