第三十一話:生まれたての変態共
35回目の投稿になります。
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「?」
その煙の中リンロは自身の肩に何かが掛かっている事に気が付いた。
それが何なのかは分からなかったがリンロはロコイサ王の手を握っている反対の左手で静かにそれに触れ、そのまま視界まで手を運んだ。
(……この綺麗な朱いのは何だ? 毛?)
リンロがそれに触れ得た感覚はサラサラとした上品な質感、それからひんやりと気持ちの良いシルクのような優しい肌触り。
(これが何なのかはよく分からないが、一応状況がはっきりするまで掴んでた方がいいよな? 危険なものとか敵とかだったら周りの皆が危ないし)
ふワんっ
未だ視界が晴れない中で神経をとがらせているリンロを弄ぶかのように度々彼の手に有るそれと同じものが彼の頭部を無作為に優しく撫でるように当たり、同時に香るようになった思わず安心して眠ってしまいそうになる程の優しい桜の匂いが風に乗りリンロを包み込む。
「皆さんっ大丈夫ですかっ!」
そうリンロが安全確認の為に聞いて間もなく、煙は薄まり始めその中で徐々に互いが互いの姿を認識し始めた。
「オレ様は大丈夫だっチョけど、一体何だっチョかこの煙はっ!」
「私も大丈夫ですっ」
トゥーチョとモチャオーチと続けて身の安全を主張していたがその後にロコイサ王の返事は続かず、心配になったトゥーチョが慌てて聞いた。
「チョいっ!リンロっ! ロコイサ王様は無事なんだろうっチョよなっ!!?」
一瞬トゥーチョの焦りにつられ不安になったリンロだったが、自身の手に伝わってくるロコイサ王の正常な脈にほっと息をつく。
「だっ……大丈夫だ……。手は繋がせて頂いているままだし、脈もちゃんと……あるっ……うん…うんっ…大丈夫だっ」
その後も完璧な安心を得る為に何度か手の握る力を若干強めてはロコイサ王の脈を感じ取ってを繰り返していたリンロだったが、その途中から余裕が出来た彼の思考はロコイサ王と握手を交わしていた手の違和感へと向かい始めた。
「え?」
違和感に沿ってロコイサ王の手を握っていた右手を見ると、その手の中には色白で柔らかくスラッとした指の先にハイライトが乗った綺麗な透き通った赤い爪を付けた美しい手が収まっていた。
一旦現実逃避の為リンロが正面に目を向けると、薄まった煙の奥には一つの身体のようなものがあった。次第にくっきりとしていくその卑猥なシルエットに耐えきれずリンロは自身の手へと視線を戻した。
「…………」
フぁッ
一瞬過った色々な如何わしいシチュエーションに冷や汗を流していたリンロだったが、完全に煙が晴れたその状況で彼は今一度両手に掴んでいたものを恐る恐る目で辿り始めた。
──────────!!?!??!!?!?
全貌が明らかになったそこには、リンロに右手と髪を掴まれ首と背を反らせお尻を突き出したそれはそれは美しい色白な女性の後ろ姿があった─────
スラリとした下半身と豊満な胸を備えた上半身。筋肉質でありながらも軟らかいその身を捻り女性はリンロへと桃色の冷たい視線を送った。
バッ!!!
焦り慌てたリンロが即座に握っていた髪と手を手放し両手を上げた。
それを目撃し興奮赤面したトゥーチョが、水道の蛇口の栓を限界までひねったかのような勢いで鼻血を噴射させながら言う。
「チョわぁぁーっ!!!? さっきまでリンロがいた筈の場所からどこぞのお脈有り超変態が出てきたっチョ!!! そんな格好で脈有りとかお前ぇっ!んなわけねぇだろーっチョがぁーっ!! てかロコイサ王様はどこいったっチョかっ!!!?
この【恩仇パワープレイ勘違いチョ変態関白恋愛初心者】っっ!!!! 」
同じく鼻血を流すモチャオーチ。
「なっ、なんて卑猥な事をしているんだいっリンロくんっ!!!!」
「いやっ、これはっ───」
一人変態としてリンロが責められる中、女性の光の入らない冷徹な視線はリンロ以外の2人も逃がさずに斬った。
「我の後ろ姿に発情でもしたか? この獣共めが……」
ゴゴゴゴゴゴッッッ!!!!!!───
ズドンッ!
ズドンッ!
ズドンッ!
女性の言葉の重圧に3人の老若男チョの視線が鉛を落とした勢いで同時に地面に落ちる。直後地面を見て血圧が戻り冷静さを取り戻した彼らの考える事は同じだった。
バッ!
【リンロは自身の服で】
ポンっ!
【トゥーチョは段ボールで】
べちゃっ! ズッガ! ズッガ! ズッガ! ズッガ!─────
【モチャオーチはズッガ虫の蜜付けで誘引したズッガ虫達を繋ぎ合わせたズッガ虫カーテンで】
三枚の人+元人壁によって作り出された覆いトライアングルが女性の身を隠す。
さっ! さっ! さっ!
覆いの外にいた3人は中が見えていない状態にも関わらず尚そっぽを向いていた。
気まずそうになりながらも彼らは中にいる女性に恐る恐る同時に喋り掛けた。
「チョえ~っと「え~……っと「ほわぇ~……と「どなたですか?」」」チョ?」
「ほ~お、我を忘れるとは勘違いが上手いなお主ら。それともなんだ、生まれたての赤子にでもなればこの場を切り抜けられるとでも思ったのか? この生まれたてのド変態共が。
さて……さっきのは余興であったが……」
女性の言動が増れば増える程、彼らの難解だった疑問は自分自身で回答できるくらいにさ安易なものに変わっていた。
「ま……まチョか……」
「ほっ、ほわっ!? そ……そんな事が……」
「……この人……いや、この御方は……」
「賽留───」
ポワンっ───
リンロ・トゥーチョ・モチャオーチの足元の僅かな隙間から大気が入り込み、大気の立方体が彼らを持ち上げる。
「お主ら飛んで生まれ変わって来い───賽展」
ポッッッッファァァーーーーーンッッッッッ!!!!!
ロケットかの如く勢いよく高く打ち上げられた彼らは白目をむきながら確心した。
(間違いない……ロコイサ王だ……ぐほっ!)
(ロコイサ王様だっチョぉぉ~~~!!? チョブファっ!)
(ほわわわわぁぁぁぁぁぁぁ~~~~!!?)
三枚の覆いが外れキラキラと雪の結晶のような細かい輝きを宿した美しい朱い長髪を靡かせながら凄艶な裸体を露にした女性の打ち上げられた3人を見上げて滑稽に見下すその瞳は実に官能的であり、空から降り落ちる3人の鼻血もまた官能的な雨であった。
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