第三十話:歓迎の催し
34回目の投稿になります。
一瞬でも楽しんで頂けると幸いですっ。
何卒よろしくお願い致します。
ロコイサ王の一閃を終幕としセリデイホとの戦いを終えたリンロ一行はロコイサ王国へと帰還していた。
そして現在、モチャオーチ含めリンロとトゥーチョはロコイサ王の前で正座をさせられていた──────────
こうなった発端はロコイサ王が来訪者であるモチャオーチとリンロの歓迎の余興だと、先日リンロへの助力の末にトゥーチョがロコイサ王の晩御飯を忘れた事へ対しての断罪が何もない催し物のあてにされようとした事からであった。
さすがにそれを聞き捨てになどは出来なかったリンロは直ぐにその誤解を解こうとしたが、案の定後が無くなったトゥーチョはリンロが誤解を解くよりも先に「死なば諸ともだっチョ」だと言い被らなくても良かったかもしれない罪を自ら被り、モチャオーチの罪を掘り返し自身より罪が重い事を主張してはここまでのリンロの事も全てロコイサ王に報告しその結果今に至っていた。
「フッ……まさか客人参加型の余興になるとはな、もはや余興を見て楽しめるのは我だけか……。だがお陰で我はこのとおり何も無い状況でお主らに恥を晒す事も無駄に気を回す必要もなくなり助かったが、この場で即刻全員処刑というのも少々興が薄いな。してお主らに弁明の余地はあるのか?」
(さて……俺の事は全部事実だから弁明する気はないが、さすがに恩人であるトゥーチョの事はなんとかしたい……)
リンロの視線がトゥーチョ→モチャオーチと移った後、再びロコイサ王へと戻る。
トゥーチョから事前にロコイサ王の事を聞いていたけど実際会ってみたら話と違う部分も結構あって発する言葉のわりに道徳心はちゃんと持ち合わせていそうだったし、話が通じないわけでもなさそうだった。それにロコイサ王自ら助けたくらいだから、モチャオーチさんの事は別に心配する必要も恐らくなくていいはずだ。
だから第一優先にすべき事はトゥーチョに対する誤解を解いて、この【処刑予備軍・際】からトゥーチョを先に離脱させる事。じゃないとこの後躍起になったトゥーチョが何するか分からんし、下手したら三人共本当に処刑なんて事にもなりかねない。だからまずここで俺が先手を打っておく!
スッ
リンロはできる限り姿勢を良くして誠心誠意の土下座でロコイサ王へと謝罪をして見せた。
「俺に対する事実は真実で弁明の余地はありません! この度はロコイサ王様のお許しもなく勝手に滞在し勝手にロコイサ王国の食べ物を頂いてしまい、誠に申し訳がございませんでした!! 加えてもう一つだけトゥーチョのロコイサ王様の晩御飯忘れた件について訂正をさせて頂きたいのですが、全部 不甲斐ない俺のせいなんですっ!! 本来ロコイサ王様の為に尽くすべきであった筈の時間と身を優しい彼は、危機に瀕していた俺の為に使ってくれました。お陰で俺や俺の大切な人達は救われました。本当に感謝してもしきれません……ですからお許しを頂く事ができるのならどうか、トゥーチョへ対する罪は俺にお願いしますっ!!」
リンロの自分を庇う発言に瞳を潤ませるトゥーチョ。
「リンロぉぉ~~……」
「そうか、正直で良い。してトゥーチョ、今のは誠の事か?」
リンロの誠心誠意を汲むかのようにロコイサ王は優しく微笑み掛けた後、直ぐに表情を無に切り替えトゥーチョへと聞いた。対しトゥーチョが引き締まった声で滑舌良く答える。
「勿論でありますっチョ! 彼が今言ったとおり、悔やんでも悔やみきれない許されざる大罪を犯してしまったあの日! この今横に居るドレイリンロミッドメーナイが突如として私の前に情けない姿で現れては急に私目掛け同情フェロモンを発してきたのですっチョ! それにより私は全身のコントロールを奪われ無意識聖人として扱き使われ、意識が戻った頃には既に翌日……全身が謎の筋肉痛に見舞われておりましたのですっチョ!」
自身の想定を大幅に逸れていくトゥーチョの弁明にリンロは目を丸くしポカーン口を見せていた。
(あれ? 確かにトゥーチョには弁明して助かってほしい筈なのに……何だこの気持ちは…………)
リンロの心の隅で本音を漏らすミニミニリンロ。
(トゥーチョのやつ本当の事話すだけでいいのに保険掛けて嘘で俺の罪度上げて比較に差をつけて、自分の罪100チョー%消しにきやがったっ!!)
「そうか…………ならば望みどおり罪移動だ。ドレリミッナイに【我への晩御飯忘れさせた罪】ならびに【同情フェロモン発生罪】と【トゥーチョのコントローラー罪】を追加するっ!
ちなみに罪が4つ重なった場合刑は【形界突破】し、【デメデメ極刑】へと進化するっ!」
「……え?……デメデメ極刑?……極刑……極刑=死刑……ファっ!!?」
(ロコイサ王の晩御飯忘れさせた罪は分かる、だが残り二つは知らんっ!! ここで反論するのもトゥーチョに申し訳がない気がするが、さすがにこんな一番訳わかんねぇ理由で終わら
されるのは困る! 俺にだってやり残してる事があるんだ!)
「あのっロコイサ王様、今のトゥーチョの弁明に誤りがあるので少しだけ訂正させっほブぇっ!!?」
トゥーチョがすかさずダンボールでリンロの口を塞ぎ彼の訂正を止めた。
「訂正シールドっチョ!!」
「ほぶぃっフューモォッッ!(おいっトゥーチョッッ!)」
「ン? 今ドレリミッナイが何か申しておったが、何故口を塞いだのだトゥーチョ」
「チョっ、チョれはっ……。チョれはあ~~……チョあっ! 今彼がロコイサ王様に向かって【同情フェロモンカラーブレス】を吐き、ロコイサ王様の全身を青ざめた色に染め上げた上で自身に同情させようとしていたからですっチョ!!」
「何だと? そうであったか、よくぞ止めてくれたなトゥーチョ。さすがの才だ」
「チョはっ! 当然の事をした迄でありますっチョ!」
「して……ドレリミッナイ、お主分かっておるな?」
「むぇ?」
「お主には当然に【同情フェロモンカラーブレス未遂罪】を追加するッ!! これでお主の犯した罪は5つ……デメデメ極刑を越えた者はお主が初めてだ。この後自身がどうなるか楽しみに待っているが良い」
「……むぇ?」
「では、最後に翁の弁明を聞く。トゥーチョそのままドレリミッナイの口を塞いでおくのだぞ」
「御意にですっチョ!」
モチャオーチは何か覚悟を決めたかのように答えた。
「私には弁明も何も……君達には頭が上がらないそれだけに尽きるよ。本当に申し訳がない事をしてしまった。私の事はもうどうとでもして下さい。只もし御慈悲を頂けるのでしたら今度のgoodbuyToyレースに──」
「却下だぁっ!」
その問答の最中リンロの口を抑えていたトゥーチョだったが彼のあまりの抵抗の無さに違和感を感じ、そっとダンボールをずらし様子を確認した。
「チョふぇ!!?」
リンロの人中の下にもはや唇と呼べる部位はなく、ギリギリ口だと認識できるうっすら見える横線だけがそこにはあった。それはリンロ自身口を開けば罪加算、その酷い現実に口の存在意義を見失いかけていた彼の拒絶反応だった。
(リンロの口が消えかかってしまってるっチョッ!! 後で助けてやってたとはいえ、少しやり過ぎてしまったかっチョ! 戻ってくるッチョ!リンロの口っ!)
トゥーチョは持っていたダンボールをリンロの口と水平にし差し込んだ。
グッ!
そしてそのまま段ボールのスライドを繰り返す。
ズッ ズッ ズッ ズッ ズッ────
「これでお主らの言い分も一通りに聞き終えたが【我史上最多数罪人ドレリミッナイ】と【罪人モチャオーチ】、お主らへの刑を発表する前に我がお主らの最後に言い残す言葉を代弁しておこう。
まずはドレリミッナイから。
【うぅ~っわっ!! いと唇痛しっ!!】。
そして翁。
【ロコイサ王様っ! 私の代わりにっ!──却下だぁっ!!】
すまない……思わず我自身の意思を挟み込んでしまった」
この時点で状況に追い付けなくなったリンロとモチャオーチは、ただただ緊張感のない反旗を忘れた廃人のようにロコイサ王の次の言葉を待った。
「ではお主らへの刑…………の代わりに栄誉を授与する!
ドレリミッナイ、モチャオーチお主らにこのロコイサ王国への永住権・自由権を与える! そして二人にはそれぞれの今後の役割を与え、ロコイサ王国の再興を担ってもらう。翁にはいずれのこの国の玩具屋として、ドレリミッナイにはトゥーチョ同様の我の臣下としてなっ」
「?」〈リンロ〉
「?」〈モチャオーチ〉
「チョ?」〈トゥーチョ〉
「してどうであった? 我からの脅しという歓迎の余興、中々に楽しめたのではないかっ?」
有り難そうにモチャオーチが頭を下げている傍ら、謎の緊張感から解放され存在意義を取り戻したリンロの口から血が爆散する。
ブファ!!
「フッ、血を吐く程に嬉しいのだな。お主の喜びが良く伝わってくるぞっドレリミッナイ!
向後万端これからよろしく頼むぞ」
少し愉快そうな口調でロコイサ王はリンロに握手を求めた。
「これまでの俺の罪に対するご勘弁・今後のご配慮を下さったロコイサ王様の大器へ誠に感謝申し上げます。是が非に今日からロコイサ王様への忠義を抱き、ロコイサの再興を担わせて頂ければと思います」
だが握手を求めるロコイサ王の手を見るリンロの目は泳いでいた。
(って言いながらあなたを葬り去る趣味は俺にはないのですが……)
「なぁトゥーチョ、これって大丈夫なのか?」そう聞かんとばかりにトゥーチョの方を向くリンロ。
それを察したトゥーチョは。
「今まで触れさせて頂いた限り、リャンガ細胞が流れ込む感じはなかったっチョ。だから早く手を差し出すっチョ!この無礼者っ!!」
そう言われ不安を残しながらもリンロはロコイサ王へと再び視線を戻した。
「お主もトゥーチョと同じリャンガなるよく分からぬ者らしいが問題無用、我を舐めるな」
「…………失礼致しました。それじゃあ……」
そう言ってリンロは恐る恐る手を震わせながら、ロコイサ王から差し伸べられた手をそっと握る。
ギュッ
その瞬間。
ボふぁンッッ!!!!!!
突然そこに大きな雲が現れたかのようにフワフワとした薄い桃色の煙がリンロ達を包み込んだ。
「え?」
「ン?」
「チョっ!?」
「ほわわっ!?」
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