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花乙女は愛に咲く  作者: 遠野まさみ
花乙女として

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(4)


談話室を後にすると、ハンナが帰ると言った。てっきりこの館の人だと思っていたリンファスは慌てた。


「私は花乙女の保護の仕事をしているの。また何処かに花乙女が生まれたら、その子を此処に連れてくる役目があるの。だからこの館にずっとは居ないわ」


そうなんだ……。てっきりこれからの生活の中で、ハンナに手助けをしてもらえると勘違いしてしまった。こうなると本当に独りっきりだ。


そんなリンファスの覚悟を察したかのように、ハンナは最後に宿舎の寮母を紹介してくれた。

丁度テーブルに食器を並べているところだった彼女は、ハンナが呼び止めるとその手を止めてくれた。


女性は七十を超えるだろうか、口許と目じりに皴を刻んだ老女だった。

長くみつあみにされた髪の毛は鳥の羽のようなオレンジ色だが、瞳は紫だ。

その身には先程の少女たちと違って小さな琥珀色の美しい花が咲いており、彼女も花乙女なのではないかと推測した。


「ケイト、今日から此処に住むことになるリンファスよ。色々貴女に聞くと思うわ。十分お世話をしてあげて」


ハンナがリンファスをケイトに紹介すると、ケイトはやはりリンファスを見て驚いたように目を大きくした。


「あんたは色は花乙女のようだけど、花乙女かい? 白色しろいろの花も咲いてない乙女は初めて見るねえ」


白色の花とは何だろう。特別な花なのだろうか。そう言えば、さっきの談話室に居た少女たちも白色の花をつけていた。


「事情があるのよ。それも含めて、貴女が支えてあげてくれると嬉しいわ」


「良く分からないけれど、この館の住人の世話があたしの仕事だ。何かあれば言っとくれ」


ハンナに言われると、ケイトは漸くその顔に深いしわを刻んで微笑んだ。

リンファスはほっとして、お願いします、と小さな声で挨拶した。

良かった……。取り敢えず此処に居ても良いみたいだ。此処で追い返されても路頭に迷うだけだったから、リンファスのことを受け入れてくれる人が一人でも居てくれてよかった。


ハンナはケイトにリンファスを任せると帰っていった。ケイトはリンファスをじっと見て、さあて、どうしようかねえ。と呟いた。


「? ……あの?」


「取り敢えず、食事が困るねえ」


食事が困るとは、どういうことだろう。そう考えてハンナの言葉を思い出した。


(そうだわ。花乙女は自分の花を食べるんだって言ってたわ……)


ケイトは花が咲いてないリンファスに、何を食べさせるべきか困ってしまったのだろう。リンファスは口を開いた。


「あの……、私今まで、普通の食べ物を食べていたんです。花なんて食べたことないですし、何か……野菜のスープでも良いので、そういうもので……」


そう言ってしまって、自分の食べる物を人に頼まないといけないことに、居心地の悪さを感じた。


「あの……、私、自分で作るので。……なにか切れ端の野菜とかあれば、それで……」


そうも言って、やはり材料を頼らなければならないことに落ち込んだ。


今までとは何もかもが変わってしまった。自分で何もかもをして、自分で全てを済ませることがリンファスの生活だったのに、此処ではケイトに頼ることしか出来ず、それがなんとも居心地が悪い。

談話室の少女やケイトが言うように、花が付いてないんだから、もし自分が本当に国が大事にしているという花乙女というものだとしても、出来損ないじゃないかと思うのだ。


そんな出来損ないのリンファスは、此処でさっきの少女たちみたいに、ケイトに世話になることは出来ない。村でやっていたように、自分で自分のことを面倒見るべきなのだと思うのだ。


そう思ってケイトを見たが、ケイトは眉を寄せて難しい顔をしたままだった。


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