第三十二話:おやすみすみ
36回目の投稿になります。
一瞬でも楽しんで頂けると幸いですっ。
何卒よろしくお願い致します。
【ロコイサ王国・メデ王宮〔玉座の間〕】
その高貴な雰囲気を帯びる広々とした室内、長い時を経て尚しっかりと手入れをされ色褪せぬ華やかさには見合わない光景がここにまで運ばれていた。
玉座の前───右から順にリンロ・トゥーチョ・モチャオーチと横並びに土下座をした彼らは、ロコイサ王によってたん瘤に油性ペンで描かれた歪んだサイ【ユガサイくん(動物)】を晒しロコイサ王の着替えを待っていた──────
(((ぶるぶるぶるぶる)))
大人しく伏せる三人の内、リンロの背中だけ何故か異常な震えを見せていた。
(あぁぁ…………さっきのは本当に反省しねぇと……あぁぁ……。さっきのがロコイサ王で生きていたから良かったものの、手を握ってたのが他の人だったら俺は今頃……あぁぁ……)
カラカラカラ
玉座と平行、右端に見えていた朱と金の豪華な装飾が障子戸のように施された木製の大きな両引き戸が鳥避け風車のような軽い音を立て開き、その向こうからロコイサ王が姿を見せた。
それに気が付いた彼らが胴は伏せたまま、首だけを上げ彼女が玉座へ着くまでの動向を息を呑み右から左へと上目遣いで追う。
ばっ!
ロコイサ王が上衣を弛まぬよう整え静かに玉座へ着く。
スっ─────── 凛
骨盤を立て美しく真っ直ぐ芯の通った背筋で座るその佇まいには、美尻に敷く豪勢な仕様の玉座は無論この世の華という言葉を飼い慣らしいるかのような品格が備わっていた。
「もう良いぞお主ら、ユガサイ君……放牧っ!!」
ロコイサ王がそう命ずると、たん瘤だと思われたそれらが反応し次々に彼らの頭上から飛び降り始めた。
とてっ とてっ とてっ
自分たちの身体の一部だと思っていたたん瘤が頭から落ち、ショックに満ちた表情を浮かべたままリンロ達は目の前をペタペタと四足歩行で横切るユガサイくん達を感情無く静観した。
ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ────
始め距離に伴い足音が小さくなっていたが途中一定の音を維持するようになったのは、ユガサイくん達が真っ直ぐ進む事しか出来ないブリキのおもちゃかのように壁に行き詰まったまま歩き続けていたからだった。
ユガサイくん達を自分達の身体の一部として誤認識する脳と響き渡る緊張感の欠片もない頭のおかしくなりそうな音が、彼らにユガサイくん達が自分達に見えてくるという幻覚を見せる。その幻覚が【生まれたての変態+処刑予備軍復活の不安】という逃げられぬ壁を思い出させ、ロコイサ王を見る顔をひきつらせ彼らを緊張の場へと引き戻した。
だがそんな彼らの緊張感などお構い無しにロコイサ王は自分の時間を進める。
「してドレリミッナイ……先刻お主は我の身体に一体何をしたのだ?」
「……」
(何をしたのかと聞かれてもなんだが……)
【何をしたのかと聞かれましても、それは俺にも分かりません】彼の中で既にその答えを用意していたがリンロはロコイサ王の質問に直ぐには答えずに彼女をじっと見つめながら考えた振りをして別の事を考えていた。
(ところで俺が触っても生きてたって事は……ロコイサ王もリャンガってことなんだろうか? それに今目の前にいるあの綺麗な人が500年以上も生きてるなんていうあり得ないようで多分本当の事は、リャンガなんて常識外にいる俺ですら簡単に実感できるもんでもないんだよな……。
リャンガだから年を取らないのか? 俺も死ななかったらこっから500年も生きていくのか?……ぐっ!もう考えたくないっ!!)
頭を抱えるリンロに痺れを切らしたロコイサ王が問い返す。
「おいドレリミッナイ、分かるか分からないで良いのだがいつまでも何を考えておる。長期的思考罪に処すぞっ」
「!!……あっ……えっ……と……その……分かりません……。この身体になってからトゥーチョに背中押してもらうまで自分の身体に向き合う事もなく引き籠ってばかりで……自分の身体の事なのに未だに把握出来ておらず申し訳がございません」
申し訳なさそうにリンロが答えた後、その会話にトゥーチョが割って入った。
「チョっとよろしいですっチョかロコイサ王様っ」
割って入っただけなのに既に得意げな顔になっているトゥーチョの内心はこうだ。
(チョふっ、バカッチョめリンロッチョめ。さっきリンロが出現させた変態海に巻き添え漂流を喰らったせいでこんな横並びにさせられてしまっているっチョが、本来オレ様は今ロコイサ王の横に居るべき者……ここで知識量の格の違いを見せて復帰させてもらうッチョ! さらばだっチョ横並び1号2号共ぉぉぉっ!)
「どうしたトゥーチョ」
「チョのぉ……これはあくまでも私の推測ではございますっチョが……このリンロは非常に癪に触りますが私よりもリャンガ細胞濃度というものが濃く……チョあっ……リャンガ細胞というのは~~」
「余計な説明は要らぬ、今の我の知の範囲でも分かるようにもっと端的に申せ」
「チョっ、チョはいっ! ロコイサ王様に掛けられた奇術が長い年月により弱まっていたところに、リンロの小癪パワーがロコイサ王様の身体に流れ込み弱まっていた奇術に打ち勝ったかと思われますッチョ」
「……分からぬな、通訳を頼めるかモチャオーチ」
「ほ、ほわっ……申し訳ありません……この老人には縁の無い言葉ばかりで、強いて聞き取れたところといえば……【小癪ロコイサ王様】のところくらい……ですかなっ」
(チョはぁっ!? んな事言ってないッチョよ!!? 全器官現役バリバリのクセに今に限って老い耄れやがってダブホワめェ~~ ───はっ!! まチョか!オレ様の作戦を理解してわざと──)
「おいトゥーチョ?……我が小癪からの続きをもう一度申してくれるか?」
ゴゴゴォォォォ!!!!!
「失礼致しましたッチョ!!そんな事を言った覚えはありませんっチョッ!!私には何にも分かりませんでしたッチョ!!」
ロコイサ王の声に灯る殺気に尻込みトゥーチョは横並び脱却から引き返した。
「分からぬのならそれでも構わぬ、分からぬのなら我に対してだけは最初から分かった振りなどするでない。次からはないぞ、分かった振り罪にするからな」
「チョはいっ!以後生涯気をつけますッチョ!!」
トゥーチョの誓いに頷きを見せた後、ロコイサ王が再びリンロに落ち着いた視線を戻す。
「ドレリミッナイよ……何はともあれ我がお主のお陰でこの姿に戻れたという事には変わりはない……礼を言うぞ、実に大義であった」
「いや、俺は別にお礼を言われるような者じゃないです……あれは予期せぬ偶然だったので」
「(そうだahっ!よく言ったっチョohっ!お前はロコイサ王様からお礼を頂けるような者じゃないんだっチョohっ!)※微かな小声※
ところで一つ疑問なのですっチョが……普通の人間であればリンロに一瞬触れられるだけで即死してしまうのですがロコイサ王様がお亡くなりになっていないって事はもしかして、ロコイサ王様もリャンガなのですかっチョ?」
(お亡くなりになっていないって……あんだけ忠誠を誓っている主に縁起でもない事ド直球に聞くな、大丈夫か? ……まぁ今現在のロコイサ王に質問とかしずらいし、俺の知りたい事を代わりに聞いてくれてありがたいけど)
リンロが気にして振り向いた先。既に震え切ったトゥーチョは仰向けで硬直したまま、いつもより一段と体のクリアブルーを色濃くしロコイサ王の返答を待っていた。
(あ、口を滑らせただけだった)
「……分からぬ。
そのリャンガなるものも過去トゥーチョにざっくばらんに説明を受けただけだが、今日はもうその説明もいらぬ。この話は終いだ、我専用の部屋以外なら好きに使って良いからお主らは休め」
「お気遣い感謝致しますっチョが、私はまだ会議できますっチョッ! まずは今後の計画を!」
「【全ては成り行きに計画は有って無いようなもの】お主もあの日から計画要らずになっておろうトゥーチョ。ところで、今我の言う事を無視するのはお主だけだぞ?」
「チョ?」
トゥーチョが後方の扉に目を向けると、既に退室を試みるリンロとモチャオーチの姿があった。
「大海のようなお心遣い感謝致しますロコイサ王様。それでは暫しの休暇失礼致します、お休みなさい」
「本日はこの老い耄れの命をお救い頂き、誠にありがとうございました。このご恩残りの半生以降も絶対に忘れません。以下リンロくんと同文、おやすみすみ」
「チョはっ!? ロコイサ王様より先に退室するとはいい度胸だっチョなチョ前らァァッ!! てか最後の以下同文からのおやすみすみが適当すぎるだろっチョぉぉ~~っっ!!!」
それから間もなくアドレナリンが切れ、今日1日のどん疲れを背負った状態の三人による寝室争奪戦が始まり王宮の外に音が響く…………──────────
へてぇ~~んっ
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